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第42話:「支柱」

前回のあらすじ、公園で休憩した俺だったが、慣れない女子との会話で無事死亡。

ベッドに座り込む。休憩をさせてもらって探索を再開できるかと思ったが、しばらく歩いているとすぐ限界になった俺のせいで、結局宿に戻ってきてしまった。

体力よりも精神が疲弊しているのをひしひしと感じる。必死に考えないようにしていたが、目を逸らすのにも限界はあるようだ。


「くっそ…こんなことでメンタルやられてどうすんだよ…」


ロノミーの惨状が、どうしても頭から離れない。瞼を閉じればどころか、何かを考えるだけで脳裏にチラついてくる。

彼はどうしてああなった?彼は黒い何かに体内を破壊されていた。パッと思いつく線は2つ、転移者の特殊スキルだったからコピーによってバグを起こした可能性。そして、単純にスキルが暴走を起こしていた可能性。正直どちらかはまるで分からないし、これら以外の可能性も全く否定できない。

でも、もしあれがスキルの暴走だとするなら、自分だっていつそうなってもおかしくない…


「バカが、そんなこと考えたっていいことはなんもねぇだろ。」


そこまで考えて(かぶり)を振る。スキルの暴走が怖いなら、使わなければいい。幸い剣は持っている。エギンに帰ったら、剣の師匠を探すとしよう。壁に立て掛けてある剣を見遣り、そう決意する。

黒い何かを超えるアドバンテージを剣で生み出せる気はまるでしないが、それでも何もしないよりかはマシなはずだ。大丈夫。


「大丈夫だ。大丈夫…」


そう言い聞かせていないと、今にも震え出しそうだった。

───────────────────────────

どうしようもない不安感に駆られる。今更になって、ここが異世界で、俺が元々暮らしていた場所とは違うということを思い知る。

あんな人喰いサイコ野郎とは言え、俺は人を殺してしまった。でも、2人とも何も言わないどころか、よくやったね、なんて顔を向けてくる。

そりゃ、頭ではわかってる。俺はこの世界どころか、元の世界ですら別に非難を受けるようなことはしていない。しかし、自分が罪と思ったことに罰が付随してこないのは、ひどく恐ろしい。

いつの日か、俺が何か失態を犯したら、容赦なく殺されてしまうんじゃないか。そんな被害妄想以下の思考すら芽生えてしまう。

今はパーティメンバーとして扱われているが、俺はこのパーティで1番弱いだろう。いつ切り捨てられたっておかしくはない。


この世界には家族だって居ない。今になって、母さんが自分にとって大きな支柱であったことを感じる。いつだって自分の味方で居てくれる存在がこの世界にはない。


明日生きているかどうかなんて、元の世界では考えることもなかった。考えなくても死なないからだ。

でも、こっちじゃ違う。確かに明日生きてるか死んでるかなんて考えなくても良いだろうが、それは考えたって仕方がないからだ。


ああ、不安だ。とにかく不安だ。この道の先は、何も保証されてない。

ひたすらに不安を感じて、ただただ恐怖に怯えて、両手で目を塞ぎ頭を抱え込む。


何も考えたくない。いや別に今までの思考だってする必要なんかどこにもなかった。でもしてしまった。そういう(たち)なんだ。仕方ないだろ?


「大丈夫…大丈夫…」


念仏のように唱え続けているが、もはや何が大丈夫なのかは全く分からない。1周回って冷静に俯瞰している自分が居る時点で全然大丈夫では無い。


「あの、全く大丈夫そうには見えないんですけど…」

───────────────────────────

「あっ、ああ、イミテ。もう風呂上がったのか?」


意識が急激に現実に引き戻される。ドアが開く音にすら気づかないとは、なんというか、もう救いようがない気がしてきた。


「あっ、はい。えぇっと、そろそろ晩御飯の時間なので、食堂に行きませんか?」


若干引き気味の対応がとても染みますねぇ!

悲観なんてしたってどうしようもないってことはわかってるんだけど、どうしてかやってしまうんだなあ、これが。

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