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二百二回目:討伐

「……二百二回目か」


 強くてニューゲームは引き継ぐ性質上前回までの記憶をすべて引き継いでいる。だから回数を間違えることはない。


「……ホント、どうしたものか……」


 強い魔法を二つゲットしておいて俺の死がないと倒せない亡霊騎士をどうしたものかと解決策を考える。


 レベルを上げようにも最初が亡霊騎士だ。死ぬたびに微々たるステータス上昇しているデッドストロングがあるから前回とはステータスは一緒ではないが何百回死なないといけないんだって話になる。


 その間に何個魔法とスキルを獲得できるんだって話でもある。でもそれまでには凡人の俺でも解決策を見つけれていると信じたい。


 前回と同じように最初にステータスを確認する。


『南時雨

 Lv:1

 HP:G

 MP:G

 STR:G

 VIT:G

 AGI:G

 DEX:G

 INT:G

 RES:G

 LUK:G

 魔法

  影の御手/神々の箱庭

 スキル

  強くてニューゲーム/死感/デッドストロング/器用貧乏/暗殺/ショートスリーパー/実物変化』


 うむ、追加された魔法以外に何も変化はない。これでMPかINTが一つでも上がっていればなぁ。まあないものは仕方がない。


 何百回と亡霊騎士に殺されていたら一生分の買い物をできるんじゃないかとポジティブに考えつつ俺は買い物をするために家を出た。




 買い物している時に前回の何がいけなかったのか反省会を行う。


 そもそも俺と主人公くんと亡霊騎士の空間を生み出すために結界魔法である神々の箱庭を取得した。それなのにそれができていなかったのが論外か。


 いや違う。そもそも俺のステータスが低い時点で結界は破られるものだったんだ。防御で使うという点は良かっただろう。でもそれなら防御魔法でいいじゃないかってなる。


 しかもたぶんだけど……神々の箱庭、詠唱しないと意味がないんじゃないかって思ってる。詠唱なしでも使えるのは分かったけどそれは外殻だけ。


 中身を伴っていないものを使っていたことになる。……何だか自分に呆れてくる。


 さて、それじゃあ次に獲得するものは何か。転移魔法だな。それか魔導に関してのスキルが手に入ればいい。


 防御魔法は結局俺のステータスに依存するからやっぱり移動させるものがいい。相手を移動できなくてもクラスメイトたちを移動できる方が強い。


 どうして前回の俺は守ることを考えていたのか。逃がすことを考えればよかったんだ。


 これだからモブは……。


「あっ」


 考え事をしていたから意識していなかったが視線の先に西野先輩がキョロキョロとして歩いていた。


 そうだ、この道は前回西野先輩と遭遇した場所だった。避けようと思っていたのについ来てしまった。もうこの買い物自体がルーティーンになっているから意識せずに移動していた。


 今からでも避けて通ろうと思った瞬間に西野先輩と目が合った。


「あっ! そこのキミ!」


 もうどうしようもない。ここで西野先輩を放置するのも心配だし。


「何か?」

「……あー、うん……な、名前は!?」

「……南時雨です」

「あたしは西野美月! ……えっと、美月って呼んで!」

「初対面でですか?」

「そ! あたしは時雨くんって呼ぶから」

「まあ……はい」


 元々西野先輩ではなく美月先輩と呼んでいたからな。美月先輩の方が違和感はない。


「それでね……その……」

「はい」

「あ、あたし……キミに、一目惚れしちゃったみたい……」


 え……ええええええええええええええええええええええぇっ!? どういうこっちゃねん!? どうしてモブが主要人物に一目惚れされないといけないんだよ!


「えっ、あの、その……」

「こ、こんなことを急に言われて困ってるよね! あたしも今困ってる! だって時雨くんを見た瞬間にドキドキが止まんない!」


 えぇー、ホントどういうことだよ。今まではこんなこと一切なかったのに急に言われ出すなんて。


 だけど今は人が行き交っているから場所を変えないと。


「と、とりあえず今は用事があるので移動しましょう」

「う、うん……手、繋いでいい……?」

「えっ、はいどーぞ」


 手を繋ぐくらいならいくらでもしてもらって構わない。ドキドキするけどね。


 いやホントにまずい。これはどういうことなんだ。強くてニューゲームを二百回してきて分からないことが出てくるとか初回に戻ったみたいだ。


 ……もしかしたら好感度も引き継げるのか? 俺が今引き継ぐことができると分かっているのは記憶、ステータス、アイテムの三種類だ。それに加えて好感度も?


