第15夢 砂金をめざして登る山道、近づくふたりの夢
なかよく握り飯を食べるミツと三郎。
お坊さまに教えてもらった砂金を採りに出かけます。
握り飯を食べながら、三郎が口を開いた。
「実は、お坊さまから教えていただいたのですが、この近くの沢で砂金が採れる場所があるらしいのです。もしよろしければ、ご一緒に探しに行きませんか?」
「砂金…ですか?」
ミツは驚きと好奇心が入り混じった表情で三郎を見た。
「ただ、山道だと思うので少し大変かもしれません。ミツさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。私、山道は慣れていますから。」
ミツは自信に満ちた声で答えた。
「それは頼もしいですね。では、お昼が済んだら早速向かいましょう。」
三郎が穏やかに微笑むと、ミツも頷いて握り飯をほおばった。
昼食を終えた二人は、お坊さまから聞いたという砂金の取れる沢へ向かった。山道が続く中、ミツは軽快な足取りで三郎の道案内を聴きながら前を進んでいく。
「ミツさん、本当に山道に慣れてますね。私よりずっと頼もしい。」
三郎が感心したように言うと、ミツは振り返りながら笑顔を見せた。
「炭焼き小屋や畑に行くとき、いつもこういう道を歩いているんです。慣れればコツがわかるんですよ。」
「なるほど。それにしても、上手ですね。」
その言葉に少し得意になったミツは、さらに軽快な歩き方で先を進む。足場の悪い苔むした岩場に差しかかっても、特に苦労することはなかった。
「ここは滑りやすいので、こっちのところを踏むと安定しますよ。」
ミツが自信満々に言いながら岩場を軽やかに越えていくのを見て、三郎は笑みを浮かべながら頷いた。
「ありがとうございます。ミツさんの言う通りにすると、確かに歩きやすいですね。」
その言葉に気を良くしたミツは、さらに調子に乗って歩みを速めたが、次の瞬間、苔に足を滑らせた。
「きゃっ!」
体勢を崩したミツの体が傾き、岩場から滑り落ちそうになる。
「危ない!」
三郎が咄嗟に手を伸ばし、ミツの腕をしっかりと掴んで抱き留めた。
「すみません、調子に乗りすぎました……。」
ミツが顔を真っ赤にしてうつむくと、三郎は少し困ったように微笑みながら、優しく言った。
「いえ、無事で何よりです。ただ、山道は油断大敵ですよ。これからはお互い気をつけましょう。」
三郎の落ち着いた声に安心したミツは、小さく頷いた。二人の顔が近く、ミツは緊張しながらも、三郎の腕の力強さと温かさを感じていた。一方、三郎も少し顔を赤くしながら、優しくミツを立たせた。
「…それでは、また登りましょうか。こんどは私が先に進みますので、後からついてきてください。」
「はい、ありがとうございます。」
三郎が前を歩き始めると、ミツは慎重な足取りで後をついていった。ふたりの距離が少し近づいたように感じるのは、気のせいではなかった。ふたりの心には温かいものが広がっていた。
ぐっと近づいたふたりの距離。
次回は砂金の沢。