第9話:「初陣」
前回のあらすじ、ワイスとパーティを組むことになった俺は、帰り道に安売りで剣を買って、宿で眠りについた。
目を覚ます。久しぶりにビルの屋上から飛び降りる夢を見てしまった、汗が気持ち悪い。と言うか今日何曜日だっけ、学校行かないと。
まで考えて思い出す、ここ異世界だったわ。時計を見ると、時間は8時手前くらいだった。ここからギルドまでは徒歩20分程だし、朝飯食ってから行っても十分間に合うだろう。
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ギルドに向かう途中、広場に人だかりができていた。その中心では、3人程の修道服を着た連中が演説をしていた。演説を聞く限り、そいつらは教会の神父とか神官のようだ。この世界の人間なら誰でも知っている、とワイスに説明された神話を、大仰に語っている。
なんでも、この世界は善の神と悪の神によって創られていて、善の神が人間種を、悪の神が魔物種を創ったそうな。2柱の神は敵対していて、それぞれ自分の創った種族達に争わせて競っている。らしい。ちなみに人間種、と言ったのは、エルフやドワーフ、獣人なども居るから。街でもちらほら獣耳を生やした人が居た。いつかモフりたい。
しかし、教会の語りはそれでは終わらなかった。
「──我ら人間種と魔物種の力は拮抗していました。だから100年前、2柱の神はそれぞれ勇者と魔王を選定し、一騎討ちで決着をつけることにしたのです。」
「戦いは激しく、三日三晩続きました。ですが最後に立っていたのは、我らが勇者だったのです!」
「しかし、往生際の悪い悪神は、魔物達をこの世界にのさばらせたまま、勝負を終えました。そして近頃、魔物達は活発になり始めています。これは神からの試練なのです!神は我々に、この世界で生き残ることを期待されています。神の教えを胸に、我ら教会とともに、魔物達に立ち向かいましょう!」
こんな演説を聞いているのは信心深い連中ばかりなのか、周りから歓声が沸き立つ。しかしそんな中で、隣からため息が聞こえた。驚いてそちらを向くが、ため息の主は見つからなかった。
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ギルドに入ると、今度は時間に間に合ったようで、こちらを見つけたワイスが駆け寄ってくる。
「おはよールーク!今日は記念すべき私達のパーティの初陣だね!どの依頼にする?」
「…お前はアホか。」
軽く頭にチョップを入れる。やたらハイテンションなワイスが持ってきた依頼書は、全てランクCのものだった。
「俺はまだランクEだ。パーティを組んだ場合は、依頼のランクはパーティの平均のものまでなんじゃなかったのか?」
この場合、ワイスはランクC、俺はランクEなので、依頼はランクDのものまでとなる。と教えてきたのはコイツである。
「そうでした…でも叩くことないじゃん!」
「悪い悪い。」
そんなこんなで受けたランクDの依頼だが、ゴブリン5匹の討伐だ。これはギルドから出ている依頼で、とにかく魔物の数を減らしたいから、森の魔物を倒してこい、という依頼だそうな。報酬は12000G、パーティ人数で等分するタイプではなく、一人一人に与えられるタイプらしい。しかし、ゴブリン5匹か、買った剣があるとはいえ、5匹も倒せるかなぁ。
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などと考えていた時期が、俺にもありました。
「《炎の矢・拡散》!」
森に入るなり、ワイスが《探知》の魔法で敵の集団を感知して、今しがた撃ち込まれた炎の矢で10匹くらい爆殺したからである。
《探知》ってなんだよ。とワイスに聞くと、
「自分を中心に半径100メートルに、魔物に触れると返ってくる魔力を円状に放って探知する魔法。無属性の高等魔法なんだよ!エッヘン。」
だそうな、エコロケみたいなもんか。
「じゃあ、帰ろっか!」
こんな感じで、俺達のパーティの初陣はあっさりと終わった。
ワイスの魔法ひとことメモ
《炎の矢・拡散》は、着弾した後爆発する便利な魔法だけど、範囲は固定で半径5メートルだから、味方に当たったりしないように注意が必要だね!




