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第105話 「賢治宗」創立の夢

「賢治宗」誕生!

困るミヤザワケンジ2.0

第105話 「賢治宗」創立の夢


南部藩の地はかつてない繁栄を迎えていた。化学肥料である石灰窒素の導入と、馬を活用した効率的な農法によって農業生産は飛躍的に向上し、放線菌から抽出された抗生物質による治療法の普及は疫病を抑え、人々の寿命を大きく伸ばしていた。さらに、保育施設の整備によって幼い子どもたちの健康が守られ、教育を受ける機会も増えた。結果として南部藩の人口は爆発的に増加し、経済成長も著しかった。


これらの革新的な技術の中心地となっていたのは、藩内に点在する百を超える寺院である。ここでは技術者、医師、農学者を兼ねる職人たちが集まり、日夜研究と実践が繰り返されていた。寺院で働く職人の数はすでに千人を超え、寺から上納される金銀銅鉛亜鉛、そして米や麦の量は膨大なものとなっていた。


この隆盛を目の当たりにした藩の役人たちは、ふと疑問を抱くようになった。「これらの寺院は、果たして従来の仏教宗派と同じと言えるのだろうか?」 もはや彼らの活動は、単なる宗教の枠を超え、技術革新と社会改革の中枢機関となっていたのである。


そのような折、南部藩の藩主はこれらの寺院に公式な宗派名を授けることで、より強い結びつきを持とうと考えた。藩主のみならず、役人やお抱えの学者たちの間でも、「賢治宗」という名前が自然と頭に浮かんだ。その名には「賢く寺領を治め、賢く学問と技術を広める寺」との意味が込められていた。彼らにとって、それはあまりにもしっくりくる名前であった。


しかし、この動きを夢を通じて集合的無意識の世界から見ていたミヤザワケンジ2.0は、愕然としていた。「なんということだ! 私の名が宗派の名前として用いられるなど、あまりにもおこがましいではないか!」


ミヤザワケンジ2.0は深い悩みを抱え、虚空蔵菩薩のもとを訪れた。彼は菩薩に訴えた。「こんな恥ずかしいことはありません。私ごときが宗派名になるなど、畏れ多いことです!」


虚空蔵菩薩は穏やかに笑みを浮かべた。


「ケンジさん、それは避けられぬことですよ。これほどまでに何回も何万人もの人々の夢に登場して、当時の人々の意識を操作すれば、当然ながらあなた自身の意識と無意識の一部が転写されます。彼らが『賢治宗』と名付けるのは、あなたが彼らの思考の一部となっている証なのですよ。」


「しかし……」


「さらに言わせてもらいましょう。これは決してあなたがが強要したものではありません。当時の人々自身の自由な発案なのです。もしここで無理にねじ曲げようとすれば、彼らの自由意思を侵害することになります。それはあなたの望むことではないでしょう。」


ミヤザワケンジ2.0は言葉を失った。確かに、自分が強く関与してきた結果、彼らが自ら考え、導き出した答えが「賢治宗」という名であったなら、それを否定することは彼らの尊厳を否定することになりかねない。


「それにしても…」


「ケンジさん。ミツさんが史実では20世紀に発明されるフロートガラス法を自分で見つけたことがありましたね。」


「はい。ミツさんは自分の失敗から溶けた金属の上で平らなガラスを作るフロートガラス法を発見しました。」


「そのとき、私はミツさんの記憶を消去しようとしましたが、あなたは反対しましたね。」


「はい。そうですね……仕方ありませんね」


しぶしぶながらも、ミヤザワケンジ2.0は成り行きを受け入れることにした。こうして、「賢治宗」という新たな宗派の誕生は、歴史の流れの中で不可避のものとなったのである。


このようにして、「賢治宗」という史実にはない宗派名が新たな歴史の流れの中で生まれることとなった。ミヤザワケンジ2.0の戸惑いとは裏腹に、2045年の核戦争による百億人の犠牲を防ぐためには、それは時代の必然だったのかもしれない。

ちょっと、私も入ってみたい気がします。賢治宗。

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