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第46話:「凌駕」

前回のあらすじ、唐突にキャラの濃い赤髪エルフが出てきた。どうやら俺の剣術指南をしてくれるみたいだが、ホントに大丈夫か?

森の中だと言うのに、不自然なほど開いた場所。周囲から数メートルほど低く、まるで切り抜かれたような地形に佇む黒い大熊が、物音に気づき振り向く。

物音の正体は、外套を靡かせて降り立った赤髪の女エルフ、ローズだ。

軽く肩を回したりしている彼女の身体は、敵と比べて極めて細く、脆いように見える。平たく言ってかなり心配だ。


「おーい!しっかりと見とけよー!」


「いいから集中してくれ!」


彼女は気楽な様子だが、こっちは気が気じゃない。出会ったばかりとはいえ、顔を知っている人間の死体など見たくない。


「久々だなぁ、この感じ。」


腰の鞘から剣を引き抜くローズ。あんだけ余裕綽々してるんだから大丈夫なんだろうが、一応助けに入る準備だけしておく。


「..っしゃ、始めるか。」


ゆっくりとクマに歩み寄る彼女を、固唾を飲んで見守る。


「ヴゥゥ..」


クマが低く唸り威嚇するが、彼女は歩みを止めない。


「グルォォオオオオ!!」


激昂したクマが咆哮し、それが開戦の合図となった。

───────────────────────────

剛腕。およそ人間には辿り着くことの出来ない領域の力。

食物連鎖の頂点に君臨する我々人間は、しかし単独では矮小な存在であると自覚させられる。

今、自分が敵対しているソレは、ソレが振るう一撃は、我々に防御だとかいう甘えた選択を許さない。受け止めれば、即座に挽肉になる未来が待ち受けているからだ。そもそも出会わないか、遭遇しても全力でやり過ごすしかない。

故に、

先程まで自分と話していた彼女は、剛爪とでも言うべきその一撃で、シュレッダーに掛けられた書類のように寸断される。


「..ッハ、」


──はずだった。

寸断されるべきその矮躯は、依然として健在だった。振り下ろされた爪の、少しズレた横に、彼女は立っている。


少し話は逸れるが、昔聞いたどうでもいい雑学の1つに『笑う時歯を見せるのは実は威嚇の意味がある』というものがある。

今の彼女は、まさにその論の証明だ。

口元は喜悦に歪んで獰猛に牙を剥き、その瞳は敵を睨めつける。


「グオォォォオオオアア!」


クマの2撃目。振り下ろした腕を引きながら、もう片方の腕で薙ぐように切り裂く。

しかし、その攻撃もまた、彼女に届くことは無い。

──動物のように、突出した筋力(パワーやスピード)ではなく、ただ人類(ヒト)のみが持ちうる力──


「よっ、と…」


彼女の刃が、透けるように、振るわれた腕を通り抜ける。

振り抜かれた腕の肘から先は、今しがた地に落ちて血を滲ませた。


「まァこんなところか。そろそろお開きにするぜ?」


ここに来て初めて、彼女の方から動く。

──詰まるところ彼女とクマは、戦い、だとか、勝負、だとか、そういったラインには立っていなかった──


「そらッ!」


振り抜かれた剣は、先と同じように、透けるように通り抜けていた。

クマの上半身が、遅れてズレていく。

──こんなことは、彼女にとっては必要のない、俺の為だけのデモンストレーションだった──

何故なら、

──卓越した技術力、その1点によって、

彼女は敵を凌駕していた。

ルークの異世界定義メモ

エルフとは、耳のとがった、長命の、魔法に関して高い適正のある…まあ、俺たちみたいな現代人がエルフと言われてパッと思いつくソレらしい。

なんでローズは剣振ってんだろうな?

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