第32話:「できること」
前回のあらすじ、謎の地下室に入ると、ロノミーが後ろから現れて戦闘になった。イミテが鎖で拘束したが、腕力で振りほどかれた。
鎖を振りほどいたロノミーは、今までのは準備運動とでも言うようにそう言った。
「ちょっとぐらい怪我させても構いませんか。手加減して勝てる相手じゃなさそうです。」
イミテの言葉に無言で頷く。鎖で縛り上げても拘束にならないのなら、気絶でもさせるしかないだろう。
「おや、手加減してくれていたとは。でも悪いけど、こっちは生きて返す訳には、いかないんだよねぇ!」
ダンッと踏み込んだロノミーがイミテに向かって突っ込んでいく。脚力も異常なほど強いのか、10メートル程あった距離がほぼ一瞬で詰まる。しかし、近づくのが見えた時点で応戦する体制を整えていたイミテが、先に攻撃する。首を狙って放たれた鋭い回し蹴り。
「おっと、危ないじゃないか。」
それをロノミーは片腕で受け止め、そのままお返しとばかりに、イミテの腹にパンチを繰り出す。蹴りを放って体勢が崩れていたイミテは避けることができず、モロにその攻撃を食らって壁まで吹き飛んだ。
「殺す気でかかって来ないと。まぁ、それでも勝てないと思うけどねぇ。」
煽るロノミーを無視してイミテに駆け寄る。
「大丈夫か!?」
俺が声を掛けると、イミテはゆっくりと立ち上がり、
「…大丈夫です。でも、1人じゃ捕まえられそうにないので、バックアップを頼めますか。」
そう言って、俺の方を見つめてくる。何をやってるんだ俺は。大事な仲間が戦っているのに、それをただ見ていただけなんて。
「ああ、できる限りのことはしてみる。」
そう言って、ロノミーの方へ向き直る。自分がいくら弱いからって、味方に全部任せるのは違うはずだ。俺にもできることを探せ。
「作戦会議は終わったかなぁ?」
ロノミーがゆっくりとこちらに歩いてくる。勝ったつもりでいるのだろうか。
「じゃあ、行きますよ。」
イミテの言葉に頷くと、イミテはそのままロノミーに走って行った。俺はイミテから見てロノミーの横に移動する。俺が正面から向かって行っても、スキル無しじゃ太刀打ち出来ないだろう。そしてスキルを使えば、確実に殺してしまう。それでは意味が無い、何か隙を見つけるんだ。
「何度やっても同じことだと思うんだけどねぇ。」
胴体を狙ったイミテの鎌を、ロノミーは少し下がって躱す。イミテはそれを逃がさないように、切りつけながら追い詰めていく。流石にあいつでも、刃物は怖いようだ。
「どうでしょうか、やってみないと分かりませんよ?」
イミテがわざと攻撃の手を弛めて挑発する。その時、一瞬だけ俺の方に視線を向けて合図を送ってくれた。気取られないようにゆっくりと後ろに回りながら剣を引き抜く。
「分からないなら、教えてあげないとねぇ!」
掛かった!イミテは思い切り振り抜かれた右ストレートを躱し、最初と同じように鎖を巻き付ける。それと同時に、ロノミーに近づいていく。
「だからそれは意味ないって──」
「それは、どうだろうなァ!」
ロノミーの真後ろまで辿り着き、思い切り剣を振り下ろす。
カンッ!
「え?」
「は?」
しかし、ロノミーの背中に当たった剣は、金属にぶつかったような音を出して弾かれた。
「温いねぇ、君の方は特に。」
そう言うとロノミーは、俺を左腕で殴り飛ばす。軽く吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
意識が明滅する。 ああ、内臓もぐちゃぐちゃなのだろうか
呼吸もままならない
───




