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第16話:「おつかい」

前回のあらすじ、森に魔法の練習をしに行ったが、魔法が撃てなかった挙句、負傷したせいで1日絶対安静を言い渡された。

「次は卵3つと鶏肉…」


買い物袋を片手にメモを見ては、さながら初めてのおつかい、といった感じで周りを見渡す俺。商店街は、歩き慣れていないこともあってさながら迷路のように思えた。


「あったあった。店主さん、これください。」


「はいよ。」


なぜ買い物なんぞやっているかと言うと、1日安静を言いつけられたが「傷も治ったし、暇だから何か手伝えることはないか。」とワイスに聞いてしまったからだった。


「これで全部かな。」


袋の中身を確かめ、メモにあるものが揃っていることを確認する。さてぼちぼち帰ろうか、なんて思っていると、意外な奴を発見した。


「ようブラスト、そんな怖い顔してなにやってんの?」


妙に真剣な目つきで辺りを見渡してたから、思わず声を掛けてしまった。コミュ障が炸裂して、やけにフランクに話しかけてしまったが、まぁ大丈夫か。


「む、ルークか、済まない、そんな顔をしていたか?」


「人でも殺せそうな眼光だったぜ。」


ちょっとふざけて答えると、ブラストの奴は本気にしたみたいで、


「なるほど、以後気をつけよう。」


とか言う。冗談の通じないやつだな。しかし、真面目なやつなら、その行動にも真面目な理由があるはずだ。


「で、結局何やってたの?」


「あぁ、そうだったな。お前にもコレを渡しておこう。特別製の防犯ブザーだ。こいつは1回限りだが、使えば俺に場所が伝わり、10数秒程の会話もできるスグレモノだ。」


閉じたガラケーぐらいのデカさの端末を手渡される。


「どうしてこんなものを、警察でもやってんのか?」


「ケイサツが何かはわからんが、俺はこの街の衛兵の真似事をやらせて貰っている。最近人攫いが多くてな、モヒカン達とこの街の巡回と、そいつの配布をしているのだ。」


ふーん、要するにボランティアで警察やってんの?スゲーいい子やん。モヒカンもやってんのは草しか生えないが。


「ありがとな、せいぜい気をつけて帰るとするよ。」


「そうしてくれ、お前に消えられると俺も困る。」


後ろ手に手を振って商店街を後にした。

───────────────────────────

「しかし、人攫いが多い、か。」


人を攫ってどうするのだろう、中世風な世界だし、やっぱり奴隷とかだろうか。おお、くわばらくわばら。


「案外こういう路地裏とかに居たりして、な。」


と、何となくで路地裏を覗き込むと、


「あっちゃー、フラグだったか。」


ちょうど子供ぐらいの大きさの黒い袋を担いだ2人組の男が歩いていくのを見つけてしまった。巫山戯ては見たが、そんなことでは現実はどうにもならない、知っている。

どうするか、見て見ぬふりをして、真っ直ぐ家に帰れば、何事もなく明日を迎えることが出来るだろう。もしかしたら、全然人攫いじゃない可能性も…


「いや、俺は変わるって決めたんだ。」


下を向きそうになる心に喝を入れ、防犯ブザーを起動する。


「こちらブラスト。今、どういう状況だ!」


切迫した声でブラストが応答する。


「ルークだ。今、人攫いらしき男2人を見つけた。路地裏を移動している。追いかけるから、後から追いついてくれ。」


「わかった、すぐ向かう。くれぐれも無茶はするなよ。」


それだけ言うと、ブザーをつけっぱなしにしたままポケットに突っ込み、男の後を追いかける。

───────────────────────────

やはり荷物が重いのか、2人組にはすぐ追いついた。まだ気づかれていないようだ。一応声は掛けておくか。


「あのー、すいませーん。もしかして、人攫いの人達ですかー?」


思いっきり煽るように言う。これで違うなら、俺がちょっと大恥かくだけだ。さて、男達の反応は…


「クソっ、見つかった。どうする?」


「構わねぇ、コイツも殺しちまえばいいだけだ。」


当たりだったみたいだな。ナイフを取り出した男達は、見たからには生かして返さねぇ、というオーラを漂わせている。


「へぇ?お兄さん達僕とやる気?」


人生で言ってみたいセリフベスト10を消化しながら、剣を構える。ブラストが来るまで耐えればいいだけだから、気は楽だ。

───────────────────────────

とは言っても、リーチの差があっても俺はただのもやし、ヤンキー2人と普通に戦って勝つなど到底不可能だ。慎重に相手の出方を伺う。


「死ねやクソガキィイイイイ!」


重い荷物を持たされてイラついていたのだろうか。やけに物騒なセリフと共に、ナイフを腰だめに構えて突進してくる人攫いAをの顎を、


「さすがに無理だ。」


無慈悲に右手で持った剣を横向きにして峰の部分で打ち付ける。


「グッ、ガハッ」


もやしでも武器を使えばダメージくらい出せるのだ。そのまま左手を黒塗り(エンチャント)し、怯んでいる隙にナイフの刃を握り潰す。


「そのまま寝てろ。」


思いっきりキンタマに蹴りを入れ、男Aを無力化すると男Bは、


「バカが、なんでこんなガキにやられやがる。仕事が増えるじゃねぇか。」


案外まだやる気だった。


「ふーん、お前もコイツみたいにキンタマ潰されたいのか?」


というかタイマンで勝てるかどうか怪しいので逃げるなら逃げてください。


「ハッ、そいつはウチのメンバーの中でも1番のしたっぱだ。そいつに勝ったくらいでいい気になってんじゃねぇぞ。」


四天王の中で最弱ポジだったか、道理で弱いわけだ。しかしまあ、そろそろ時間切れみたいだな。


「動くな!お前達、そこで何をやっている!」


本物の正義の主人公ヒーローがお出ましだ。

───────────────────────────

その後、男Bはブラストにボコボコにされた後「ヒャッハー、汚物は消毒だァーーー!」と叫ぶモヒカン達によって、男A共々連行されて行った。残るは黒い袋のみ、だったのだが…


「ブラスト、これは一体どういうことだ。起きていたのは、人攫いじゃなかったのか!?」


「済まない、落ち着いてくれルーク。俺は住民が失踪している、としか聞いていなかったんだ。」


「クソっ!最悪だ…」


袋の中身は、少女の死体だった。

防犯ブザー

ブラストがワイスに頼んで作ってもらった特注品で、遠距離通信の魔動機となっているが、端末への負荷が強く、1度しか通信機能は使えない。また、消費魔力が多いため魔石が組み込まれており、使用者の魔力を使うことがないため、今回ルークが使うことが出来た。

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