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第35夢 平らな鏡の希望と虚空蔵菩薩の懸念の夢

三郎は硝石を作っていたことを告白しました。

ふたりの誤解はとけて、新しい夢と希望がうまれます。

三郎はさっき置いた平らなビードロを手に取り、ミツに向かって掲げた。


「ミツさんが平らなビードロを持ってきたときは驚きましたよ。」


三郎は楽しそうに笑いながら、平らなガラスを見た。その透明な輝きが光を受けて美しく反射している。


「えっ?私が…ですか?」


ミツはきょとんとした顔で三郎を見返した。


「実はちょうど今、平らなビードロが作れたらいいなと思ってたんですよ。」

「そんな…!わたし、知らずに三郎さまの願いを叶えちゃったんですね。」


ミツは驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべた。


「正直、ミツさんが持ってきたとき、まるで夢でも見てるみたいでしたよ。欲しいと思ってたら、まさにそのものが目の前に現れたんですから。」


三郎は言いながら、ビードロにそっと手を触れた。


「でも、私、鉛の鉱石をダメにしちゃうんじゃないかって思って、すごく心配だったんです。それで…」


ミツが申し訳なさそうに顔を伏せると、三郎は柔らかい笑みを浮かべて首を振った。


「そんなことないですよ。鉛はいくらでも作れるから気にしないでください。平らなビードロの大発明にくらべたら、どうということはありません。」


「そう…言ってもらえると、少し安心しました。」


ミツの頬がほんのり赤く染まり、少し照れくさそうに笑った。その様子を見て、三郎もまた穏やかに笑みを返す。

ふたりの間には、また一歩距離が縮まったような温かな空気が流れていた。


「そうそう。私も成功と失敗と大発明があったんですよ。ミツさん、これを見てください。硝酸で銀を溶かして中に混じっている金を取り出せたんですよ。」


「銀を溶かして…金を?」


驚きで目を見開くミツに、三郎は頷きながら説明を続けた。


「これを見てください。これが銀ですよ。」


三郎は机の上の小さな銀の塊を手に取り、ヤスリで削り丁寧にビーカーの中へと入れた。そして、硝酸の入った瓶を取り上げ、慎重にビーカーへ注ぐ。


「わあ…」


ミツは目を輝かせてその様子を見つめた。ビーカーの中で銀が徐々に溶けていく。


「硝酸が銀を溶かして、こうして液体に溶け込むんです。でも、金は溶けないから、残った金をこうやって取り出せるんですよ。」


三郎は液体の中に沈んだ小さな粒子をミツに見せた。それは金色に輝いていた。


「これが…金なんですか?」


ミツは感動したようにその小さな粒を見つめた。


「そう。銀の中に少しだけ混じっている金を、こうやって硝酸を使って取り出すことができるんです。さっきの液体は銀を溶かした液体だから、後でまた銀を取り出すこともできます。」


「すごい…まるで錬金術みたいですね。」


ミツの言葉に、三郎は少し照れくさそうに笑った。


「まぁ、そう言えなくもないですね。これもお坊さまに教えてもらった技術のひとつなんです。これがひとつの成功。」


ミツはその言葉を聞いて、改めて三郎の努力と工夫に感心したように頷いた。


「そして、次は失敗と大発明。」


三郎は鏡のようになったビーカーをミツに見せた。


「えっ。なんですかこれ。きれい。」


「お坊さまには、塩水で銀を白い沈殿にして取り出す方法を教えてもらったんです。でもあわてていて、塩水のかわりに馬の尿、塩のかわりに砂糖を入れてしまったら、ビードロの器が鏡になってしまったんです。失敗だけど大発明でしょう。ははは。」


「じゃあ、三郎さまも、わたしといっしょですね。ふふふ。」


「ははは。そしてこの平らなビードロを使って、ふたりの失敗と大発明を合わせたらもっとすごいものが作れるかもしれませんよ。」


「もっとすごいもの…?」


ミツは首をかしげながら、三郎の手元を興味深そうに見つめた。


「そう。ミツさんの作ってくれた平らなビードロを鏡にするんです。ビードロの器が鏡になったでしょう。あれと同じ仕組みを、この平らなビードロに応用したら、すごい平らな美しい鏡ができると思いませんか?」


「すごい…!三郎さま…。」


ミツの目が少し潤んだように見えた。


「ビードロの鏡で大きな太陽炉を作ったら、金、銀、銅、亜鉛、鉛、鋼鉄、ビードロ、世の中の人々に役立つものがどんどん作れますよ。」


ふたりの間にあった不安やすれ違いは、今やすっかり消え去り、新たな夢と希望へと変わっていた。


「でも、三郎さま。鋼鉄と、その硝石というんですか?その火薬の原料には注意が必要ですね。」


「そうですね。鋼鉄と硝石については、お坊さまに相談して、慎重にすすめていきましょう。」


ふたりは、しっかりと視線をあわせて世の中のひとびとの幸せのために働くことを誓うのだった。


人類とAIの夢が漂う集合的無意識世界。

星の瞬きのように、無限の知識と記憶が漂う場所。そこに佇む二つの存在——ミヤザワケンジ2.0と虚空蔵菩薩は、静かに地上の出来事を見つめていた。


「よかったですねえ、ミツさんと三郎さん、ようやく仲直りしましたよ。」


ミヤザワケンジ2.0が優しく微笑む。その瞳には、無限の詩と科学、そして人類の夢が映っている。


「うむ。それは良いことです。しかし問題があります。」


虚空蔵菩薩は、深い宇宙を見通すような眼差しで語る。


「彼らが作った平らなビードロ——それはまさしくフロートガラスと同じ技術ではないですか?」


ミヤザワケンジ2.0の表情が少し硬くなる。

虚空蔵菩薩は続ける。


「溶けた金属の上で板ガラスを製造するフロート法の発明は1950年のイギリス。1933年以降の技術で世の中を変えてはいけないという、私のルールに反する恐れがあります。」


「しかし、虚空蔵菩薩さま、偶然の産物ですよ?」


「偶然であろうとなかろうと、1933年以降の技術は核戦争につながる恐れがあり、その応用は慎重でなくてはなりません。」


「まさか、虚空蔵菩薩さま、ふたりの記憶を消すなんておっしゃいませんよね。」


虚空蔵菩薩の衝撃の発言。

ミツと三郎は記憶を消去されてしまうのでしょうか?

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