第66話:王者
「……なるほどな……」
ウサブルカについての話を彼女にした。
イリーナは何度も頷きながら俺の話を聞いてくれていた。そして……。
「何故、奴が魔法使いを残したのか……。どうも分からないな……」
「その行動をした理由か……分かるぜ……」
「何……?」
最初から……そうだった。
地図を持たせ、外の世界の存在に気付かせる。商業の街を通して海に出させる事で、進路方向を確立させた。
そして魔法使いと関連のあるマリクス。あいつを何らかの方法を使って、悪意で動く者にさせた。
それによって、間接的に、外から見ると明らか目立つ国家を建設させる。それを俺達は見つけ、最終的にここまで辿り着いた。
この状況をみれば、奴が魔法使いを生かした理由は明らかだ。
「……奴は、どうしても俺と会いたいみたいだ」
「……そうか……」
「言われてみれば当然だ」。イリーナはそう言わんばかりに、1つ頷いた。
何故、奴がそんなにも俺と会いたいのか。そう考えると分からない。俺に特別な才能がある訳でも無いのだから当然だ。
しかし俺と会う事で、間接的に目的が達成出来る。奴がそう考えているとしたら、あいつの目的には1つ心当たりがあった。
「……クルヴァース」
「フシュ?」
間違いない。
こいつだ。こいつと奴は会いたいんだ。
ウサブルカ。奴に何か足りない物があるとすれば、クルヴァースしか居ない。
「お前は……何の王者なんだ?」
「フシュゥ……?」
今まで、俺はいわば……王者と戦ってきた。
【海の王者】シャチ。【軍隊の王者】隊長。【大海原の王者】リヴァイド。【国家の独裁王者】マリクス。
何故こんな法則性があるのか、今はまだ分からない。だが……その法則性に、クルヴァースが当てはまる事だけは分かる。
こいつの所々で垣間見えた特殊な才能。それには恐らく、こいつが持つ称号が関係している。
「クルヴァース……お前は、【魔法の王者】なんじゃないか?」
「フシュゥ……」
クルヴァースはぺたん、と項垂れた。どうやらこいつは、何も分からないみたいだ。
こうなれば、幾ら推測しても無意味。やはり、あのウサブルカに会いに行くしかない。
「クラジレン……」
イリーナが少し困惑した様に目を細めていた。
「……すまねぇ。少し置いて行っちまったな……。ともかくだ! 1つだけ分かりやすく、確かな事があるぜ」
「なんだって?」
「ウサブルカの元にクルヴァースを連れてけば、全てが判明するって事だ。こうなりゃ、最後までやってみようじゃねぇの!」
イリーナの手を引っ張り、俺は走った。
この旅の終着点。俺にクソッタレな物を明け渡し、こっちを振り回し続けてきたあの球体。ウサブルカの元へと向かう。




