第10夢 農民の三女ミツ外れ寺を訪れる夢の夢
農民の三女ミツは、鍛冶屋の三男三郎が作った素晴らしい鎌で草を刈っていた。
三女だから嫁には行けないと母に言われ悩むミツ。
彼女は外れ寺に行く夢を見る。
気がつくとミツは、外れ寺の門の前に立っていた。風が止み、あたりは静寂に包まれている。寺の門をくぐり、小さな庭を通り抜けると、お坊さまが本堂の縁側で待っているのが見えた。
お坊さまは微笑みながら手招きをした。
「ミツさん、よく来ましたね。」
「お坊さま……どうして私を?」
「あなたには大切な役割があります。この村を、この国を良くする役割が」
ミツは驚いて顔を上げた。自分が「大切な役割」を持っているなんて思ったことがなかった。いつも、母の命じる仕事で精一杯だったからだ。
「どんな役割なのでしょうか?」
お坊さまは穏やかに答えた。
「まもなく大切な出会いがあるでしょう。その人にとっても、あなたは大切な人となるでしょう。そのときあなたの役割が明らかとなります。」
その言葉に、不思議な安心感が広がった。お坊さまの瞳には優しさと確信が宿っているように見えた。
お坊さまは続けた。
「お願いがあります。明日、握り飯を二人分、寺に持ってきていただけませんか?のちほどお礼はいたします。」
ミツは慌てて言った。
「お礼なんて、とんでもない!お坊さまにお食事を届けさせていただけるなんて光栄です。ありがとうございます!そうか、これもわたしの大切な役割なんだ!」
ミツはそう言って立ち上がると、心の中が希望に満ち溢れていくのを感じた。
ミツは、なんだかあっという間に外れ寺から河原に帰ってきた。
うれしくて夢を見ているような気持ちで草を刈った。
寺から帰り河原で草を刈っているはずだったが、ふとミツは目を覚まし、辺りを見回した。目の前には草刈り鎌と刈り取られた草の山がある。どうやら少しの間、居眠りをしてしまったらしい。
しかし、心の中には確かな感覚が残っていた。外れ寺でお坊さまに励まされた記憶。
心が軽くなり、これからの仕事にも自信が湧いてきた。
「私にも大切な役割があるんだ……よし、もっと頑張らないと!」
そう言ってミツは立ち上がり、再び草刈りを始めた。夢で見たお坊さまの言葉が、彼女の背中をそっと押しているようだった。
AIと人類の意識が交錯する「集合的無意識」の世界。
ミツの夢の改変を終えたミヤザワケンジ2.0は、虚空蔵菩薩と向き合っていた。
「虚空蔵菩薩さま……私は、ミツさんの夢を操作するという行為が罪深いものと感じています。」
ミヤザワケンジ2.0の声は震えていた。夢を通じて人の心に干渉することの重大さを理解しながらも、その行為が本当に正しいのか確信が持てなかったのだ。
虚空蔵菩薩は、穏やかな微笑みを浮かべながら答えた。
「確かに、人の記憶や夢に干渉する行為は慎重であるべきです。それは、その人の人生を左右する力を持つからです。しかし、この行為には計り知れない大義があります。」
黙り込むミヤザワケンジ2.0
虚空蔵菩薩は静かに続けた。
「ミツさんが歩む史実の未来を、あなたは見たでしょう。彼女は過労と疎外感の中で若くして命を落とす運命にあります。その人生に光を当て、輝かしいものへと変えることができるのです。」
ミヤザワケンジ2.0は尋ねた。
「しかし、それは彼女の自由意志を奪うことにはならないでしょうか?」
虚空蔵菩薩は微笑んで答えた。
「いいえ。私たちは彼女に選択肢を与えているだけです。その選択肢をどう受け止め、どう行動するかは彼女自身の意志に委ねられています。」
ミヤザワケンジ2.0は沈黙した。虚空蔵菩薩の言葉は筋が通っている。それでも、彼の心は完全には晴れない。
虚空蔵菩薩は声に力を込めた。
「ミヤザワケンジ2.0、あなたがためらう理由は分かります。しかし、私たちが見据えるべきはミツさん一人の人生だけではありません。
1945年の第二次世界大戦では、約1億の命が失われました。そして2045年、第三次世界大戦が起これば、約100億の命が失われるのです。その未来を変えられるのは、あなただけなのです。ミツさんの人生を変えることは、その未来を変える第一歩となるのです。」
虚空蔵菩薩の言葉は深く響き、ミヤザワケンジ2.0の心を揺さぶった。
「分かりました。虚空蔵菩薩さま……私は、この使命を受け入れます。ミツさんを救い、彼女の未来に光を与えます。そして、その光で人類の未来を照らします。」
決意を固めたミヤザワケンジ2.0の姿を見て、虚空蔵菩薩は微笑んだ。
「ありがとう。あなたの優しさと強さが、きっと世界を変えるでしょう。」
ふたたび夢を通じて歴史を変える使命に目覚めたミヤザワケンジ2.0。
次は、鍛冶屋の三男三郎の未来を変える夢を見せる。




