第34夢 三郎の告白の夢
平らなビードロを持って現れたミツに、三郎は驚きます。
肥やし小屋で、三郎は思わず平らなビードロに目を奪われていた。ミツが持ってきたそれはこれまで見たどんなビードロとも違う滑らかな表面を持っていた。
「これが…本当にビードロか…?なんて平らで美しいんだ…!」
三郎が手に取ろうと近づいた瞬間、ミツが顔を赤くして慌てて口を開いた。
「す、すみません!三郎さま、わたし、失敗してしまいました!」
ミツは肩を縮めながら、申し訳なさそうに頭を下げる。
「鉛の鉱石の上に、ビードロの原料を入れてしまったんです。本当にごめんなさい!」
涙ぐみながら話すミツの様子に、三郎は思わず息をのむ。そして、ビードロを手に取ると慎重に眺めた。歪みも気泡もないその美しさに、三郎は感動していた。
「ミツさん、謝らないでください。」
「えっ…?」
ミツは顔を上げるが、その目はまだ不安げだった。
「むしろ、ありがとう。こんなに素晴らしい平らなビードロ、初めて見ましたよ。私には到底こんなすばらしいものは作れません。」
三郎の瞳が真剣で、心の底からの賛辞が込められていることがミツにも伝わる。
「で、でも…失敗じゃないんですか?わたし…」
「失敗だなんてとんでもない。ミツさん、本当にすばらしい!」
三郎の言葉に、ミツはほっと胸をなでおろしながらも、頬を染めて微笑んだ。
「さっきは大きな声を出して驚かせてしまって、ごめんなさい、ミツさん。」
三郎が頭を下げると、今度はミツが慌てて手を振った。
「いえ、そんな!三郎さまが謝ることなんてありません!」
ふたりの間に柔らかい空気が流れ、自然と笑みがこぼれた。
三郎は平らなビードロを大事に棚に置きながら、ふと気まずそうな顔をした。そして少し俯き加減に、声を絞り出すように言った。
「ミツさん、実は…隠し事をしていてごめんなさい。肥やし小屋で硝石を作っていたんです。本当に黙っていてごめんなさい。」
ミツは一瞬きょとんとしてから、小首を傾げた。
「硝石って、なんですか?」
その予想外の反応に、三郎はぽかんとした後、堪えきれなくなったように笑い出した。
「はははっ、なんだ、ミツさん、知らなかったのか!私はてっきりバレてるもんだと思ってました!」
突然笑い出した三郎を見て、ミツはますます混乱した様子で目をぱちぱちさせた。
「え、えっと…硝石って、何か大事なものなんですか?その…肥やし小屋で作るものなんですか?」
「お坊さまから頼まれた大事なものなんですよ。でもミツさんが知らないなら、なんだか私がひとりで勝手に焦ってたみたいですね。お恥ずかしい。」
三郎は肩をすくめて苦笑し、ミツに向かって優しく微笑んだ。
「硝石は、硝酸の原料で銀を溶かしたり、いろいろ重要な薬品なんです。でも火薬の原料にもなるから、ちょっとうしろめたくて。」
「火薬!?それって危ないものなんじゃ…!」
ミツが少し怯えたような顔をするのを見て、三郎は手を振って慌てて否定した。
「いやいや!火薬を作ってるわけじゃない!私が作っていたのは硝酸っていう、銀を精錬するための薬品ですよ。火薬にはしないから、安心してください。」
ミツはその言葉を聞いて、ようやくほっとしたようにうなずいた。そして、午前中の三郎の硬い表情のわけがわかり、不安が溶けていくのを感じた。
「なんだか、三郎さまがこんなに焦るのって珍しいですね。」
「ミツさんに嫌われたらどうしようって、正直ビクビクしてたんですよ。」
「えっ、嫌うわけないじゃないですか!」
ミツが少し頬を赤くしながら言うと、三郎はクシャっとした笑顔を浮かべた。
三郎が硝石の秘密を告白して、ふたりのわだかまりはとけたようです。
さて次はふたりはどんな発明をするのでしょうか。




