第102話 放線菌と水飴の薬の夢
ミヤザワケンジ2.0の夢のお告げで、古代エジプトの知恵と南部杜氏の技を活かして、放線菌の抗生物質の薬ができました。
儲かる町医者。
しかし、子どもが薬を飲んでくれません。
翌朝、医者は爽快な気分で目覚めた。
「……おお、なんだか体が軽い!」
驚いたように呟きながら布団から起き上がる。確かに鼻水は止まり、喉の違和感も消えている。頭も冴え渡り、身体全体が軽く感じられる。
「先生! どうですか?」
下男が駆け寄ってきた。
「すごいぞ、まるで別人になった気分だ!」
医者は感動しながら答えた。
「これは本物だ。よし、次の段階に進もう!」
医者は造り酒屋に放線菌の大量培養を依頼した。酒造りの技術を応用すれば、大量生産が可能になると踏んだのだ。
それから数日後。
医者の変化は町中の評判になった。
「あの若先生、最近すっかり健康になったねぇ」
「前はいつも鼻を垂らしてたのにねぇ」
「鼻を垂らしていないと、なかなかのいい男じゃないかい?」
近所のおかみさんたちの間で噂が広まり、自然と医者の元に患者が集まり始めた。
医者は放線菌を生やした麦を砕いて粉薬にし、漢方薬や生薬とともに患者に処方するようになった。
そして驚くべきことに
「先生、咳がすっかり止まりました!」
「鼻水が出なくなったよ!」
「お腹の調子も良くなった!」
「ケガの傷が化膿しないで治りが早い!」
患者たちの症状が次々と改善され、町の評判はうなぎ登りだった。
この時代はウイルス性の病気よりも細菌性の病気のほうが多く、しかも耐性菌がまだ存在しなかった。つまり、放線菌から生まれた抗生物質は驚くほど効いたのだ。
結果、医者はさらに大金持ちになった。
「ふはははは! ついに俺の時代が来たぞ!」
医者は満足げに微笑み、次なる野望を胸に抱くのだった。
大人の患者たちは、医者の処方する粉薬を素直に飲んだ。効き目があると評判になり、医者のもとを訪れる患者は増える一方だった。しかし、問題は子どもだった。
「土臭い……」
小さな子どもは、粉薬を口に入れた途端に泣き出してしまう。中には顔をしかめるだけでなく、口に入れた瞬間に吐き出してしまう子もいた。これではせっかくの薬が無駄になってしまう。
困り果てる母親たち。「どんなに効果があっても、飲ませられなければ意味がない」と嘆く声が増えた。
しかし、それでも子を思う親たちは、薬代を惜しまなかった。どんなに高価でも、わが子の病が治るならばと、金を惜しまずに支払っていく。
町人や商人でこうなのだ。お殿様やお公家様のお子様をお治ししたらどれだけ感謝され、金銀財宝をいただけるだろうか。
「もっと儲けるには……」
医者は考え込んだ。このままでは、子どもの患者が増えても、薬を飲んでもらえなければ治療の効果も薄れ、評判も落ちてしまう。子どもたちにも薬を確実に飲ませる方法を見つけねばならない。
悩みながら花巻の城下町を歩いていたとき、ふと、路地の一角に人だかりができているのが目に入った。子どもたちが群がっている。何かと近寄ってみると、それは水飴売りだった。
大きな鍋から木の棒を使って粘り気のある水飴を取り出し、子どもたちに渡している。子どもたちは口を開けて嬉しそうにそれを舐めている。
「そうか!」
医者は思わず声を上げた。水飴に薬を混ぜればいいのではないか。
粉薬をそのまま飲ませるから子どもたちは嫌がる。だが、甘い水飴に混ぜ込めばどうだろう? きっと気づかずに喜んで舐めるはずだ。
さっそく医者は水飴売りの老人に声をかけた。
「水飴売り!言い値で買うから少し分けてくれ!」
水飴売りの老人は大人の医者があわてて水飴を買いたいというので少し驚いた。しかし金を払うならと、喜んで水飴を売ってくれた。
医者は急いで家に戻ると、放線菌を生やした麦の粉薬を水飴に混ぜ込んでみた。味見をすると、土臭い匂いが薄まり、気にならない。
「よし、これで試してみよう」
翌日、薬嫌いの子どもに試してみると、嫌がるどころか喜んで舐めた。母親たちは驚き、泣いて感謝して、喜んで金を払った。
水飴なら麦芽から作れる。寺と造り酒屋に頼めば安く作れるだろう。それに薬を混ぜて高く売るのだ。
こうして、医者の薬はさらに評判を呼び、ますます儲かることになった。
当時、ひとりの女性が産む子どもの数は十人以上でしたが、史実では、多くが小さいうちに亡くなりました。
しかし、放線菌の抗生物質と、食糧事情の改善、保育施設の充実により、この世界では多くの子どもたちが助かります。




