第6話:危険生物
そして、あれから俺はどんどん魔法の扱いが上手くなっていた。
今では水魔法だけではなく、氷魔法や風魔法、木魔法まで使える。今はもう暴発する事もなくなり、その魔法を使っても安全になったのだ。
そして、一見何の関連性も無い魔法だが、この4つの魔法が合わされば外に出れるんじゃないかと思っている。
木魔法で木を生み出し、氷魔法で接合していく。それでボートの完成だ。
後は水魔法と風魔法を駆使して、ボートを動かせば、無事に島の外に出れるかも知れない。
あんなに遠くに思えた島の脱出という目標も、今では相当近くなって来た。
「さてと、今日もやって来るか!」
ゴリラ達から隠れて離れ、まだ未完成のボートの元まで向かう。
流石にボートの作成をゴリラ達に手伝ってもらう訳にはいかない。相談したら邪魔されるかも知れないし……もし手伝ってくれたとしても良いことではない。
惚れた相手が逃げ出すというのに、それの支援をさせるなんて、ゴリラ達からすればきついだろう。正直、そんな事は絶対にさせたくはなかった。
そう思って、進んでいた時、嫌な予感が走った。
本能がこの場に居るなと告げているかの様な感覚が奔り、俺は走り去ろうとした。
そして、その瞬間に、おかしな生物が現れた。
まるで紫色の木の根を無数に繋ぎ合わせたような、歪な形をした謎の生物。
そいつの通った道は全て黒ずんでいる。あの青く、綺麗だった木すら黒くなり、しわしわに縮んでしまっている。
(何だあいつは……。)
正直、この世界でゴリラに初めて会った時よりも恐ろしかった。
前世の経験からの恐怖、などという生易しい物ではない。
人間は絶対に挑んではいけない、体の芯からそんな恐怖を染み込まされているかのようだった。
俺は足が竦んで逃げ出す事も出来ず、ただ木の後ろに隠れる事しか出来なかった。
「フシュルルルル……」
謎の生物は周りの物を全て黒く染めながら、その場を去っていった。
「……っはぁ! な、何なんだあいつはいったい!」
俺は気付いた時には息を止め、汗を大量に流していたらしい。
それだと言うのにまるで熱くない。それ程に、あの生物は体の底から凍らされてしまう様な、冷たい威圧感を放っていた。
「じょ、冗談じゃねぇぞ。危険な場所では無いって話はどこ行ったんだよ……。」
あんな生物の居る森が危険では無いなんてふざけた話だ。どう考えたってあれは危険そのもの、と言っていいぐらいにやばい奴だ。
やはり、元から宛にはならなかったが、あの球体の言う事は信じない方が良いらしい。
「クソ……どうすっか。」
間の悪い事に、あの化け物が行ったのはボートがある方角だ。正直言ってボートは惜しいが、諦めるしかない。
命あっての物種だ。ボートの為にあんな化け物とやり合うなんて、そんなバカバカしい真似は絶対にしたくねぇ。
「戻るしか、ねぇか。」
俺はゴリラ達の巣へと戻った。
ーーー
巣に入った瞬間、例のキモゴリが抱き着いてきた。
『あぁ〜ん、もー! ようやく帰ってきたのね、心配してたのよ?』
どうやら、何も言わずに出て行ったせいか、心配を掛けてしまっていたらしい。
しかし、心配してくれるのはありがたいが、抱き着かれるのは勘弁してもらいたい気分だ。
今から【マジシャルバナナ】3個分程、胃の中からせり上がってきそうな気がする。
俺が限界を迎える前に、ママゴリがキモゴリを押し退けてくれた。
『全く、落ち着きなさい。突然抱き着かれると彼も困っちゃうわ。』
『うぅ……はーい。』
キモゴリが少し涙目になりながら、スゴスゴとその場から離れた。
『それに……貴方もよ、何も言わずに出て行っちゃったら皆心配するわ。言ったでしょ? ここには危険な生物が居るのよ。』
「そうだな、悪い……。」
危険な生物が居る……か、それは確かに痛感した。あんな生物が居るのであれば、ゴリラ達に心配を掛けてしまうのも無理はない……。
『分かったのなら良いわ。それじゃ、早速夕飯にしましょう。』
「あぁ、分かった。」
俺は今回の教訓を活かし、なるべく安全な場所を見つけてからボート作りを始めた。




