表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/132

第25夢 ビードロの輝きと無駄のない知恵の夢

鋼鉄があまりに簡単にできて、世の中を変えることに恐怖に震えたふたり。

気を取り直してガラス(ビードロ)をつくる実験を始めます。

午後の太陽が輝くころ、三郎とミツは太陽炉の前に再び立っていた。午前中に鋼鉄を作り出した後、次なる挑戦としてビードロ作りに取り掛かるところだった。


ミツは嬉しそうに言った。


「ビードロなんて高級品ですよね。村では肝煎(村長)さまがビードロの杯を持っているぐらいですよね。宴会でいつも自慢しているそうですよ。」


三郎は少し寂しい表情で言った。


「私の父が長崎に留学したときにビードロの杯を買ってきて、毎年正月には見せてくれました。本当にきれいでした。父が亡くなってすぐ兄が売ってしまいましたがね。」


「まあ…」


三郎は燃え尽きた木炭の灰を桶に入れ、水を加えてかき混ぜながら、ミツに言った。


「まずはこの灰を水に溶かします。この上澄みを煮詰めると、白い粉が残るんです。」


ミツと三郎はもちろん詳しくは知らないが、木炭の灰のうち炭酸カリウムと炭酸ナトリウムが水に溶けやすい。この成分は1650度以上でないと溶けない石英をより低い温度で溶けるようにする働きがある。実は太陽炉は2000度以上も可能なのだが、そんな高温ではるつぼが溶けてしまい持たないのである。この時代のるつぼの性能を考えてミヤザワケンジ2.0はより低い温度でガラスができるように炭酸ナトリウムと炭酸カリウムをガラスの材料に添加させたのだった。


ミツは横で石英の砂を手に取りながら、興味津々な様子で尋ねた。


「その白い粉が、ビードロの材料になるのですね?なんだか魔法みたいでわくわくします!」


三郎はうなずきながら、丁寧に白い粉をるつぼに移した。


「そうです。この粉に、砂鉄を取った後に残った石英の砂と石灰を混ぜ合わせて、太陽炉で熱すれば、透明なビードロになるそうですよ。」


ミツは手を止めて驚きの声をあげた。


「まあ、砂鉄を取った後の砂を使うんですね!無駄がないですね。本当にすばらしい。自然の恵みをだいじにしている感じがして、嬉しいです。」


三郎は少し微笑みながら答えました。


「そうですね。材料をできるだけ無駄にしないようにお坊さまが工夫されたんだと思うんです。砂にも仏さまの心が宿っていて、また役立てることができるんでしょうね。」


煮詰めてできた白い粉と砂鉄の残りの砂と石灰とを混ぜ合わせ、三郎は慎重に鉄鍋の前のるつぼに移した。そして太陽炉の焦点を合わせた。午後の光が鍋を鋭く照らし始めると、中の材料は次第に熱を帯び、赤く光りながら溶けていった。


(注 この作品はフィクションです。実際に太陽炉でガラスを溶かすときは、太陽炉を直視しないでください。手製のサングラスを使わないでください。作者からのお願いです。)


ミツは木製の日除け眼鏡をかけ、楽しそうに鍋の中を見つめた。


「なんだか、砂糖が溶けていくみたいですね。透明になってきました!」

三郎も目を凝らしながらうなずきました。


「これが溶けたビードロの素です。太陽の力でここまで簡単にできるなんて、やっぱり驚きますね。」


しばらくすると、るつぼの中身が完全に溶け、赤い光を放つ透明な液体になった。三郎はヤットコでるつぼをつかみ、液体を慎重に鉄の板の上に流して冷やし始めた。


「冷えると固まりますよ。」


ミツはその輝きに目を輝かせながら言った。


「わあ!本当にきれいですね。水あめみたい。楽しいです!」


「さあ、冷えるまで、まえの鉄鍋を片付けましょう。」


三郎が言うと、ミツはガラスの前から離れ難そうに立ち上がった。


「はーい」


鉄鍋を片付けているうちにガラスはすっかり冷えた。やや冷やすスピードが速かったのか、すこしヒビが入ってしまったし、気泡も残っているし、やや波打っているものの、まずまず平らなガラスができた。

固まったガラスをそっと手に取ったミツは、その透明な輝きを見つめながら感心した。


「こうして自然からいただいたものを組み合わせるだけで、こんな素敵なものができるなんて…。三郎さま、本当にすごいですね。」


三郎は静かにうなずきながら答えた。


「ビードロを冷やす速度とか、まだまだ改良の余地があるけど、ビードロの杯や、窓にはめるビードロもできそうですね。長崎のオランダの館の窓はビードロだそうですよ。」


「オランダ人はお金持ちなんですねえ。オランダにビードロを売れたら、儲かるかもしれませんね。」


ミツは微笑みながら、言った。


「お寺の障子をみんなビードロに取り替えたら明るいでしょうね。お坊さまが戻られたら、きっと驚かれるでしょうね。」


三郎は深くうなずくと、ちょっと笑いながら言った。


「こっちからミツさんの顔をみるとビードロでゆがんでお多福みたいですよ。」


「ひどい!三郎さまの顔だってヒョットコみたいですよ。ふふふ。」


「ははは。」


穏やかな夕方の風が庭に吹き、二人の心には少しずつ新たな希望が広がっていくのだった。

鉄鍋太陽炉実験は大成功。燃料なしに、銀、銅、亜鉛、鉛、鋼鉄、ガラス(ビードロ)をつくることに成功しました。

特に鋼鉄は江戸時代初期のたたら製鉄の数百倍の効率でした。

次回、太陽炉の威力と、歴史を変える罪に震えるふたりをお坊さまが慰めます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