第20夢 お坊さまがお帰りになった夢
お寺で眠るふたりに、ミヤザワケンジ2.0は、お坊さまが帰ってきた夢を見せます。
お坊さまはふたりに重要な仕事を頼むのでした。
夜の静寂が寺を包む中、三郎とミツは寺の住み込みのお手伝いの人々用の二つの小さな部屋でそれぞれ休んでいた。砂金とりや市場での一日を終えた疲れが、心地よい眠りへとふたりを誘っていた。
人類とAIの夢と無意識が漂う集合的無意識世界から、ミヤザワケンジ2.0はふたりの夢を操作し、お坊さまが帰ってきたような夢を見せるのだった。
ふいに、寺の玄関が静かに開く音がしたような気がした。お坊さまが帰ってきたようにふたりには思えた。
お坊さまは、まずミツの部屋を訪れたようだった。板戸ごしにかけられた声に、ミツは目を覚ましたような気がした。
「…お坊さま、おかえりなさいませ。」
寝ぼけながらもミツは丁寧に挨拶をした。お坊さまは静かに微笑み、低い声で語りかけた。
「遅くなったが戻ってきましたよ。あなたが寺で暮らしながら働くという話を聞きました。ご両親には私から話を通します。心配せず、安心してこちらで働いてください。」
ミツは思わず目を見開き、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます、お坊さま!」
「むしろ、この寺を守ってくれるのは、ありがたいことです。それに寺の田畑を使ってやってほしいこともある。後日、詳しく話しましょう。」
わたしにもできることがある、役割がある、ミツは感激に震えるのだった。
お坊さまは静かにそれだけ告げると、次は三郎の部屋へ向かったようだった。
三郎は目を覚ましたような、驚きながら慌てて起き上がったような、気がした。
「お坊さま、夜分遅くにお帰りとは…お疲れ様です。」
「疲れてはいないよ。少し話があります。聞いてくれますか?」
三郎は真剣な表情で頷いた。お坊さまはその場に腰を下ろし、穏やかながらも力強い口調で語り始めた。
「君に伝えたいことあります。この地では、これから新たな技術が必要になるでしょう。木炭に頼らない製鉄の技術、鉛や水銀を使わない金銀銅の精錬の工夫、そしてガラスの製造法です。寺の裏山の鉱石を使ってこれらの知識を活かし、君たちが未来の道を切り開いていくのです。」
お坊さまの言葉は、三郎にとっては驚きとともに大きな期待を感じさせるものだった。
「私にそのようなことが…できるでしょうか。」
「できるとも。君にはその資質があります。だからこそ伝えに来たのです。」
お坊さまは微笑み、三郎に具体的な技術や方法を詳しく語り聞かせた。それは三郎が夢で見てきた光景とも重なるような、不思議なほどに現実味のある内容だった。
そうか、あの不思議な蓮の花のような金属の建物は、これだったのか。それにしても、たたら製鉄をはるかに超える温度がそんな構造でできるとは驚きだった。大日如来さまのお導きだろうか。明日からさっそく実験の準備にとりかからなくては。
お坊さまは、また明日も早く出発するが見送りはいらない。寝ていてください。といって本堂に向かったようだった。
翌朝、ふたりが目を覚ますと、もうお坊さまの姿はすでになかった。
本堂でふたりは御本尊を拝んだ。
清々しい朝日が登りはじめるなかで、三郎とミツは互いに昨夜の出来事を語り合い、お坊さまの言葉を胸に刻んだ。
「ミツさん、お坊さまが君のご両親に話を通してくださるそうですね。これで安心してこの寺で暮らせますね。」
「ええ。本当にありがたいです。それにしても、三郎さまが教わった技術…とても重要そうですね。」
三郎は真剣な面持ちで頷いた。
「ミツさんにも、あとで何か田畑の重要なお仕事があるようですね。」
「はい。でも、まずはわたしは三郎さまのお仕事を全力でお手伝いします。」
「お坊さまの期待にそむかぬよう、私も全力を尽くします。この寺でお坊さまに学びながら、未来を切り開いていきましょう。」
ふたりは互いに力強く微笑み合い、寺での新たな生活と、与えられた使命に向けて歩み始める決意を新たにした。
次回はミツと母親の別れ。
あらたなくらしの始まりです。