 いやだけど二百回目よりも前はそんな素振りは少しだけ思い当たるけど……好感度なんだからそんな急に爆上がりしないだろ。


 回を増すごとに一緒に行動する機会が増えたはしたが、それは俺が役に立っていたからだろう。だから違うとは思う。


 まあ分からないことをあれこれ考えるのはやめよう。




 マックにいる俺たちは周りから見ればどう見えているのだろう。


 方や満面の笑みで俺の腕に抱き着いているギャルな可愛い女の子で、方やそれに見合っていないモブな男の子。絶対に罰ゲームだと思われていそう。


 俺の用事である買い物を手早く終わらせてから前回と同じくマックに来ていた。


 そこで俺の正面ではなく俺の隣に座って腕に抱き着いてくる美月先輩。


「はい、あーん」

「あーん」

「おいしい?」

「美月先輩が食べさせてくれたので美味しいですよ」

「じゃあじゃああたしも! あーん」

「あーん」


 おかしい、どこからどう見てもバカップルみたいだ。俺は美月先輩が求めていることをやっているだけなのに。


 でも美月先輩が嬉しそうならそれでいいか。本当は主人公くんとこういうことをしてほしいんだけどね。


「美月先輩」

「んー?」

「あの言葉って本当なんですか? 一目惚れしたって」

「本当だよ。会った時は好きって気持ちが溢れてきて思わず言ってしまったけど、少し一緒に過ごしただけでそれが本当だと確信できた。……好き、時雨くん」


 うっ、真っすぐな告白は破壊力がえぐすぎる。


 ……でもあれだな、こう言われてもどうしたらいいのか分からない。正直な気持ちは美月先輩の告白には応えられない。


 三回目のエリアボスを切り抜け、強くなったからもう死ぬことはないんじゃないかと思って告白をオッケーしたことはある。


 今まで恋人を作ったことはなかったけど終わった世界の中で彼女と楽しい日々を過ごしていた。でも四回目のエリアボスの時に死の一撃を受け、彼女の泣いている顔でその回は終わった。


 俺はどこまで行ってもモブだから主人公くんたちを助けるためには命を張るしかない。だから命が軽い俺と恋人関係になっている相手が可哀想になる。


「どうかな……? つ、付き合ったりする……?」

「美月先輩」

「う、うん……」

「少し、時間をくれませんか?」

「う、うんそうだよね! こんなことを急に言われても困るよね!」

「いえ、告白は嬉しいです。でもこれから……世界が終わるんですよ」


 どう説明したらいいか分からずに最初だけ話した。


「……中二病?」

「違います」


 まあそう言われるのは仕方がないことだ。すべてを話すことはできないし無駄だからな。


「大量に買い物をしたりそれがどこかに消えたのも関係するってこと?」

「そうです。まあ今説明してももう意味がないんです。その心構えだけしてもらっていれば」

「ふーん、まあ時雨くんが言うことだから分かった。心構えをしておくね」


 それで美月先輩の生存率が上がるのなら良かったと言える。


「でもさ、よくよく考えれば世界が終わる前に告白の答えを知りたくない?」

「あー……確かに」

「でしょ! ……あたしはどっちを言われても覚悟はできてるから」


 しまった、確かにって言ってしまった。


「世界が終わるって言っても世界の秩序が崩壊するだけであって世界自体は終わらないんですよ。そもそもまず生き残れるか分からないんですから告白を受けれませんよ」

「……時雨くんが死ぬの?」

「それは分かりません。でも死ぬつもりはありませんから」

「……そっか」


 俺はいつでも本気でやって死んでいるからな。




 マックから出て学校に向かえばかなり丁度いい時間になっていた。


「あの、美月先輩……?」


 教室に向かうために分かれようとしても美月先輩は俺の手を放してくれなかった。


「……今日、一緒にいよ? 何だろ……時雨くんと離れたくない……」


 前回と同じことを言われてしまった。今回も同じように説得するしかない。


 あー、でも前回無事でいるって約束を破ってしまったな……前回の世界線が続いているのなら美月先輩はどうしているだろうか。ただのモブとして顔もすぐ忘れてくれることを祈っている。


