第60話:再戦
昔……私はどことも分からぬ場所に廃棄されていたホムンクルス。
そして、それを悪い意味で世界的に有名な魔法使いに拾ってもらいました。
それからの私は、自由に生きるという命令を課された状態で、魔法使いの傍で暮らし続けた。
魔法使いは、いつも私に優しく接してくれ、ずっと気に掛けていてくれていた。
自分は老い先短い、自分が死んだ後、この子はどうなるのだろうか、と。
そして、魔法使いは80年分の魔力を遺してくれました。自分の命を引き換えに、それだけの魔力を私に託し、死ぬ前に、いつもの命令を課そうとしたのです。
すると、どうでしょう。突如窓が割れ、罵声が響きました。
【お前は悪い奴だ。悪い行いしか出来ないクズ野郎だ。】
そんな罵声が何故か、私の命令として課されてしまいました。
そして、その命令で私が一番最初にした悪い行いは、恩人の惨殺でしたわ。
それからの私は、表情の動き等を制御出来る多少の自由はあれど、悪い行いをするという命令からは逆らえない。
そんな人形に、変わってしまいました。
「うふふ……さてと、そろそろ殺しに行きましょうか。ねぇ……。」
私は自分の腕に巻き付くポイズンスネークにそう告げ、その場を立ち上がった。
「さぁ、行きなさい。愚かな鼠と、その鼠を匿うおバカさんを粛清しに。」
ーーー
「おい、起きろ……。おいッ!」
その言葉を聞き、目をほんの少し開けると、目の前にイリーナが居た。
うーん……まだ朝には早いんじゃねぇの……?
そう思い、目を閉じようとすると、頬を叩かれた。
「いてぇッ!」
「招かれざる客が来たようだ。木の外に蛇が居る。」
「ま、まじか……。間違いねぇのか……?」
俺の問いにイリーナはコクリと頷いた。
「あぁ、体を引きずる音が聞こえた。音のでかさから換算される体重と身長から考えると、あの王女のポイズンスネークに違いない。」
「す……すげぇな。」
音から体重と身長を分析するなんて出来るもんなのか……。
しかも相手蛇だよな?
「行くぞクラジレン。まず私が最初に奴の元へ向かう。そして、奴の注意が私に向いている隙に、お前が木の外に出て、戦闘に参加するんだ。」
イリーナの言葉に、俺はコクリと頷いた。
そして、彼女はふわりと跳んで、木の向こう側に行った。
そして、俺も後を追って、木の向こう側に行った時には、戦闘が終わっていた。
「ふぅ……こう言っては何だが、やはり王女よりは圧倒的に弱い。」
紫の蛇は首を斬られ、息絶えており、イリーナは刀身を拭き、剣を鞘に納めている。
「あらあら……お褒め頂き光栄ですわ。」
その声が響いた瞬間、イリーナの首から血が吹き出した。
「ぐぅ……ッ!」
「イリーナァッ!」
俺は急いで彼女に駆け寄り、ポーションを塗ろうとした。
しかし……。
「そうは行きませんわ。お二人には今すぐ死んでもらわないといけませんもの。」
俺の目の前に爪を出し、王女はギラリと鋭い目でこちらを睨んできた。
刹那、こちらに爪が飛んできた。俺はそれを急いで躱し、マリクスを睨んだ。
「……まだあんたとは戦いたくはなかったんだけどな……。」
「しかし、逃げる訳には行かないのでしょう?」
今、イリーナと俺の間には王女が居るし、この木の中では子供とクルヴァースが寝てる。
俺が逃げたらそいつら全員が死ぬ可能性があるとなっては、絶対に逃げる訳には行かねぇ。
「……チッ……! やってやるよ……。」
俺の今の魔力量は氷の槍2発撃てれば良い方ってどこだ。絶望的に不利な状況だが、やるしかねぇ。
「物分かりがよろしい様で、何よりですわ。」
相変わらずの睨みを効かせ、マリクスは両手の爪を構えた。




