第43話:「追及」
前回のあらすじ、無事宿に帰ったものの、俺のメンタルは無事ではなかった。
食堂に行くと、既にワイスがテーブルに着いて待っていた。自分達も近くの席に着き、食事を始める。
イミテは元々食事中は自分から喋るタイプではなく、俺もちょっと喋る気分じゃないから静かに食っていたら、不思議そうな顔をした後ワイスが切り出す。
「2人とも、カエイでのデートどうだった?楽しかった?」
ニコニコ笑顔で質問してくるワイス。こんな軽口を叩けるとは。コイツは今日も働いてたはずなのに元気なことで。
「そうですね、すごく楽しかったです。今日はわたし達のために頑張ってくれて、ありがとうございました。」
皿の上を空にしたイミテが、スプーンを起きながら答える。え、早くね?早食いは体に良くないぞ。てか、
「楽しかったのは同意だが、デートって…使い方間違ってるぞ。別にイミテと付き合ってる訳じゃないんだから、ただの外出だ。」
そもそもイミテは俺にとっては恋愛対象外なのだ。歳は16だからギリギリ高校生くらいだが、見た目が幼すぎる。
「え?デートって年頃の男女が一緒に外出することじゃないの?」
この世界では定義が違うのかもしれないが、ここは俺の世界のルールで押し通らせてもらう。灰色の青春時代に1人虚しく検索した結果をそのまま口から出力する。
「交際中又は互いに恋愛的な展開を期待していて、日時や場所を決めて会うこと。だ。」
(引用)。俺は別に恋愛的な展開なんぞ期待していなかった。つまりデートではなかった。ということだ。
「わざわざ検索した上で一字一句覚えているとか、相当彼女いないのコンプレックスだったんですね。」
「う゜っっ…」
情け容赦のない言葉が突き刺さり、あえなく撃沈する。
「それよりワイスさん、ロノミーの件はどうなったんですか?」
イミテが話題を変える。俺のことを気遣ったのか、本当にどうでもいいのかはさておき助かった。
「あ、そっか。ちゃんと話さなきゃだよね。」
思い出したかのように手をポンと叩くワイス。えぇ?本当に忘れてたのかよ。
「おいおい、俺たちもついて行くべきだったんじゃないか?」
「あはは、ごめんごめん。」
なんとなく分かってはいたが、魔法の研究なんてやってる割に結構抜けてるよなぁ。
「とは言っても、証拠がちゃんと残ってたから、殺したことも問題じゃなかったし、ギルド経由で街から報酬が出ることになっただけだけどね。」
いや、「だけだけどね」はないだろ。金に頓着しなさすぎだろ。俺が言うのもなんだが、冒険者なんてものをやっているからには金を稼ぎたいんじゃないのか?
「報酬はどれくらいになるんですか?」
「えっと確か、3人で30万Gぐらいだったけど、結構そういうとこ気にするんだね。イミテちゃん。」
まあイミテはスラム育ちだし、余計金には敏感なのだろう。
「?普通じゃないですか?」
「そう言われると…確かにそうだね。お金目的で冒険者やってる訳じゃないから、気にしたこと無かったよ。」
そう言えば、ワイスが冒険者をやる目的は聞いた事なかったな。
「なぁ、ワイス。金目的じゃないなら、何を目的に冒険者なんてやってるんだ?」
「それは前話したでしょ?ルークのスキルを解明することだよ。」
至って普段通りの受け答えだったが、なんとなくはぐらかされているように感じた。気になって追及する。
「いや、それは俺と会ってからの話だろ?その前は何を目的にしてたのかが気になったんだけど…」
俺の言葉に目を細めるワイス。あれ?もしかしてマズイこと聞いちゃったか?ワイスは少しだけ目を伏せたあと、
「ごめんね、今はまだ秘密かな。」
少し困ったような笑顔でそう答えた。笑うにも笑いきれていない、引き攣ったような顔だ。なんか知らんけど地雷踏んだっぽいぞ。
「悪い。いらない詮索だったな。」
「ぁあいいのいいの、気にしないで!」
俺とワイスの間に気まずい空気が漂う。隣の席に座っているのに、遠く離れた崖の向こうに居るようにすら感じる。こんなんだから彼女できねぇんだよアホが。
「…」
「…」
チラっとイミテの方に視線で助けを求めてみたが、飯を食うのに夢中でそもそもこちらの惨状に気づいていない。この僅かな時間でおかわり3回目に突入している。
…
あまりにも痛々しい静寂に耐えられず、適当に話を切り出す。
「えぇっとその…俺のスキルのことなんだが。」
「!なになに?何かわかったことがあったの?」
よし、食いついた。やはり好奇心が優先か!
「ああそれなんだが、かなり危険なことがわかったからな。今後はよほどのことがない限り封印したいと思う。」
…あれ?全然事態が好転する話題じゃなくね?
「へ?」
前も見たぞこのパターン。
この後の流れとしては、事情を細かく説明したら渋い顔で納得しては貰えたものの、1日に1回はワイスの前でスキルを使って研究をすることになった。




