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第2話:「逆撫で」

前回のあらすじ、転移早々死にかけた俺は、スキルに覚醒してなんとかオオカミを退けた。

グシャリ


振り抜いた拳が、あっさりとオオカミの頭蓋を貫いた。

その感触で一気にボルテージが下がる。

冷水を浴びせられたように鎮火した思考が、やけに冷静に状況を整理する。

勢い余って殺してしまったが、殺していいモノだったのだろうか。

先程の戦いでかなり格好がボロボロになってしまった。人と会えた時怪しまれないだろうか。

そもそも、人と会うことなどできるのだろうか。

(かぶり)を振る。そんなことは考えても仕方ないことだ。


「それに、こっちの方も気になるしな。」


力なく横たわるソイツを見やる。

俺の左腕から燃え移った(という表現が正しいのかは分からないが)黒い何かが、オオカミの死骸をじわじわと蝕んでいく。

さながら微生物がゆっくりと死骸を分解していくのを早回しで見ている感じだ。左腕を見たが、こちらの炎は消えていた。

勢いで動いてしまったが、そもそも何が起こった?

しばらく思考していたが思い出した。


「ステータス見りゃええやん。」


名前:《名前を入力してください》

HP:10/10

MP:10/10

スキル:《黒い何か》

詳細


変化しているようだが、黒い何かってなんだよ。ステータスならはっきりしてくれ。

…まぁいいか、詳細を見てみよう。詳細ってとこタッチすればいいのか?


《黒い何か》※

効果:炎のような形状である。

肉体を修復することが出来る。

攻撃の威力を強化する。


※ 《名前を入力してください》が認識した機能のみ開示されています。


うーん、未だかつて無いほどに無意味な表示。ナメてるのかな?便所の落書きの方がまだいくらか情報量ありますケド。

…こんなこと思っててもしょうがないな、ちょっと考えてみるか。


HPが減っていないということは全回復できるということか?それとも状態が元に戻っているのか…そもそもHPが減っている表示を見ない限りは分からんな。

それにMPも減っていない。何も消費されていないのか?

ダメだ。それこそ情報が少なすぎる。


そうやって無駄に思考を重ねていると、不意に声を掛けられた。


「ハハハ、なかなかに楽しんでいるようで結構。でも、ちょっとグダグダだぞ。」


咎めるような声に顔を上げると、全身が白塗りされたみたいに真っ白な少年が立っていた。

グダグダとはなんの話だ?そもそもここにはさっきまでは誰一人居なかったのだ。コイツはどこから来た?

正直、めちゃくちゃ怪しい。その容姿も尋常ではないし。


「オレは所謂、神だ。」


ああ、やっぱりヤバい奴だ。


───────────────────────────


改めてそいつを見るが、某名探偵に出てくる犯人の白くてちっちゃい版にしか見えない。しかも俺の元左腕を踏んづけて立っている。これが神だったら世も末だろ。


「失礼だな、髪もあるわ。神だけにな。」


ナチュラルに心を読んできた上、ものすごくしょうもない。

まあでも、一応神だと仮定して話を進めるか。


「じゃあ、俺をここに()んだのはアンタってことか?」


「ああそうだ。元々来る予定はなかったのだが…あまりにも情けないオマエの為に、わざわざ来てやったのだ。光栄に思えよ?」


いちいち神経を逆撫でする奴だ。こちらも黙っては居られない。


「にしては背とかちっちゃくない?声も高いし近所のガキ感ある。」


「この方が親しみやすいと思ってな?」


こいつ、効いてない…!!


「イラつく要素しかないんだが…まあいい、この事態の説明をしてくれるんだろうな。」


「ああしてやるとも。と言ってもそうだな…」


白くてちっちゃい自称神は喋りだした。


「この世界は、簡単に言えば異世界。だが厳密に言えば、お前が元々住んでいた世界と源流を同じくする世界、所謂(いわゆる)パラレルワールドだ。」


ふむふむ。


「あとは…そうだな…」



「え?それだけ?」


「名前は確か…モーンズ、だったか。」


世界自体の名前?なんだそれ、そんなもんあるんだ。


「いや、世界の名前とかどうでもいいんだが。俺が喚ばれた理由とか、俺のスキルとかの説明は?」


「今はできんようだ。悪いな。」


あっけらかんとソイツは言い放った。

あまりのことにフリーズする。

そんなことは受け入れられない。それじゃ困る。もう命の危険すら味わってるんだぞ。


「おっと、そろそろ時間のようだ。せいぜい頑張ってくれよ?クハハハハ!」


神は笑いながら、末端から透けていく。


「おい、俺はこれからどうすればいいんだよ!」


そう叫ぶが、そいつの消滅は止まらない。

そして、無情にも神は消え去った。


「畜生。約立たずな神様だなあ。」


そう呟くと、不意に体がグラついた。今まで無視してきた疲労が戻ってきたようだ。

まだ目覚めてから少ししか経っていないが、怒涛の展開に体力を削られていたようだ。

段々と薄らいでいく意識を何とか繋ぎ止め、木に寄りかかることが出来た時、完全に眠りに落ちた。

ああ、寝てる間に襲われたりしませんように…

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