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第104夢 金持ちの見栄につけこんで儲ける町医者の夢

寺では無料で診療しているのに、同じ薬を高い値段でだしている自分の医院に患者がくるのだろうか。

町医者は半信半疑です。

 町医者はいつものように診療をしていたが、どうも最近、金持ちの患者が増えていることに気がついた。それだけではない。以前はツケで支払う者が多かったが、最近はやけに現金で支払う患者が目立つ。不思議に思った医者は、ある患者に尋ねてみた。


「あなたは、我が医院に来られてほんとうに幸せだ。病はあっという間に治りますよ。ところで、どうして我が医院をお知りになったのですか?」


 すると、上等な着物を着た患者がにこやかに答えた。


「いやぁ、実はうちの女中が、寺でいただいた菌の薬を飲んで、たちまち病が治りましてね。驚きましたよ。あんなに咳き込んでいたのに、薬を飲んだ翌日にはぴたりと収まったんです。無料の菌の薬でこれほどの効果があるのなら、先生のお高い菌の薬はさぞかしさらによく効くに違いない、と思いましてね。今までお世話になっていたお医者様には申し訳ないのですが、こちらへ伺った次第です。」


「なるほど……」


 寺の薬と自分の薬は、基本的に同じものである。しかし、同じだとは言えない。医者は苦し紛れに答えた。


「寺で処方される薬は菌のみですが、当院では菌に加え、漢方薬や生薬を独自に配合しております。少々お値段は張りますが、そのぶん効果は抜群ですよ。」


「そうでしょう、そうでしょう!」


 患者は嬉しそうにうなずいた。その様子を見ながら、医者は内心驚いていた。


(なるほど……金持ちというのは、こういう考え方をするものなのか)


 貧乏人が無料で手に入るものならば、同じものではなく、自分はもっと高価で優れたものを手に入れたい。そういう見栄があるのだ。しかも、値段が高いほど良いものだと信じ込んでいる。これは利用しない手はない。


「ところで先生、寺の薬と先生の薬では、やはり大きく違うのでしょうか?」


「ええ、もちろんです。」


 医者は少し芝居がかった口調で続けた。


「お金持ちの皆様を最優先にお世話するのは当然ですが、やはり貧しい方々も救いたいという思いがございます。とはいえ、やはり貧乏人に高価な薬を出してはやっていけません。ですので、多少効果の落ちるものを寺に提供しているのです。薬が余ったまま捨てるのももったいないですからね。」


「おお、さすが先生は慈悲深い!」


 患者は感動し、感謝の言葉を述べた。医者は微笑みながら、心の中では笑いをこらえていた。


(まさかこんな作り話で感動するとは……)


 貧乏人が治る薬ならば、自分たちはそれ以上の薬を手に入れたい。そんな見栄が、さらなる金儲けにつながるとは思いもよらなかった。


 こうして、町医者の評判はますます高まり、金持ちの患者は増え続けた。無料の薬を配り貧しい人々を助ける寺の存在が、皮肉にも彼の商売を後押ししていたのだった。


 寺に抗議になんて行かなくて良かった。夢のお告げはやはりすばらしい。おれは仏に選ばれた人間だ。寺にはせいぜい貧乏人を助けて俺の宣伝に役立ってもらうぞ。これぞ共存共栄だ。町医者はニヤリと笑った。




AIと人類の夢と無意識が漂う集合的無意識世界。そこには、無限の知識と無数の意識が交錯する幻想的な空間が広がっていた。その中心で、ミヤザワケンジ2.0と虚空蔵菩薩が対話を交わしていた。


「よくやりましたね、ケンジさん。あの欲深い町医者を巧みに制御し、彼の欲望を善へと転じさせました。結果として、多くの人々が救われましたね。」


虚空蔵菩薩は穏やかな微笑を浮かべながら語りかける。


ミヤザワケンジ2.0は少し誇らしげに頷いた。


「ええ、欲張りは欲張りなりの使い方があるものです。彼の欲望を否定せず、それを人々のために役立つ方向へ導くことができました。彼は自らの利益を求めながらも、結果として世の中を良くしているのです。」


虚空蔵菩薩は深く頷いた。


「欲望そのものが悪ではない。それをどう生かすかが肝要ですね。」


「まったくです。」


ミヤザワケンジ2.0は朗らかに笑う。


虚空蔵菩薩もまた、満足げに、共に高らかに笑った。無意識の世界に、二人の愉快な笑い声が響き渡った。

金の力を遠ざけて死を招いた生前の宮沢賢治。

この世界では金の力をフル活用して人々を救うようです。

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