第18話:「狂気」
前回のあらすじ、初めての死体にパニックに陥った俺は、自分のスキルで生き返らせようとした。
裂けた皮膚が繋ぎ合わされる。ちぎれた筋繊維は再生され、砕けた骨は修復され、途切れた血管が繋がる。パーツが身体の一部として再構成される。足りない部分は、黒い何かがその都度象り、埋めていく。少女の身体が”直”されていく過程が、術者の俺にはダイレクトに伝わってくる。
「あ…あぁ…ぁ」
あまりにおぞましい情報が、俺の頭の中を占拠する。再生の様子が、浮かび上がっては消えていく。ドクン、ドクン、と脈を打つ心臓は、その実何も運んでいない。生きていた頃をなぞり、ただ動いているだけ。
「可哀想だと思っただけなんだ…許してくれ。」
聞かれた訳でもないのに、自供しだす。恐怖に負け、誰にでもなく謝罪する。流れ込む壊れた身体の情報は、まるで感情のままに行動した俺を糾弾しているかのようで。
「ごめんなさい…!ごめんなさい…!」
叱られた子供のように、泣きじゃくりながら謝り続ける。それでも、少女の修復は止まらなくて。不気味に蠢く少女の身体が、怖くて仕方なくて。
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そして、修復が終わった。少女の身体は辛うじて原型を取り戻したが、その肌は未だ青白く、とても生きているようには見えない。
「終わった…のか?」
ブラストがつぶやく。傍から見れば、俺が死に化粧をしたように見えたのかも知れない。しかし実際は、ただ狂気に呑まれて生き返らせようとしただけだ。人が死んでいることを受け入れられなかった俺の弱さゆえの行動だ。
「おいルーク。何をやった?」
ブラストは怪訝な顔で俺を見るだけだ。少女の状態がまだわかっていないのだろう。俺が急に泣いて謝りだしたから、呆気に取られていたんだ。
「分からない…何をやって何が起きたのか、自分でも理解できない。でも、」
あぁ、俺はきっと、裁かれるべきなんだ。
「彼女は生き返ってしまった。」
彼女の手が、ピクリと動く。あれ程までに見開かれていた瞼が閉じられ、しばらくして開き、瞬きを繰り返す。顔を起き上がらせてこちらを見ると、起き上がった。そして、ゆっくりとこちらに歩み寄り、
「えっと、すみません。ここは何処でしょうか。」
まるで生きているかのような声を出す。
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違う、彼女は生き返ったんだ。生き返らせてしまったんだ。
「違っ…」
「ここは商店街近くの路地裏だ。君が人攫いに遇いそうになっていたから、こいつと一緒に助けたところだ。」
俺が余計なことを口走りそうになる前に、ブラストが止めてくれた。確かに、ここで死んでたとかどうこう言っても混乱させるだけだ。少し冷静になる必要があると思い、口を噤んだ。
「そうだったんですか?わたし、刺されて死んじゃったと思ったんですけど。」
「あぁ、間一髪だったんだが、こいつがお前を治したんだよ。」
ブラストがそう言うと、少女は俺の方に向き直る。濃い藍色の長い髪がフワッと舞い上がった。
「そうだったんですね!助けていただき、ありがとうございました。えーっと…」
この流れは、名前を聞かれているのか?
「ルークだ。」
短く答える。これ以上喋ると、余計なことまで漏れ出してしまいそうだ。
「改めて、ありがとうございました。ルークさん!」
さっきよりもずっと綺麗な赤い瞳が、俺を見つめていた。
ルークの異世界定義メモ
獣人は、まあケモ耳とか尻尾が生えている奴らのことだが、この世界では特に迫害されてたりとかはしないようだ。ただ、獣が獣人に進化したのか、獣と人が交わって獣人になったのか、興味はあるな。




