第100夢 下男のすっきり爽快の夢
江戸時代初期の岩手花巻
医者は下男に抗生物質を飲ませました。
その結果はいかに。
医者は深く息を吐き、布団へと身を沈めた。寝返りを打ちながら、明日の朝、もし下男が起きてこなかったらどうしよう、とふと考えがよぎる。しかし、すぐにその不安を振り払った。この菌は確かに効くのだ。もし成功すれば、俺は大金持ちになり、町の人々を救うことができる——そう考えながら、いつしか眠りに落ちた。
翌朝、医者は目を覚ました。まだぼんやりとした頭で枕元の光を確認し、ゆっくりと体を起こす。
「先生!」
突如、勢いよく襖が開かれ、下男が駆け込んできた。息を切らしながらも、その顔には喜びの色があった。
「先生、すごいです!」
医者は慌てて布団から身を起こした。
「どうした?」
「鼻水が止まりました! それだけじゃないんです。頭が重かったのも治り、咳も止まり、昨日まで痛かった歯ぐきの腫れもなくなっています!」
下男は興奮気味に語りながら、自分の頬を軽く叩いた。「本当に調子がいいんです。体が軽いし、頭もすっきりしてる。」
医者は思わず下男の手を取り、目を見開いた。
「……本当か?」
「本当です、先生!」
二人はしばし沈黙し、次の瞬間、歓喜の声をあげた。
「やったぞ!」
医者と下男は互いの肩を掴み、笑い合った。ついに、ついに成功したのだ。これはただの風邪薬ではない。体の不調全般を改善する、まさに夢のような薬だと医者は思った。
もちろん放線菌の抗生物質はそんな万病に効く薬ではなく、それだけこの時代の人々は細菌性の炎症を体のあちこちに抱えていたということなのだろう。
「この菌はすごい……! 俺たちは本当に、とんでもないものを手に入れたのかもしれない……。」
医者は震える手で小瓶を握りしめた。もしこの薬が広まれば、人々は病気から解放され、医療の概念さえも変わるかもしれない。そして、それを生み出した自分は——
「先生、俺たち、大金持ちになれますよ!」
下男が笑いながら言うと、医者もまた笑った。
「そうだ。俺も、お前も、国中の人々に感謝され、大金持ちになれる!」
二人は固く手を握り合った。
「よし!俺も飲んでみるぞ!」
医者も覚悟を決めた。
ようやく医者自身による人体実験です。