第41話:「酷い顔」
前回のあらすじ、映画館で映画を見たが、クオリティ低くて変に疲れたから公園で休憩することになった。
連れてこられた公園はそこそこ広く、街中と同じく人で賑わっていた。砂場や遊具があり子供達が遊んでいたりする他にも、中央には大きな花壇が鎮座しており、色とりどりの花が咲いていた。
騒がしいのは別に嫌いじゃないが、今回は休憩するために来ている。人が集まる中央付近は避けて、隅の方にあるベンチに腰掛けた。思っていたより疲れていたみたいで、体に無駄な力が入っていたことをようやく自覚する。もしかしたら顔色も悪かったのかもしれない。
「済まないなイミテ。せっかくの休みなのにこんなことで時間を使わせて。」
出発前の様子からすれば、外で遊べるのをとても楽しみにしていたように思える。わざわざ俺なんかに構うことも無いのにとも思うが、この優しさこそがイミテの人間性なのだろう。
「もう、すぐそういうこと言いますよね。今はわたしのことは気にせずに、ゆっくりと体を休めてください。仲間がそんな疲れた顔をしていては、楽しむものも楽しめません。」
なるほど。ごもっともだ。
「─それに、出掛けるとは言っても、こういうのんびりとした時間があってもいいと思いますよ。」
そう言ってイミテは俺から視線を外した。たしかに俺は、出掛ければ疲れるものだと考えていたかもしれない。何しろ普段は外出せずに家に篭っていたから、公園で風景を眺めたりなんかしたことは無い。ここはお言葉に甘えて、のんびりとした時間を過ごしてみるとしよう。
何となく子供達が遊んでいる広場を眺める。鉄棒や雲梯、滑り台にジャングルジム。俺の知っているソレとほぼ同じものが並んでいた。
そしてそれをじっくりと見ていて、ふと違和感を覚えた。そりゃあ異世界といえど人間は人間。遊具の形が似通うこともあるだろう。そこは別に問題では無い。しかし、遊具は鉄製だ。一部木製のものがあっても、全部木製という訳では無い。
鉄製の武器なんてものがある以上当然のことだが、要するに製鉄の技術はあるのだ。そしてさっき見てきたように映画なんていう近代的なものすらある。つまり、この世界の文明レベルは俺が元いた世界とそう大して変わらないように思える。
なのに何故、電気を用いたものが無いのか。電気が扱えないのかとも思ったが、雷の魔法がある以上、普通に人の手で操れるようになっていておかしくないはずだ。今まで深く考えてこなかったが、この世界の文明は、魔法が絡んでいるにしても少し歪なように思える…
「今は何を考えているんですか?」
しょうもない考察を頭に巡らせていたが、イミテの声で現実に引き戻される。
「いや、別に大したことじゃない。てか、なんで考えてるって分かったんだ?」
マジで考えても意味の無い事だったので、適当に話題を変える。俺は別に歴史家じゃないんだから、こんなこと考えたってキリがない。
「考えてる時の顔してました。」
そう言うとふふっと小さく笑う。え、考えてる時の顔、そんなにわかりやすい?
「俺、そんなに変な顔してるか?」
「それ程では無いですね。少しの変化なので、短い付き合いじゃ分からないと思いますよ。」
「おいおい、まるで俺たちが長い付き合いみたいに言うなよ。」
まだ会って1週間程しか経ってないのにおかしなことを言うから、思わず笑ってしまう。しかしイミテはハッとしたような顔で
「…確かにそうでしたね。すみません、変なことを言ってしまって。」
と真剣に謝ってくる。え?なんか俺悪いこと言った?
「えっ、いやっ、そのっ…俺の方こそごめん?」
状況が飲み込めていないがとりあえず謝る。コミュ障バリバリだがこんなことで嫌われるよりははるかにマシだろうと思っての行動だったのだが…
少し間を置いて、堪えきれなくなったように笑い混じりでイミテは喋り始める。
「もぅ、なんでそんな顔で謝るんですか?別に怒ってないですよ。」
どうやら俺は、相当酷い顔をしていたらしい。対人がよわよわすぎて死にそう。
「…そんなに笑うことねぇだろ。」
軽く舌打ちをしてそっぽを向く、信じられないほどのクソガキムーヴだが、照れ隠しにはちょうどいいだろう。
「これくらいのことで拗ねてたらダメですよ。だって─」
笑顔のままイミテは続ける。
「これから、長い付き合いになっていくんですから。」
ストレートに向けられた好意。分かっている。これは仲間としての信頼の証みたいな言葉なんだろう、それでも、
「お、おう。よろしくな?」
キョドらざるを得なかった。
そんな言い方したら、男の子は勘違いしちゃうかもしれないんですよ!?わかってるんですか!?
え?お前が童貞過ぎなだけ?…そっすね…