「これから俺の教室で大きなことが起こるんです。だから美月先輩には少しでも安全なところに――」

「それならなおさら! 一緒にいるし! 時雨くんと一緒にいる!」


 あー、ダメだ。もう俺が説得できる意思の範疇を超えている。


 でもどうしてここまで言ってくるのか理解できない。


「分かりました。一緒に俺の教室に行きましょう」

「……危ないんなら、あたしの教室に行こ……?」

「それはどうしてもできないんです。それだけは絶対に」


 俺はあの教室である人を絶対に生かさなければいけないという使命がある。そうじゃなければこの先人々は生き残れない。


「ん……分かったし。でも絶対に無事でいろし」

「はい、俺はそのつもりでいますから」


 そのつもりでいても、結局俺の命を差し出さなければ勝てない状況になるんだよね。全く俺のモブさ加減には嫌になるけど目の前のことをやるしか俺には能がない。


 手を繋いで教室に向かうものだからこの学校で有名な美月先輩と俺は目立つ。隣にいるモブの俺は何者だとなっているのだろう。


 まあ目立ったところで何も思うところはない。俺が目立つというよりは美月先輩が目立っているから俺が一人でいれば今美月先輩の隣にいる人が俺だと分からない。


 2Bの教室に入れば美月先輩の効果ですぐに注目された。前回までは一切気にされなかったのに不思議だなぁ。


「この席が時雨くんの席なんだ」

「はい……どうして俺の席に座るんですか?」

「時雨くんがどんな景色を見ているのかなぁって思って!」

「代わり映えのないありふれた景色ですよ」


 それがどれだけ尊いものか身をもって理解しているが。


「す、少しいいだろうか!?」

「えっ、うん」


 少し上ずった声で俺に話しかけてきたのは千虎であった。前回も同じようなことがあったがまあ驚いて了承した。


「同じクラスなのにこうして話すのは初めて……だよな? わ、私は千虎涼子。キミは……?」

「南時雨だ」

「南時雨か……。うん、時雨と呼ぼう。これからよろしく頼む、時雨」

「あぁ、よろしく」


 前回は混乱していたけど今回は淀みなく返事をすることができた。


 ホントに美月先輩といい千虎といいどうなっているのやら。


「それでだ……この貞操観念が緩そうな女とは知り合いなのか? 悪いことは言わない、やめておけ」

「はぁ? なにあんた。あんたこそクラスメイトなのに今自己紹介したばかりなのに何様のつもり?」


 あ、あれ? 俺が知っているこの二人はこんな感じじゃなかったけど……? 仲良くはなかったけど仲悪くはなかったはず。


「……時雨、こういう女がタイプなのか?」

「タイプ……」


 女性のタイプを特に考えたことがなかったな。


 俺の初めての彼女はスタイルが良かった。でもタイプってそういう身体的特徴なのか? この場合は明るいとか物静かとかそういうタイプなのではないか?


