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第34話:「虚仮威し」

前回のあらすじ、ロノミーの凶悪なユニークスキルにやられかけたが、黒い何かを応用して、身体を強化する方法を思いついた。これでまともに戦える。

「ルークさん!体は大丈夫なんですか?」


心配そうにイミテが声を掛けてくる。そう言えばイミテにはスキルのことを説明していなかったっけな。


「とりあえず大丈夫だ。詳しくは後で話すから、今は戦闘に集中してくれ。」


そう答えると、イミテは心底安心したような顔で


「…ッはい!」


と元気に応えてくれた。うん。今日も妹分が可愛くて大変よろしい。


「状況がわかってないみたいだねぇ。いくら君が回復したところで、君たちは僕には勝てないと思うんだけどねぇ。」


ロノミーが挑発を飛ばしてくる。確かに、さっきまでの俺が回復したところで大したことは無いだろう。だが、今の俺はさっきまでの俺とは出力が全く違う。懸念事項は明日の筋肉痛と、


「1つ聞いておく必要がある。お前は、イミテの母親も食ったのか?」


これぐらいのものだ。人を食うために殺していたのなら、当然イミテの母親もそのために殺されているはず。ロノミーは少し下を向き考えた後、思い出したかのように呟いた。


「ああ、あの青い髪の獣人か。僕は親子の獣人の肉を要求したのに、親の分しか届かなかったのは、そう言うことだったんだねぇ。」


怒りが湧き上がり糾弾しそうになるが、それを飲み込み、イミテに冷静になるように声を掛けようとした。だが、一足遅かった。俺が声を出そうとしたその時には、もうロノミーに斬りかかっていた。


「ふざけるなっ!お前が!お前なんかのっ!」


正面から、滅茶苦茶に鎌を振り回す。


「お前なんかの腹を満たすためだけに!」


しかし、その攻撃は全て腕に受け止められてしまう。刃が腕に当たる度、金属音と火花が散る。


「そんなことで、母さんを殺したのか!」


渾身の力を込めて刃を振り下ろすが、皮膚を薄く切り裂く程度に留まってしまう。ロノミーは、


「そうだよ。」


と言いつつ、イミテを雑に蹴り飛ばした。慌てて吹っ飛ぶイミテを受け止めに走り、なんとか無事にキャッチする。


「全く、物覚えの悪い子だねぇ。刃物は僕には効かないよ。《キングビートルの甲殻》でねぇ。」


キングビートル?こいつ、カブトムシ生きたまま食ったのかよ…まぁいいや、抱きかかえたイミテに声を掛ける。


「イミテ、あんまり無茶はするな。今度は俺が突っ込むから、バックアップを頼む。」


そう言うと、イミテは目を伏せながら申し訳無さそうに、


「はい…ごめんなさい、取り乱してしまって…」


なんて謝った。額にデコピンをする。


「痛っ。何するんですか急に。」


「こういう時は、任せてくださいって言っておけ。」


言いながら頬をかく。ちょっとクサすぎたかなと後悔したが、


「はい。任せてください!」


気合いが入ったみたいでよかった。

───────────────────────────

「行くぞ。」


脚に力を入れる。ロノミーとの距離は10メートル程。力加減はさっき走った時に何となくわかった。一足ひとあしでロノミーの裏に回る。秒速20メートルくらいは出ただろうか、ロノミーはまだ反応できていなかった。そのまま脇腹に思い切り蹴りを叩き込む。


「グァッ!」


断末魔を上げながら壁に叩きつけられるロノミー、思ったよりも効いたな。腹部は甲殻が薄いのか?検証の為に胸板をぶん殴ってみる。


「さらにもう1発!」


ガン!


「痛ってぇ!」


拳に返って来る感触は壁をぶん殴った時のそれであった。指の骨が折れるが、体内の黒い何かによって修復された。しかし、痛みに怯んだ一瞬の隙を突かれ、壁際から脱出されてしまった。


「どうやら僕は、君を侮っていたみたいだねぇ。でも、これならどうかなぁ!《突風(ガスト)》!」


ロノミーが詠唱を行うと、彼奴を中心に風が吹きすさぶ。風の魔法での攻撃かと思い腕でガードするが、特に何も起こらなかった。しかし、なんだ虚仮威(こけおど)しかとガードを解いて目を開くと、部屋の照明となっていた燭台の火が消えてしまっていた。


「僕は《リンクスの瞳》で見えるけど、君たちはそうじゃないだろうねぇ!これでもう、君たちに勝ち目はない!」


ロノミーは俺の背後に回って襲いかかろうとしてくる。随分と余裕そうなので、悠々と振り返りまっすぐ見据えてやる。するとロノミーは随分と狼狽した様子で、


「なんで見えてるんだよ!」


なんて、今の状況に於いては無意味なことを聞いてくる。答えは簡単、下塗り(アセンション)で目の集光力を増やしたからだ。目にめっちゃ負担がかかっているのを感じるが、それを気にするのは、戦いが終わった後でいい。


「どうでもいいだろ、さっさと降伏しろ。」


俺が睨みつけながらそう言うと、


「わかったよ。しょうがないねぇ。」


案外呆気なく両手を上げて降参した。

ちなみに、今回の戦闘中、イミテはあまりの俺の身体能力の豹変ぶりに、脳がフリーズしていたみたいだ。まぁ、勝てたし可愛いから、ヨシ!

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