第30話:「不自然」
前回のあらすじ、『食み出し者』ギルドの副長のロノミーに、ヴァランと話す機会を設けてもらうことになった。
翌日、ロノミーの協力のおかげで、ギルド長のヴァランと話が出来ることになった。ちなみに、ロノミーはこの場には来ていない。何か用事があるらしい。
肝心のヴァランの反応だが…
「悪いが、エギンでの行方不明と俺とになんの関係があるのかさっぱりわからん。なんで俺がやったことになってるんだ?」
当の本人は、まだシラをきるようだ。確かに行方不明の情報だけでは、何らヴァランに結びつくものは無い。全て話して、観念してもらうか。
「本当のことを話しましょう。エギンで起きているのは、行方不明ではなく殺人です。死体を運んでいたゴロツキを尋問したところ。貴方が雇ったという証言が出ました。」
「待て待て、殺人だって?俺がそんなことをする必要は無い。俺にはこのギルドだけで十分だからな。俺が雇ったっていうゴロツキは、俺の顔を見たのか?」
そう言って眉を顰める。確かにそんなことをする必要は無いが、証言が出ている以上、もう確定したことなのだ。まだ食下がるか、往生際が悪いな。
「確かに、ゴロツキは貴方の顔は見ていません。ですが、貴方がわざわざそんな取引に顔を出す方が不自然では?その上、貴方の最近の行動は不審であると、ロノミーさんからも伺いました。何か反論や弁明はありますか?」
「ロノミーが、言ったのか?俺の行動が不審だと。」
む、食いついた。ロノミーがどうかしたのだろうか。
「はい。昨日ロノミーさんに貴方のことを尋ねたところ、外出の頻度や時間の長さが増えていて不審だ、と。」
そう言うと、ヴァランの表情が曇った。
「俺に活性化した魔物の対処と原因の調査をするように依頼したのはあいつだ。外出が多くなるのを不審だと思うのはおかしい。」
待て、今までの前提がほぼ一気に崩れたことになる。ロノミーがヴァランの名前を使ってゴロツキを雇っていた。という線が濃厚になってきてしまった。
「寧ろ俺に依頼を出してから、ロノミーはギルドに滅多に顔を出さなくなった。こりゃ、嵌められたかも知れねぇぞ、アンタら。」
まぁもうロノミーが犯人で間違いないとは思うが、念には念を、ヴァランが嘘をついている可能性もある。
「待ってください。まだあなたに掛けられた疑いが晴れた訳ではありません。この部屋を調べさせてもらっていいですか?」
「まぁ構わねぇが、俺はロノミーを探しに行ってくるぞ。」
この状況で、ヴァランを1人にするのはまずいか?
「じゃあ、見張りをつけさせてください。あなたのためにも。」
「ハハ、疑り深いな全く。好きにしろ。」
この状況だと、ヴァランがやっぱり犯人で、逃げようとしていても、ヴァランが犯人ではなくて、ロノミーに狙われていてもカバーできる人間を見張りに付ける必要がある。
「ワイス、ヴァランの見張りを頼めるか。」
このパーティの最高戦力は、ワイス以外に有り得ない。守るにしても捕まえるにしても、適任だろう。
「え!?私?大丈夫かなぁ。」
そう言うと、ヴァランを追って部屋を出て行った。さて、こっちも頑張りますか。
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ざっと部屋の中にある資料に目を通したが、本当に無実なのかそれらしいものは無かった。あるいはもう処分済みなのかもしれない。
「なんにもありませんね。」
イミテが呟く。犯人の尻尾を掴んだと思ったらブラフだったのだ。その悔しさも一入だろう。
「どうかな。こういう場所には隠し通路なんかがあったりするもんだぜ?」
「あると思いますか?そんなの。」
励まそうと思って言った言葉だったが、逆効果だったようだ。ジト目で睨まれる。軽率な発言は慎もうって前考えたじゃんか…
「いや、待てよ…?」
この建物、1階と比べてやけに2階が小さくないか?珍味出品エリアは小さくて、この部屋もあまり広くない。しかし、外から見た1階と2階の大きさは同じだった。そしてこの部屋は外壁に面している…
「隠し通路、あるかもしれない。」
とりあえずは、建物の外側の本棚を動かすか。
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「…ありましたね。隠し通路。」
本棚をずらしていくと、あっさりと人一人通れるくらいの通路が見つかった。その通路は建物の裏の方に続いていた。
「…とにかく入ってみようぜ。」
暗い通路を進んで行くと。建物の裏の壁まで来た辺りで曲がり、階段になっていた。
「どうする?一旦ここで引き返して、ワイスとヴァランを待つ選択肢もあるが。」
この階段からは何となく嫌な気配がする。まぁ、ヴァランが犯人なら、今調べた方がいいんだが…
「いえ、行きましょう。わたしは一刻も早く犯人を捕まえたいんです。」
イミテの決意は硬いようだ。何かあったら、俺が守ればいい。
「わかった。先に進もう。」
階段を降りていく。
隠し通路がここにあるならヴァランがやはり犯人なんだろうか。いや、隠し通路があるとわかっていたのなら、なんで調査させた?ダメだ、わからん。この先にその答えがあるわけだし、考える必要は無いか。




