第11話:「意外な展開」
前回のあらすじ、他人と関わることを恐れていた俺だったが、ワイスの言葉で目を覚まし、変わることを決意した。
「おいおいおい、そこの嬢ちゃんには、俺たちが先に声を掛けてたんだぜ?」
俺が決意を新たにしていると、横からモヒカン頭のチンピラに絡まれた。ため息をつきながら応じる。せっかく人がやる気出してんだから、邪魔しないでくれよほんと。
「何の用だ?」
「あ?聞こえなかったのか?そんなにパーティ組みたくないなら、組むなって言ってんだよ!」
「そっちこそ聞いてんじゃなかったのか?俺はパーティを組むと言っただろう。」
さっきの話でヒートアップしたテンションのまま、ムキになって答える。
「あン?なんだテメェ?ぶっ殺されてぇのか?」
手斧を構えながらモヒカンが言う。クソ、ついに武器を出してきやがったか、こいつの仲間と思しき後ろのモヒカン2人も止める様子がない。ここで戦うしかないのか?と剣を構えようとすると、
「お前たち、その辺にしておけ。」
ギルドの入口の方から声が掛かる。見ると、スマートな鎧に身を包んだ黒髪黒目のイケメンが立っていた。
「でもリーダー、こいつが…」
「いいから、」
モヒカンの言葉を遮って、リーダー(?)が言う。
「この話は、俺が決着をつける。」
「俺はブラスト。お前がワイスとパーティを組もうと言う男だな?」
「あ、あぁ、そうだが?」
何となく展開が読めたが、一応聞き返す。
「お前に、決闘を申し込む。」
ですよね。
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俺たちとモヒカン三人衆、ブラストは、街の広場に来ていた。
この国は、命に関わらないなら私闘をしてもいいらしい、自由でいい国だなぁー(白目)
ところで、ブラストが俺とワイスがパーティを組むことを知っていたのは何故だろうか。とワイスに聞いてみたところ
「ブラストはご近所さんなんだ。だから世間話みたいな感じで、昨日ルークのことを話したの。そしたらね、ルークに会いたい、って言うから、明日ギルドに来てねーって約束しちゃったの。まさかこんなことになるなんて…」
俺は随分和気あいあいとした感じで、狙いをつけられたみたいだ。モヒカンに木剣を手渡される。
「ルーク、別に闘わなくてもいいんだよ?」
ワイスが心配そうに俺を見つめて言う。ブラストはランクC冒険者で、俺よりも遥かに強い。だからやめておいた方が良い、と。
「いや、俺は決闘を受けるよ。」
どの道この街にいる限りは、コイツとの接触は避けられないだろう。会う度絡まれる方が面倒だ。
ブラストがルール説明を始める。
「お互いに武器はこの木剣1本で、どんな手段でも相手の体に一撃入れれば勝利、それでいいな?」
「問題ない。」
ワイスの説明によれば、ブラストは《剣術》のスキルを持っている。このルールだと俺は不利だろう。でも、戦場ではルールなんかある訳ないし、この男も多分、そういうことを言いたいんだろう。
「お前がこの決闘に負けたら、ワイスとのパーティは諦めてもらう。お前が勝てば、もう俺は文句は言わん。」
「あぁ、それで構わない。」
「では…始めるぞ。」
モヒカンの1人が、小石を上に放り投げた。
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小石が地面に落ちると同時に、俺は走り出す。家から全く出ていなかった俺は、とにかく体力が無い。短期決戦にする必要がある。
対してブラストは、1歩も動かず剣すら構えていない。恐らくワイスに俺の能力は聞いているだろうから、その余裕故か。
「ハァ゛ッ!」
ブラストの前まで走った俺は、そのまま剣を上段に構えて振り下ろす。こんなんじゃ当たらないだろうが、全力で打てばガードさせるくらいはできるだろう。と踏んでの行動だったが、
「軽いな。」
ブラストは右手に持った剣を、蚊でも払うように軽く振る。その軌道と俺の剣の軌道がかち合い、それだけで俺は5メートル程後ろに弾き飛ばされた。かろうじて剣は握ったままでいられたが、手には強い痺れが残っている。
「なんだ、もう終わりか?ではこちらから行くぞ。」
ブラストが歩いて近づいてくる。俺が体へのダメージで動けずにいると、俺の前まで来たブラストが、そのままゆっくり剣を振り上げた。
「ガアアァァア゛ア゛ア゛ッ!」
頭に向かって振り下ろされるそれを、なんとか剣で受け止め、痛みで変な叫び声を上げながら後ろに飛び退く。とんでもない膂力だ、まともに打ち合ったらまずい。そう思いながらも、襲いかかる刃を受け止めることしか出来ない。
「なぜだ?なぜ本気を出さない。」
軽く、それでも俺にとっては致命傷となる一撃を振るいながら、ブラストは問う。
「ワイスはこの1年間、誰ともパーティを組もうとしなかった。それがなぜ今更になって、しかも、お前のような新米を?」
俺をじわじわと追い詰めながら、問い続ける。コイツ答えさせる気ないだろ。パーティを組もうとしなかったとか初耳だし。
「そもそもお前は、なぜワイスとパーティを組みたいんだ!そんなこともはっきりしていない奴に、ワイスは任せられない。」
多分この決闘で初めて本気で剣を振ったのだろう。その攻撃を受けた俺の木剣の刃は、粉々に砕け散った。
ヤツの言葉を反芻する。なぜ、ワイスとパーティを組みたいのか、そんなもの、特に深い理由はない。
「パーティを組みたい理由?簡単な事だ。」
「なんだ?言ってみろ。」
大きく息を吸う。たっぷりと勿体ぶって、なんかある感じを醸し出す。ついでに痺れが取れるのも待つ。
「俺がそうしたいからだよ!」
叫ぶと同時に走り出し、右手に残った木剣の柄を投げ捨てる。
「黒塗りォッ!」
右手に黒い何かを纏わせ、大きく振りかぶってヤツの顔面へ。
「そんなものに当たるかッ!」
ヤツは最小限の動きで俺の右ストレートを躱す。そのまま俺にトドメを刺そうと、剣を構えた。
それはそうだろう。俺の一般人以下の体術で、実戦経験豊富な人間に勝てるわけが無い。今まで俺が攻撃を受けられていたのは、俺の本気を引き出そうと手加減していたからだろう。だが、それは驕りに等しいぞ。
「塗り替え。」
黒い何かを足に移動させる。俺の身体能力じゃ足りないなら、バフを盛ればいい、簡単な事だ。
増強された脚力で、無理矢理ヤツの後ろに回る。塗り替えで再び黒い何かを右手へ移動させ、振りかぶる。
「させるかッ!」
ヤツは流石としか言いようがない反射神経で振り向き、俺の右拳の軌道に木剣を乗せる。掛かった、元々この拳で殴るつもりは無い。そのまま右手で木剣を掴み、それを軸に思い切り体を回して、左手でヤツのいけ好かない顔面をぶん殴る。
「これで満足か?」
問いながら、俺の勝利だと認識した途端、体から力が抜けて仰向けに倒れた。無理をしすぎたか。
「あぁ、満足だ。」
ブラストが俺に手を差し伸べた。これは意外な展開だな。
塗り替え
即興で考えたものなので、特に捻りのないネーミング。黒塗りされた部位から別の部位へ黒い何かを瞬時に移動させる。




