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第44話:「差を埋める術」

前回のあらすじ、和やかに会話と食事を楽しんでいたと思ったら、唐突に地雷を踏んだ。

鬱蒼とした森の中、俺はゴブリンと対峙していた。剣の柄を右手で強く握り締め、穴が空くほどにそれを睨みつける。


「大丈夫だ…コイツは人間じゃない…大丈夫だ…」


なまじ人型であるが故にあの凄惨な光景を想起させるが、うわ言のように口から漏れ出す言葉で罪悪感に蓋をする。

エギンに戻ってから3日。俺はひたすらゴブリン討伐の依頼をこなしていた。理由は生物を殺すことと、剣で戦うことに慣れるため。前者はこの世界では言わずもがな。後者はパーティのお荷物にならないために、やっておくべきだと思ったからだ。

最初の方は剣の柄を握るだけで震えが止まらなくなるほどだったが、今となっては軽くトラウマが蘇る程度。あとは、上手く剣を振れるようになるだけだ。


「ギィ!」


ゴブリンが明確にこちらを敵と判断する。手にした棍棒を振り上げ…威嚇しているのだろうか?なんにせよ剣を構え、ゴブリンからの攻撃を待つ。さっきは失敗してしまったから、集中しないと…


「ギィィーー!」


痺れを切らしたゴブリンが、その棍棒で殴りかかってくる。ゴブリンとはいえ、武器を用いての攻撃。まともに喰らえば骨折くらいは不可避だ。以前までの俺なら、怯えて大きく身を躱す選択をしていただろう。てか、さっきもビビって避けた。だが、今回こそはやる。心の中で唱える。勇気とは一体何か!


「恐怖を我が物とすること、だッ!」


唐竹割りのように振り下ろされる棍棒の軌道に、俺の剣を斜めに滑り込ませてレールを作る。これにより攻撃のベクトルが大きく外側にズレる!

そのまま左足を大きく前に踏み出しながら、剣を思い切り右に薙ぐ。棍棒を剣に絡めとられたゴブリンは、俺の右後ろ辺りで大きく体勢を崩す。戦闘に於いて体幹を崩すのは何よりも大事な事だと、隻腕の忍が教えてくれた。


「LESSON3ィィ!」


トドメに、剣を振り抜いた勢いのまま左足を軸に体を回転させて、ゴブリンの頭を撥ね飛ばす。


「回転を信じろ。」


2週間も経てばさすがに断定してもいいだろう。この世界の生物は元の世界の生物と比べて明らかに強靭だ。ブラストだってちょっと筋力おかしいと思ったし、ゴブリンだって俺がいくらもやしとはいえ、全力で剣を振り抜いて刃が通らないのはちょっとおかしい。

魔力が原因だとは思うが、それはさておき俺にはその差を埋める(すべ)が必要なのだ。今回は回転エネルギー..遠心力を使わせてもらった。漫画は読み得。


「ッ!決まった…っっ!」


ゴブリンの胴体から血が吹き出し、倒れた。

小さくガッツポーズをキメる。思えば、俺がまともに自分の力だけで敵をサクっと倒したことは無かった。これまでに狩っていた総勢約30匹程のゴブリンも、泥仕合のようにグダグダに屠ってきた。

だがそれにより、肉を斬ることには慣れた。それに麻痺しながらも僅かに残った罪悪感すら、この成功体験によって浄化されて行った。そういうことにした。

普段なら血の匂いに顔を顰めてしまうところだが、それすらも今は勲章のように感じられる。


「ああ、本当に…なんて遠い回り道…」


割と冗談抜きでバカ丸出しな発言をしながら悦に浸っていたが、不意に


「あー、何言ってんのかわかんねぇし…」


声を掛けられた。足音も近づいて来ているが、森の暗がりでまだよく見えない。


「何言っていいのかもわかんねぇんだけど…」


近づいてくるその声は、猛獣の如き荒々しさを感じさせながらも、何処か優しげだ。


「とりあえず、変な癖付く前にその戦い方やめた方がいいぜ。」


木々の影から現れたのは、困り顔の軽装の女。

…ぶっちゃけ、ベルト付けてノールック変身の練習してるの親に見られた時くらいキツい。

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