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第29夢 馬のあくりと秘密の薬品の夢

ミツと三郎のもとに馬が来ました。

ミツは大喜びです。

一方、三郎は秘密の薬品づくりで頭が痛いようです。

寺の朝は澄んだ空気とともに始まる。庭で餌をついばむ鳥のさえずりを耳にしながら、ミツは愛馬の名前を決めたばかりだった。


「今日から、あなたは『あくり』よ。」


ミツが愛情を込めて馬の首をなでると、あくりは鼻を鳴らして応えた。


その名前は、かつて大昔の英雄がみちのくの大地を駆け抜けた伝説の名馬のものらしい。ミツはお年寄りから聴いたことがあった。


新しい名前を得たあくりは、まるでそれが気に入ったかのように、ミツの言うことをよく聞き、田畑を耕す手伝いをますますしてくれるようになった。


ミツはあくりを大切に育てた。餌もたっぷり与え、新鮮な草も欠かさなかった。そのおかげか、あくりは元気そのもの。田畑を一日中耕してくれるその姿は、まさに頼もしい味方だった。


そして、あくりが日々の労働で生み出すもの。それは、驚くほどの量の「糞」だった。


「三郎さま、今日はこれだけ集まりました!」


ミツは笑顔で桶いっぱいの馬糞を三郎に渡した。


「ありがとう、ミツさん。これでまた助かる。」


三郎は感謝の言葉を口にしつつも、どこか表情が固いようだった。


「三郎さま…?もしかして、なにか心配事でも?」


ミツが尋ねたが、三郎は軽く笑ってごまかした。


「いや、大丈夫。ただ、これからやる大仕事に気が引き締まっているだけですよ。」


あくりが一日に生み出す糞の量は実に5貫(約20kg)。小さな山のように積み上げられていく馬糞を見ながら、三郎の表情には複雑な表情が浮かんでいた。


さて、ここで読者のみなさんには種明かしをしよう。三郎が密かに作ろうとしているもの。それは硝石、すなわち硝酸カリウムである。


「え?硝石って、あの黒色火薬の材料?」


と、技術チート系ライトノベルに詳しい読者なら思うだろう。そう、硝石と硫黄と木炭を混ぜると鉄砲や大砲に使う黒色火薬ができるのだ。世界には山や砂漠から硝石がとれる国もある。しかし、近世の日本やヨーロッパでは土や糞からとるしかない。


ただ、今回三郎が目指しているのは火薬ではない。硝石を使い、銀鉱石や銀合金から銀を取り出すための「硝酸」を作ろうとしているのだ。


ただし、三郎は硝石を作っていることがミツに知られることを恐れている。平和を愛するミツに、三郎が火薬を作っていると誤解されたら嫌われてしまう、と思っているのだ。


しかし、それは三郎の気にしすぎだ。ミツは硝石なんかに興味がない。火薬の原料であることも知らない。ミツが興味があるのは農業と肥やしのことだ。三郎の独り相撲、勝手な思い込みである。


それはともかく、硝酸をつくるために、三郎が最初に手をつけたのは、寺の縁の下の古い土だった。この土は何十年も使われておらず、硝石を作る細菌と硝石が蓄積されている貴重な資源だ。


三郎はまず土をお湯で溶かし、その上澄み液を冷ますと硝石の結晶が浮かんできた。三郎は上澄み液を布で濾した。硝石はお湯に溶けやすいが冷たい水には溶けにくい。こうして、伝統的な古土法により硝石を得たのだ。


「やっぱり土の量に対して五分(5%)程度か結構とれたな…。」


三郎はつぶやきながら、硝石の結晶をそっと手に取り、慎重に扱った。


しかし古土法で使用した土は20年に一度しか使えない。そのため、三郎はお坊さまに教えられた、新しい方法で硝石を作る準備に取り掛かった。


「この土は『種菌』として使えるな。」


もちろん江戸時代初期の青年である三郎は細菌の存在を知らない。しかし、コウジカビは知っている。お坊さまはコウジカビの種コウジ、種菌に例えて三郎に技術を教えたのだ。


三郎は硝石を作る細菌が含まれた古土、肝煎(村長)さまから譲り受けた完熟堆肥、石灰、草木灰、それらを馬糞と枯れ草とともにふんわりと積み上げた。さらに、馬の尿をたっぷりとかけて発酵を促進させる。


「これで準備は整った。あとは明日まで待つだけだ。」

馬糞堆肥から硝石はとれるのでしょうか。

ミツと三郎の関係は大丈夫でしょうか。

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