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第35話:「汚らわしい」

前回のあらすじ、新戦術によって、無事ロノミーを降参にまで追い込んだのであった。

降参したロノミーの両腕を、他に何も無いので仕方なくイミテの鎖鎌で縛っていく。何か他に拘束用の道具を持ってきておくべきだったな…次の機会があれば、準備の1つくらいして出発するようにしよう。


「ねぇ、1つお願いしたいことがあるんだけど。」


ロノミーが機嫌を伺うように話しかけてくる。この期に及んで何を言ってるんだ。


「あ?アンタ、立場わかってんのか?」


「見逃しちゃくれないかい?僕はまだまだ美味しいものが食べたいんだよねぇ。」


ため息をつく。とても正気とは思えない発言だ。いや、人食ってる時点で正気じゃなかったわ。


「お前は母さんの仇です。逃がす訳がありません。」


イミテから正論が飛んでいく。こういう手合いはまともに説明するだけ無意味だと思うが…


「確かに、イミテ君からすればそうかもしれない。でもルーク君、君は僕を捕まえる理由なんてないじゃないか。ねぇ?」


ほらな、超理論を展開してくるに決まってる。


「イミテは俺の仲間。理由なんて、それだけで十分だろう。」


ロノミーの目を睨みつけながら言う。あーあ、まともに話を聞いて損した。


「そっかァ、じゃあ、交渉は決裂だねぇ?」


残念そうに言うロノミー。そもそも交渉にすらなってな…あ?


「《発火(イグニッション)》」


「ぐぁっ!?」


ロノミーが近くにある燭台の1つに火を付けやがった。集光量を増加させていたせいで、閃光玉でも食らったみたいに視界が白くなる。


「悪いけど、僕はまだ不味い飯は食いたくないんだよねぇ!」


「クソッ!往生際の悪い!」


「きゃっ」


俺が手を引いていたイミテの感触が無くなる。急いで目を閉じ目の強化を解除するが、回復にはしばらく時間が掛かりそうだ。


「おい!イミテをどうする気だ!」


「僕のスキル《悪食》は優秀でねぇ!スキルを奪うだけでなく、体力の回復もできるんだよねぇ!」


は?それってつまり、イミテを食うってことか?


「やめろ!」


「君はユニークスキルは持ってなさそうだけど、若くて、柔らかそうだねぇ。とても美味しそうだ!」


「かはっ」


聞こえるのは、何かが壁に叩きつけられる音、息が吐き出される音、ヤツの不快な舌舐めずり。汚らわしい、そんな手で■■イミテに触れるな。


「おい!ふざけんな!」


聴覚を強化して位置を把握しようとするが、ダメだ。まだ上手く距離感が掴めない。このままじゃ、盗られる。


「じゃあ、いただきます。」































「あ」


咀嚼音。歯が皮膚を裂き、肉をすり潰す音。そしてそれらが嚥下される音。知りたくない現実に、たまらず声が漏れ出る。


「ああ」


食われた部位は首筋辺り。強化された聴覚から、否応なしに知りたくない情報が流れ込んできた。たまらず強化を解除する。必要以上に現実に苦しめられることはなくなったが、それでも事実は変わらない。目を開くと、既に視界は回復していた。


「ああ!素晴らしい!素晴らしいねぇ!今まで色々な人間の肉を食べてきたけど、この子は特に素晴らしいねぇ!何かユニークスキルを持っていたみたいだ!」


歓喜の声を上げながらもう一度齧りつこうとしているロノミー。近づいて、押し退ける。


「なんだよ。そんな邪険に扱うことは…ヒッ!?」


視界に写った手からは、流体状の黒い何かが漏れ出していた。都合がいい。とりあえずはこれで応急処置を行おう。

傷口の辺りに手を当て、漏れ出す黒い何かで覆う。処置をしている段階で気づいたが、どうやら全身から黒い何かが滲み出しているようだ。周りの地面やらが削られている。


「食事を邪魔しないで欲しいんだけどねぇ!」


後ろからロノミーが殴りかかってくる。鬱陶しい。


「ちょっと黙ってろ。」


適当に裏拳で吹き飛ばす。


「えっ─」


胸板に当たってしまった上、力加減を間違えてしまったせいで、腕が関節からへし折れた。関係ない、どうせすぐ治せるんだから。

傷口の修復が完了してしばらくすると、咳き込みながらイミテが目を覚ます。


「けほっけほっ…」


「っ大丈夫か!イミテ!」


しまった。目を覚ましたばかりなのに、大声を出してしまったか。


「はい…何とか…」


そう言って微笑んでくれるイミテ。安心して、ついため息をついてしまう。


「良かった…」


そう呟いた時、頬を伝って流れ落ちたのは、ただの黒い何かだった。

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