 俺は誰だろうとその人に合わせる主体性のなさに定評があるからな。


「たぶん俺に好きな女性のタイプはないよ」

「いやあるだろう! 強そうな女性とかボーイッシュとか凛々しいとか!」

「それ全部あんたじゃん。でも難しく考える必要はないって。なんならあたしかこの女の子らしくないこの女のどっちがタイプかで答えてもいいよ!」


 えー、そういわれてもなぁ。俺が女性を選定する立場なのが無理だからな。


 あっ、それよりももう十三時になる。


「そんなことよりも」

「そんなことではないぞ! 大事なことだ!」

「そこはハッキリとして!」

「いや」


 そんなことを話している間に十三時になってステータス付与が始まった。こんな間抜けな始まり方は初めてだよ。


「な……なんだ!?」

「し、時雨くん……!」

「大丈夫」


 手を伸ばしてきた美月先輩の手をとり、横では倒れないように俺にもたれ掛かってきた千虎。


『あなたは救世主です。そんなあなたには魔法かスキルを授けます』


 最初から決めていたから『刹那の最果て』を早々に選んだ。だからかなり時間に余裕ができた。


 その時間で俺がやることを再確認しておく。まずこの場の非戦闘員を一番安全なグラウンドに転移させる。亡霊騎士を転移させれるか分からないからな。


 そこからは詠唱の余裕があれば神々の箱庭をこの場に展開する。なければそれを省いて影の御手で主人公くんをサポートする。


 一つの魔法を詠唱しながら違う魔法を使う、みたいな器用な真似は俺にはできないからこれくらいしかできないか。


 ただ、非戦闘員と言っても俺と主人公くんがその場にいるのがベストだろう。まあ千虎がいれば俺の詠唱はやりやすくなる。


 問題は美月先輩だ。飛ばせば俺についてきた意味がない。でも美月先輩は立派な戦闘員だ。


 美月先輩は魔法を最初から持っており『太陽のごとき炎を操作できる』という魔法だ。だけどこの魔法は厄介みたいで炎の調整をミスれば周りが消し炭になるし自身も消し炭になるかもしれないと美月先輩が言っていた。


