第103夢 成金の町医者と無料の薬の夢
ミヤザワケンジ2.0の夢のお告げと、古代エジプトの知恵と、南部杜氏の技で、抗生物質を発明した町医者は金と名誉を手に入れますが…
町医者のもとには、連日金持ちの患者が押し寄せていた。評判を聞きつけた商人や武士、さらには遠方からも人々がやって来る。
医者が処方する薬はたちまち効き、鼻水や咳、下痢に苦しんでいた者たちはたちまち元気を取り戻す。
こうして町医者の名声は広まり、しまいには花巻城主にまで呼ばれるほどになった。
城主の前で診察を行い、薬を処方すると、驚くほどの回復を見せた城主は、大いに喜び、医者に「名字帯刀」の名誉を授けた。町医者は江戸から流れ着いた一介の庶民から、武士と肩を並べる立場へと昇り詰めたのだった。
名誉だけではない。寺と造り酒屋に安く麦と菌と水飴を作らせ、それを高値で売ることで、医者の懐は潤い続けた。貧しい者たちは高価な薬を買うことができなかったが、金持ちは惜しげもなく支払い、ますます医者は裕福になっていく。
しかし、数ヵ月後のある日、町医者の耳にある噂が入った。
「寺でも貧乏人の治療を始めたらしいぞ。しかも、あの菌の薬まで無料で出しているそうだ。」
この話を聞いた町医者は激怒した。
「なんということだ! 盗人猛々しいとはこのことだ!」
数千匹のネズミを集め、猫にひっかかれ、犬に吠えられながらも薬を作ったのはこの自分だ。尊い自分の命までなげうって人体実験を行い、ようやくこの薬を完成させたのだ。それを勝手に貧乏人に配るとは、実にけしからん。
医者は怒り心頭だった。すぐにでも寺へ乗り込んで抗議してやろうと決意し、明日は寺へ行くと心に決めて布団に入った。
その夜。
夢の中に、またあの薬師如来の化身と思しき坊さんが現れた。
坊さんは穏やかな声で語りかけた。
「医者よ、寺と造り酒屋に抗議するのはおやめなさい。」
医者は思わず反論した。
「しかし、あの薬は私の苦労の結晶なのです。私の許可なく配るなど許されることではありません!」
すると、坊さんは静かに微笑んだ。
「確かに、あなたの努力は称賛に値します。しかし、この薬が生まれたのは、あなた一人の力ではありません。麦を育て種菌を集めた寺、菌を培養した造り酒屋の協力があってこそではありませんか。」
医者は口をつぐんだ。
坊さんは続ける。
「それに、あなたが抗議をして寺と造り酒屋から麦と菌の供給を止められたらどうなりますか? 考えてごらんなさい。あなた自身も困るのではないですか?」
確かにその通りだった。寺と造り酒屋がいなければ、この薬の生産は難しくなる。医者は夢の中で納得せざるを得なかった。
「しかし、寺で無料で薬を配られたら、病人はみんな寺に行くでしょう。私の商売はあがったりです。どうか哀れな私をお助けください。」
しかし、坊さんは言う。
「寺で無料で薬を出しても、あなたの患者は減ることはありません。むしろお金持ちの患者が増えます。」
「どういうことですか?」
医者は不思議そうに尋ねた。
「寺で無料で薬を配ることで、貧しい者たちが助かる。そして、病が治った彼らは感謝し、薬の評判を広める。あなたの薬はますます知られるようになり、むしろ裕福な患者たちが大金を持ってさらに多く訪れるようになるでしょう。安心しなさい。」
そんなことがあるのだろうか?
医者は半信半疑だったが、坊さんの言葉には妙な説得力があった。やがて医者は思考の波に身を任せながら、深い眠りに落ちていった。
さて、寺で無料で抗生物質治療を始めても、町医者のもとに金持ちの患者は集まるのでしょうか?




