第59話:睡眠
「ほら……ここだよ、俺の寝床。」
藁と置石が置いてあるだけの場所だった。
でも、それだけの方が、誰にも居場所を奪われないのかも知れねぇな……。
「……ご飯にしようか、クラジレン、木魔法で周りを囲ってくれ。」
一瞬何故? と言いかけたが、そりゃそうか。こんな街で、ゼリーを出してる所見られたら、取り合いになっちまうかもしれねぇしな。
「おうよ。」
俺は外側から見られないような最低限の木を作成し、ゼリーの作成を始めた。
その途中、子供がこちらに近寄ってきた。
「な……なぁ……これ何?」
子供が指を差したのは、『酸味の神様』だった。
……どうしよう、物凄く食べさせてみたい衝動に駆られてきた。
「気になるなら、食べてみ……べふッ!」
言い終わる前に、イリーナに叩かれてしまった。
いや……うん、こんな子供に食わせる訳にはいかねぇよな。
「良いか、あまり気にしない方がいい。悪い物ではないのだが、早々手を出してはいけないものと言うのがこの世にはある。」
「う……うん。」
イリーナの圧が、子供を押し黙らせた。
……つ、強い……。
「フシュゥ……フシャァァァッッッ!?」
その絶叫を聞き、振り向いた先には『酸味の神様』を吐き出したクルヴァースが居た。
「クルヴァースッ!?」
何であいつ食ったんだよ!? 劇物だってのは分かってたよな!?
「き……汚い……。」
いや、そうだけども、落ち着いてんなこの子。
「フ……フシュゥゥゥ……。」
弱り切ったような鳴き声を出し、クルヴァースはシュンとなってしまった。
それを、イリーナが撫でて落ち着かせている。
……しかし、クルヴァースですらアレに勝てなかったのか……。
改めてイリーナの凄さが分かってきたな……。
「ともかく、出来たぜ。ほら、口直しに食べな。」
俺はクルヴァースの体にゼリーを置いた、そして、それは木の根の上を滑り、中心部で消滅した。
「な……なにそれ、楽しそう……。」
いや、これ本当誰もが反応するな……。
でも、実際楽しくはあるけど、傍から見て楽しそうか……?
「あぁ、やってみるか?」
「フシュ。」
気軽に子供に問いかけたイリーナに対し、クルヴァースが即座に冷たい声を出した。
どうやらこいつは、また遊ばれるのを懸念しているらしい。
「……これ……美味しいね。」
そ、そんなに美味いかな……。
度々思うんだけど、原料をそのまま分けて食べた方が良いと思うんだけどな……。
これそもそも、ただ即座に食えて栄養を整えれる物ってだけだからな……。
「……まぁな、作り手の優しさが染み込んでいるのかもしれないな。」
俺が考えている事を見越している様に、イリーナはニヤリと笑みを浮かべ、こちらに視線を向けた。
……なんつーか、そんな直球で褒められると、少し照れるな……。
「ま……まぁ、染み込む程の優しさがあるって訳でも……無い、と思うけどなぁ。」
少し気恥ずかしさを感じながら、俺は頭をポリポリと掻き、自然と視線を反らしていた。