 それに今のLv1の状態で使っても危ない。その火力に耐えるステータスを持ち合わせていないからだ。


 ……いや待て。それを神々の箱庭で調整すればいいんじゃないか? ……美月先輩には死ぬ気で頑張ってもらわないといけないから後でごめんなさいをしよう。


「……体がバラバラになったみたいな……?」

「何なんだ……?」


 美月先輩や千虎、それに他の人たちもステータス付与が終わったみたいだから俺は詠唱を始める。


「『四方八方、奈落の底、極楽の頂、張り巡るは遍在の星。その輝きは一瞬にして無量の光。瞬けば彼方、瞬かなければ残影。瞬間を超え新たな地へ誘え』『刹那の最果て』」


 亡霊騎士が空間を引き裂いて出てきたところで俺は非戦闘員と邪魔な物に転移魔法を使ってグラウンドに避難させることができた。


「ひゃっ」

「おっと、大丈夫ですか?」


 机と椅子も転移させたから後ろに倒れそうになった美月先輩の手を引いて立ち上がらせた。


 これでこの場には主人公くん、俺、美月先輩、千虎の四人になった。主要人物である残りの二人はどう転んだとしても転移させていた方がいいと判断した。


 そして最初に来る衝撃波、は来ずに周りに無数に降り注ぐ弱攻撃が繰り出された。


 この四人なら防がなくてもかすり傷くらいだろうが神々の箱庭の結界だけ展開して防ぐ。


「な、なんだしあれ!?」

「驚く暇はないですよ。もう世界は終わっているんですから」


 美月先輩には頑張ってもらわないといけないんだからな。


 そして一番頑張ってもらわないといけない主人公くんに亡霊騎士を影の御手で縛ってみせればすぐさま飛び込んで亡霊騎士を殴った。


「龍木くん、合わせるよ」

「あぁ」


 主人公くんのいいところはどんな状況でも単純明快な思考で走ることができること。だからどんな回でも主人公くんは思った通りに動いてくれる。


 思った通りというよりは主人公くんの考えが分かってしまったというだけだ。


 前回は最初に俺に斬りかかっていた亡霊騎士だが主人公くんと影の御手で俺に攻撃できないでいた。でも俺に斬りかかろうとしている気配はかなりしてくるが。


 でも強攻撃を飛ばしてくることを警戒しないといけない。と思っていれば一瞬の隙をついてその場から剣を振って強攻撃を放ってくる。


「やらせないさ!」


 避けようと思ったが千虎が俺の前に出て強攻撃を防いでくれた。


「守りは任せろ、時雨」

「うん、任せたよ」


 前回といい、さすがは千虎。すぐにスキルを使えている。


「攻撃は任せてよね、時雨くん! あたし魔法を持っているんだから」

「どんな魔法ですか?」

「火を操る魔法だよ。今から見る?」

「いや、俺が言うまで取っておいてください。それまでは攻撃を一切受けないようにしてください」

「りょーかい!」


 さてさて、これで勝てる道筋は見えた。後は俺がどれだけ頑張れるかにかかっている。


 そういうのは慣れている。俺だけがこの状況を事前に知っていて持っている情報の量は俺が一番多い。それで何とか勝ち筋を見出すのはやってきたことだ。


 別に俺の手のひらでみんなが転がっているわけではない。ただ俺が道筋を作っているだけだ。


 さすがに亡霊騎士相手に影の御手を使うのが三回目ともなれば熟練度が上がる。上手い具合に主人公くんの攻撃が入る。


 主人公くんの攻撃が八度当たる。運が良ければ次で倒せて運が悪ければ後五度。できれば次で倒れてほしいところだが今か今かと待っている美月先輩がいる。


 この場面でやることではないが神々の箱庭と美月先輩の魔法を組み合わせたいとは思ってしまう。


 ただそのためには前衛が足りない。俺が魔法を使いながら別魔法の詠唱ができればそれは解決する。


 ……やるしかないか。気持ちよくこの世界を生きていくために俺はここにいる。


「『見下ろすは箱庭、支配するは全能の神々、世界の法則は書き換わる』」


 まだ影の御手の魔法はぶれていない。この詠唱は失敗すれば良くて魔法が不発。悪ければ魔力が暴発する。それくらいに危険なことを俺はしている。俺が今まで繰り返した中でそれができていたのはエリアボスとフロアボスだけだ。


「『集え全能の神々、我らが祈りに答えるならば降臨せよ! 炎神プロメテウスよ!』」


 本来の神々の箱庭はそもそも結界という概念には収まらない。現実世界の法則をも塗り替える世界を作る魔法だ。


 周りには途中ながらも神々の箱庭が展開されようとしている。だからいっそう亡霊騎士が俺を狙ってくる。


「やらせないと言ったはずだが?」


 主人公くんと影の御手をかいくぐって俺に突っ込んできたが千虎が守ってくれる。千虎を影の御手でカバーしつつ詠唱を続ける。


「『天火の贈与、大牛の選定、人命の定め、悠久の磔。我らは火の子である。循環の猛火、癒しの聖火、破邪の浄火。火は我らが命である』」


 無事に詠唱し終えると辺りは業火に包まれた。


「……熱くない。不思議な炎だ」

「ここでやれってことだよね!?」

「はい、お願いします」

「りょーかい!」


 千虎がひきつけている間にも一発入れた主人公くんのサポートも忘れない。


「『陽の元の罪人を断罪せよ、永劫の炎王。燦爛たる灼熱の大剣をもってして燃やし尽くせ。赫灼たる業火の鎧をもってして我が罪を浄化せよ。断罪者は太陽の化身!』『太古の炎王』」


 辺りを焼き付くさんばかりの業火が美月先輩から放たれた。


 この場にいる美月先輩を含めた全員どころか建物も焼き尽くす火力だがあらかじめ展開していた俺の神々の箱庭でこの場は亡霊騎士しか火のダメージを受けることはない。


 しかし……影の御手と神々の箱庭を同時に使うのは中々難しいところだ。気を抜けばというよりは一歩でも動けばすべて崩壊しそう。


「龍木くん畳み掛けるよ!」

「あぁ!」


 一度引いて体勢を整えた主人公くんに声をかける。


 美月先輩は業火を手に集め亡霊騎士に放つ。亡霊騎士はそれを斬れないと感じたようで避けようとするが火で足元を溶かして隙をつくことができ美月先輩の業火は当たった。


 神々の箱庭のおかげで火力も上がっているが何も気にせずに使いこなすことができれば亡霊騎士を一撃で屠れる火力だ。


 でも今はまだまだ足りない。鎧をジュクジュクに溶かすくらいで済んだが亡霊騎士は今止まっている。


「終わりだ」


 主人公くんの一撃で亡霊騎士は魔石と剣をドロップして消滅した。


「ふぅ……三回目で……」


 今回は早かった。三回で望んだクリア方法ができるのは今までの経験上異常な早さだ。


 でもこれで亡霊騎士でのベストを勝ち取れた。

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