第40話:「辟易」
前回のあらすじ、1日休暇とのことなので、イミテとカエイをブラつくことにした。
カエイという街は、観光名所と言うだけあって、元の世界のちょっとした駅前くらいのレベルで店が乱立していた。
武器屋とか冒険者ギルドとかそう言った血なまぐさい感じのやつは街の端の方に追いやられ、中心部は服屋やらレストランやらが席巻していた。
「ブラつく、とは言ったものの、ほんとに散歩してるだけだなぁコレ。そろそろ帰ろうか?」
10分ほど探索しただけなのだが、やたらと人が多くて少々辟易していた。元々休日に外に出る質でも無し、この辺りで早々に切り上げてしまおうか。
「えぇ…散歩するだけでも楽しくありませんか?」
ちょっと引いたような感じでイミテが目を向けてくる。そんな目で俺を見るなぁ!
「散歩するだけなら、もうちょい静かなところが良いかな、ここじゃ人が多すぎる。」
そう、元の世界の都会ほどの人混みでは無いのだが、こっちの人達は雰囲気が元の世界の人々と何となく違って違和感がすごい。ここに居るためには、そんな超アウェー感をずっと感じていなければならないのだ。
「そんなに人混みが不安ですか?」
半歩ほど離れた隣を歩いていたイミテが、スっとこちらに近づきながら見上げてくる。その瞳には、まるで子供を見守るかのような温かさが感じられて…
「じゃあ、こうしましょう。わたしはこんな身長なので、もしはぐれたら大変ですからね。」
するりと手を繋がれてしまう。
「お、おう。そう…だな…?」
驚いて言葉が上手く出てこない。突拍子もないイミテの行動にもそうだが、何より1番驚いたのは、手を繋がれたことによって何処か安心している自分自信にだった。
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「なん…だと…」
そんな感じで街の探索を続けていた俺たちだったのだが、立ち並ぶ商業施設の中に、ありえない(と思っていた)物を発見した。
「映画館だと…ッッッ!」
俺の中の異世界像がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。そりゃ、この世界は割と文明が進んでいて機械があるのはわかっていたが、まさか映画という概念があるとは。
「なんなんですかその反応。これくらい都会なら、映画館くらいあると思うんですけど。」
「そう、なんだ…ふーん、なるほどね(?)」
どうやら一般的に普及している概念のようだ。これはテレビとかが発明されるのも時間の問題かもしれないな。
「そんなに珍しいなら何か見ていきますか?今やってるやつだと…これとか、面白そうじゃないですか?」
パンフレットを流し見していたイミテが、1つの作品に興味を示したようだ。どれどれ、イミテの映画の趣味はどんなもんかなっと…え?
「あ、ありえん…」
エイリアン…バカなっ!地球外生命体の概念すら存在しているっ!?
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「すっっっごく面白かったですね!」
「…せやな。」
楽しそうに感想を語るイミテに対して、俺は上手いこと反応を返せない。
「わたし映画を実際に見るのは初めてだったんですけど、こんなに面白いとは思いませんでした!」
「…わかる。」
まぁ、その、なんだ。映画は映画だったんだが、音響は悪いし画質はボロボロだしで中身に集中出来なかった。尺も1時間くらいしかなかったし。
どうやらカラー映画は、この世界ではまだ出来たてホヤホヤの文化みたいだ。出来は悪いのに値段は高かった。
「特に主人公が命を懸けて魔法でエイリアンに隕石を落とすところなんか、最高でした!」
「…そうだな、そういう発想もあるのか、と驚かされたよ。」
あんまり覚えてはいないが、実銃を持ったエイリアンと魔法で戦う人間はとてもシュールに見えた。こっちではそうなるのか…
「なんか疲れてないですか?今日はこの辺りで帰りましょうか?」
間の抜けた返事ばかりをしていると、イミテに心配されてしまった。
「ああ、いや、大丈夫。」
俺の都合で余計に疲れてるだけなんだ…せっかくのイミテの楽しい時間なんだから、こんな理由でそれを削りたくない。
「ルークさんがそう言う時は、大抵ちょっと無理してます。」
そう言って俺の手を引いて歩き出すイミテ。
「いや、ちょっと、ほんとに大丈夫なんだって。」
「ダメです。せめてあの公園で一休みしていきましょう。」
決意を固めたイミテに引っ張られ、公園のベンチにドナドナされていく─
イミテが目をキラキラさせながら映画を見ていてとても可愛かったことをここに追記しておく




