プロローグ:「ええ....(困惑)」
「1つ注意事項だが、この小説は基本的に一人称視点だ。
これから俺の進む道は、俺の五感と精神を介してあんたに伝えられることになる。
例えば俺が見てないものは当然描写されないし、見ていてもキチンと認識できるかは定かじゃない。
それでも構わないなら……いいぜ。俺と一緒に来てくれ。」
「──それでは、ホームルームを終わります。明日からもそれぞれ、進学や就職に向けて、日々努力し続けましょう。」
チャイムが鳴り、日直が号令を掛ける。高校3年生の9月、なんてことは無い1日に、俺は静かに帰り支度をしながら絶望していた。明日は金曜日だ。
学生に嫌いな曜日を聞くと大体は月曜日とか答えると思うが、俺は木曜日だ。あとちょっとと言われるとキツくなるのだ。あんまり共感して貰えないけど。
明日も1日学校かぁ…とか考えながら帰り道をのそのそ歩いてると、カバンのスマホから通知音が鳴った。
危ねぇ、通知切り忘れてた。授業中じゃなくて良かったーなどと考えながらスマホを開くと、だいぶ前にちょっと遊んだだけのやつからメッセージが来ていた。
中身はよく分からんソシャゲの招待メッセージ、多分送ったら特典とか貰えるんだろう。「何だ?」と返事を送ると、既読が付いたからか招待メッセージ連投してきやがった。
「うわモラル無さすぎだろ、こんなやつだったのかよ。」
独り言をつぶやくとブロックした。ただでさえ鬱なのにさらに嫌な気分にさせられた。
「はぁ、霞を喰って生きてるみたいだ。」
薄っぺらい友情のありがちな終わり。
思わずイタい感じで黄昏てしまう程度には、味のしない生活に嫌気がさしていた。
家に着いた。3DKの小さなアパートだ。家族3,4人で住むのなら狭いだろうが、俺の家族は母親だけ、所謂母子家庭なので特に不便は無い。
…無いが、この家を見る度少し気分が下がる。
別に母に恨みがある訳じゃない。むしろ女手一つで俺をここまで育ててくれたことは感謝している。母子家庭のため収入が少なく、大学に行けないことを思い出すからだ。
「あーあ。なんてクソったれな現実なんだろうか。」
気づけば口から漏れ出ていた。きっとろくな死に方はしないだろう。
鍵を開けて家の中へ、そのまま風呂に入ると、さっさとパジャマに着替えて自分の部屋にこもった。
「さてと、さっさと寝て、2時くらいに起きてゲームしてから学校行こう。」
現実を見ないためにバカみたいな計画を建て、ベッドに入ろうとした時だった。突然、体の力が抜けた。ついに俺のもやしボディは限界を迎えたか、いやそんなことあるか?
そんなことを考えていると、当然頭をベッドに打ち付けた。
普通に考えて大したことは無いはずだが、何故だか意識…が…
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目を覚ますとそこは、見たことも無い森の中。森に入るのは初めてなのでよく分からないが、なんか土っぽい匂いがするし多分幻覚とかじゃないだろう。
5分くらいウロウロして近所の公園の森とかじゃないかと言う希望的観測を打ち砕いたあと、新たな希望的観測に縋った。
「これ、異世界転生じゃね?」
そう、異世界転生。あるいは異世界転移、最近アニメやラノベで人気なジャンルだ。現実的に考えてありえない?そもそも現状が現実的じゃない。
──その結論はおかしくないか?..いや、それも想定すべきパターンの一つではある。
かろうじて現実的な線は誘拐だが、誘拐ならこんなところに放置されるはずも無いし、そもそも俺自体に誘拐するだけの価値がない。
ならば、異世界である可能性だって捨てきれないだろう?てか異世界転移ならクラス転移じゃない以上主人公ポジ確定だし、考慮し得だ。
…よし、人の目がある訳でも無し、虚空に向かって言い放つ。
「ここが異世界なら、ステータスでも出してみろや!」
まあ、異世界ものでもステータスがあったり無かったりするから、ここでもしそれが出なくても異世界の可能性はある。しかし現状を踏まえると、1個でも確定情報がないと異世界探索には踏み切りたくない。
だから神様、もし居るのなら、俺の背中を押してくれ。
スッ…と微かに空気が動き、願いは叶った。しかし目の前に表示されたウィンドウには、
名前:《名前を入力してください》
HP:10/10
MP:10/10
スキル:《不明》
「ええ....(困惑)」
不確定情報が増えちまったんだが…