第64話:手がかり
俺達はとにかく、マリクスが暇そうな時間帯に、城に訪ねた。
「あら、よく来てくれましたわ。何用でしょう?」
「いや、実はな……。」
俺達は早速マリクスに事情を話した。
俺達は他に街などがあるのかを知らないという事。球体を探しにこの大陸にやって来て、何の手掛かりも得られていないというのを伝えた。
王女はその間、クルヴァースを撫でながらゆっくりと聞いてくれていた。
「分かりましたわ。その件に関して、私に知っている事はありません。」
「そっか……。」
俺は自然と、頭を垂れてしまっていた。
すると、マリクスがうふふ、と笑い始めた。
「しかし、私は魔法使いの家ならば知っていますわ。あの方は色んな研究をしていたので、恐らく貴方方が探している情報も家の中にある事でしょう。」
マリクスは少し悲しげに、目を横に流した。
「でも……あの方の家には結界が張ってありますのよ。常人では、破る事も通る事も出来ない代物ですわ。」
「まじかよ……。そいつは困ったな……。」
結界か……。何とかして、破る方法を考えないとな、恐らく、今の手掛かりは……その家しかねぇ……。
「マリクス……。はっきりと言えばどうだ? 破る方法はあるが、使いたくはないと」
イリーナが突然そんなことを言いだした。
すると王女は、少し目を閉じて、ふぅ、と息を吐いた。
「気付いていらっしゃったのですね。」
ニッコリと笑って、観念した様にクルヴァースをこちらに来させるよう、促した。
「クルちゃんですわ。彼には不思議な力がある。結界もクルちゃんさえ居れば、楽に破れるかと……」
「……そういう事か……。」
マリクスはどうやらクルヴァースと離れるのが嫌だったみたいだ。それだけではなく、恐らくこいつの身も案じているのだろう。
球体の存在を追うというのは、どういう事態になるかは分からないのだから……。
「フシュゥゥゥ……。」
クルヴァースはゆっくりとこちらに近付いてきた。すると、途端に振り向き、マリクスの方へと向かった。
「あら……?」
呆然としているマリクスに、左手を差し出す様クルヴァースは催促した。
「フシュゥッ! フシュゥッ!」
マリクスはすこし不思議そうに、ゆっくりと左手を差し出した。
すると、クルヴァースはその手の薬指に、木の根を絡めて、輪っかを作った。
「ク……クルちゃんっ!」
マリクスが一転して顔を赤らめた満面の笑みに変わり、抱き着こうとした瞬間。はぐれメタルの様な速度でクルヴァースはその場から去って行った。
「ハッハッハ! 照れ屋な奴だな、全く……。」
「うふふ、イリーナとクラジレン……でしたわね? 旦那さんを、よろしくお願いしますわ。」
マリクスはドレスを捲し上げ、行儀の良いお辞儀をした。俺はそれに、サムズアップを返した。
「任せとけって! あいつは絶対に生きて帰すぜ!」
「では、行ってくる。またな、マリクス。」
「えぇ、それではまた。」
別れを告げ、王女から背を向けた時、嬉しさと寂しさが混じった様な、嗚咽が聞こえた。
「……あいつも、男を見せたものだな……。」
「そうだな、クルヴァースも、意外とやるもんだぜ……。」
恥ずかしそうに柱の陰からこちらを覗き込んでいるクルヴァースに手招きをして、呼び寄せた。
「フ……フシュゥ……。」
こいつも少し寂しそうだな……。いや、そりゃそうか、あんだけ慕われてたら、そうもなる……。
「わりいな、クルヴァース。俺達の都合に巻き込んじまってよ……。」
「フシュゥッ!」
ドンと腰らしき部分に木の根を当て、大丈夫! とでも言いたげな様子を見せている。
「ハハハッ! まぁ、大丈夫なら良かった。さぁ、行くぞ。」
魔法使いの家に向かう。そして、この因果に終わりを着ける。
危険な代物を抹消し、訳の分からない遊びをしだす球体に灸を据える。
そう上手く行くかは分からねぇが、絶対に2度とこんな事はやらせねぇ。




