第45話:「高貴なエルフ」
前回のあらすじ、ゴブリンをぶっ殺して回っていたら、痴態を知らん女に見られていた。
突如現れた女を用心深く観察する。その女は腰あたりまでの丈の外套を着ていて、それに付いているフードを深く被っていた。下は短パンに何故か腰マントが付いている物を履いているが、ストッキングを履いているので肌が見える面はほぼ無い。おかげで白い肌も相まって絶対領域が眩い輝きを放って…
「一応確認しとくけど、お前がルークで間違いないよな?」
「え?まあ、そうだけど…」
「だよな、良かった。」
女はそれだけ言うと、スタスタと此方に近づいてきた。距離が縮まったことによって垣間見えたフードの隙間からは、紅い短髪と金色の瞳、そして右目に掛けられた眼帯が覗く。って…
「えっ、ちょっ、何してんの?」
息遣いが聞こえる程に接近してきたそいつは、いきなり俺の顔をまじまじと見つめてくる。俺の質問にも答えずに10数秒程見つめたあと、満足気な顔で
「成程。如何にもボク悩み抱えてますって表情に、明日には死んでそうな覇気のない目付き、オマケに白髪まみれの頭…完璧だな。」
「バカにしてんのか?」
いくら何でも初対面のやつにそこまで言われるほどではない…筈である。しかし女は、なおもニヤついた顔を近づけてきて言う。
「バカになんてしてないぜ?寧ろ、オレはお前みたいなヤツの方が好きだ。」
大胆な告白は女の子の特権!?いやそうじゃなくてだな、
「そもそもアンタはどこの誰なんだ。なんで俺の名前を知ってる?」
俺の言葉を聞いて正気に戻ったのか、女は咳払いをして佇まいを正す。
「そう言えば自己紹介がまだだったな。」
フードを外して、その自信を証明するように堂々と名乗る。
「オレはランクA冒険者のローズ。今日からお前の剣術指南をしてやる。よろしくな!」
そう言ってニコッと笑った。…認めるのは癪だが、結構可愛いな。
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剣術指南か。確かに3日前ブラストに頼んだら『それなら心当たりがある。任せておけ。』とか言ってたが、まさか俺が依頼に出向いてる最中に来るとは。
ローズと名乗った女に連れられて、森の中を歩いていく。
「いやぁ。変なヤツだって聞いてたからちょっと期待してたんだけど、その期待を大幅に超える捻くれ具合だな!」
「いや、それ褒め言葉じゃねぇからな?」
さっきからずっとこの調子である。ちゃらんぽらんすぎる、ホントにランクA冒険者なのか疑問符が付く。てか対人がランクZだろ、保育園からやり直せ。
「何だよぉ反抗期か?お姉さんがヨシヨシしてやろうか?てかしちゃーう。」
そう言って俺に縋りついて頭を撫でてくる。うわぁめんどくせぇ。全力で引き剥がしながら応じる。
「うるせぇ離れろ。それにそんなに歳離れてないだろ。」
ローズは見た目から推察するに多分20歳ぐらいだ。これで30とか言われたら、俺はもう女を信じられなくなる自信がある。
「ん゛ーッと、確か今年で..223、だったような。」
「おう、そうか。とりあえず病院行くか?」
「遂に気狂いを見るような目に…!」
よよよ、と泣き真似をするローズ。キャラが濃すぎる。設定は用法用量を守ってくれ。
「ウソは吐いてないぜ?ホラ、コレ見ろコレ。」
あぁ?今度は何だってんだ…って…!!
「これは…エルフ耳か?」
「フッ、その通りだぜ…!」
謎のキメ顔である。エルフは寿命が長い代わりに個体数が少ないらしく、街でも見かけることは無かったのだが、まさかこんな変人種族とは。
まあそうだよな、そんな長いこと生きてたらおかしくもなっちゃうよな。高貴なエルフのイメージが崩れていく…
「おい、そんな顔すんな。自分で言うのもなんだが、他のエルフはこんなんじゃねぇから。だからその憐れみの目を止めろ!」
「なぁーんだ、良かった。」
ほっと胸を撫で下ろす。
「いや、お前も大概失礼なヤツだな……っと、まあいいや、着いたぜ。」
ローズが足を止める。ローズが指を指すそこは、数メートルほど窪んだような地形にっていた。そしてその中心には、クマの魔物。しかも禍々しいオーラを放っているのを見るに、この前見たような魔物化が強い個体だ。
「先に言っとくが、あれを倒せって言うなら無理だぞ。」
修行パートじゃあ最初に師匠に無茶苦茶させられるのがテンプレだが、俺は御免だ。
しかしローズは俺のそんな言葉が予想外なものだったようで
「ん、なんでそうなるんだ?アレはオレの獲物だ。」
と首を傾げる。ん?
「実力もわかんねぇヤツに師事するつもりだったのか?案外素直なとこもあるんだな。」
確かにそうだ…そうなんだが、こいつに正論言われると腹立つな。
「じゃあ、ちょっくら行ってくる。瞬きすんなよ?」
バサッと外套の前を開き、身を翻して降りていく。
何だよソレ…ちょっとカッケェじゃねぇか…




