第27話:「危険分子」
前回のあらすじ、イミテを攫おうとした犯人が判明した。
「珍味を探し求める組合?」
余りにも予想外過ぎて、そっくりそのまま口に出してしまう。てっきり、極悪非道の殺人集団みたいな奴らだと思っていた。
「あぁ、『食み出し者』は、この街を正門から出て森を抜けたところにある、カエイという街に本拠地がある組合だ。」
森を抜けたところにある街と言えば、俺が最初に向かっていた方角の街か。
「20年程前から活動していて、この国の各地に支部があり、飲食店の展開などもしている。」
つまり、大手チェーン店、みたいな?でもそうなると
「イミテを攫おうとした理由が分からない。そもそも、何故そんな立場のある人間が人攫いなんてリスキーなことを…」
その上、実際にはイミテは、攫われたのではなく、殺されていた。つまり、生きている必要はなかった。
「これ以上被害者を出さないためにも、俺はこの街を警護する必要がある。だから、お前達にヴァランの調査、必要であれば捕縛を頼みたい。」
なるほど、こっちから打って出るということか。
「俺はそれで構わない。2人はどう…って聞くまでもないか。」
「うん。特に他に予定もないしね。」
と、ドライに言うワイスと
「はい!絶対に行かせてください!」
母親の仇討ちに燃えるイミテ。
乗りかかった船だ。俺もイミテを傷つけたヴァランとかいう野郎は気に入らない。どんな理由であっても、必ずぶん殴ってやる。
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翌日から俺たちは、ブラストが手配してくれた馬車を使って、標的が居るというカエイに出発した。御者に聞いたところ、馬車なら1日で着くようだ。
道中暇なので、ワイスに情報を聞いておくか。
「なぁ、ワイス。カエイってどういう街なんだ?」
「ふふーん、よくぞ聞いてくれました。カエイの特徴は、ズバリお花!街中そこかしこに色とりどりのお花が咲きまくってるんだよね!『食み出し者』のご飯を食べながら、花を見て楽しむ。それがカエイの楽しみ方で、この国でも有数の観光スポットになってるんだよ。」
咲きまくるて、もうちょい上品に言いなさいよ。
「『食み出し者』も、元々はリーダーが子供のころに1度食べた花を料理したものが忘れられなくて立ち上げた組合だそうだよ。今は、珍味じゃなくても取り扱ってるから、リーダーの思っていたものとは、違う形になっているのかもしれないね。」
ふーん。大衆向けにシフトして行ったのかぁ。
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森を抜け、遠くに街が見えてきた頃、日が暮れた。俺たちは馬車を降りて、草原で野宿だ。
寝支度を終え、床に就こうとした時、
「敵襲だあぁぁぁぁ!」
御者のおっさんが叫ぶ声が聞こえた。なに、ここ街道じゃないのかよ。急いでテントから這い出し、馬車の元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「はい…すみません。奴はまだ近くにいます…気をつけてください…」
御者のおっさんは、刺されてはいたが命に別状は無さそうだ。もう少しだけ我慢してもらおう。
「出てこい!何が目的だ!」
闇に向かって挑発する。これで出てきてくれれば最高なんだが…
「お前だよ。」
「ッ…!!」
耳元で囁かれ振り向くが、誰も居ない。クソッ、暗くてよく見えない…!視線をあちこちに向けるが、敵らしき影は見当たらない。
「こっちだ、よっ!と。」
「ガ、ハッッッ」
鳩尾に勢いよく膝蹴りを叩き込まれ、肺の空気が無理やり吐き出される。立っていられなくなり、その場にどさりと崩れ落ちる。
「お前、本当にただの一般人なんだな?」
頭を掴んで持ち上げられる。声はボイスチェンジャーでも掛かっているかのように不確かで、男か女かも分からない。フードと暗がりのせいで、顔もよく見えないが、うっすらと見えるその口元には、下卑た笑みが浮かんでいた。
「ハッ、だったらなんだって言うんだ?」
精一杯の虚勢を張る。これで情報を少しでも拾えればいいが…
「別に?危険分子かと思ってたけど、何ともなさそうだなこりゃ。無駄足だったかねぇ?」
ヤツはそう言うと、俺を投げ捨ててどこかへ消えた。なんだったんだ一体…?
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その後、やっと起きてきたワイスに、御者に治療魔法を施して貰った。翌日には無事カエイに到着することができたが、御者には本格的に治療を受けてもらうことになり、帰りは歩きになった。トホホ、徒歩だけに。
心の中で言ってても、自分は聞いてるんだよね…




