第57話:魔力
「全く……いつもいつも良くそんなに奇想天外な事が出来るものだ……。」
「へっへっへ……毎回命懸けだからな。自然と頭が冴えてくるのさ。」
「ふっ……そういう事か。まぁいい、とりあえず、この後はどうするんだ?」
この後か……。なるべく壁の外に出て、もうこの国には関わりたくねぇってな気分だが……。
まだあの王女の事は解決してねぇからな……。
マリクスの言う事が本当か嘘かまだ分からねぇ。そこら辺をハッキリせずに逃げる訳にも行かねぇし、門から通るってのも難しいだろうから、壁の外に出ることはしたくねぇ。
となると……方法は一つだな。
「夜まで待っておこうぜ。その後に、木で身を隠しながら、ゆっくりと壁から降りる。」
「木で身を隠す? そんなの……上手く行くのか?」
「勿論だぜ。」
俺は限りなく黒色に近い色をした木をその場に出現させた。
この木で俺達の身を隠し、そして影に潜めばまず見つからねぇ……はず。
「……今、少し目が泳いだな。」
イリーナがジト目でこちらの事を睨みつけてきた。
「しょ……しょうがねぇだろ。それに、今これが1番安全な手ってのは間違いないんだぜ。」
その時、イリーナどころかクルヴァースまで呆れた様に木の根を振った。
「フシュゥ……。」
やれやれと言うかの様に、クルヴァースは溜め息を吐いた。
何か……ちょっとムカついてきた。
「まぁ、しかしそうするしか無いのは確かなようだな。と言っても、壁の中に降りた後はどうするか……。」
「そうだよなぁ……。」
ポーションで何とかなる様な話でも無いが、俺の今の手持ちはポーションかパラシュートしかない。
あまりにも手持ち無沙汰で、あの王女を何とか出来るという感じではなかった。
「まぁ、王女の対策は降りた後に考える事にするか……。今の問題は、あの王女の言う事を信じるかどうかだぜ。」
あれだけの話を聞いておいてこういうのも何だが、話に信憑性が無くなってきた気がする。
ただの時間稼ぎとして、長話をしていただけなんじゃないだろうか……。
「……クラジレン。王女の言う事が本当かどうかは彼女を解放してから考えればいい。何せ、奴がホムンクルスだという事実だけは変わらないのだからな。」
「……確かにな。」
今本当なのかどうかなんて考える必要はねぇ。本当にしろ、そうじゃないにしろ、今重要なのは、彼女に下された命令を書き換える方法を考える事だ。
「あれ? そういや……命令を書き換える事なんて出来るのか?」
「……彼女を動かしている魔力を尽きさせ、新たに魔力を装填すれば命令は書き換えれる。しかし……その彼女の魔力を尽きさせる、というのが相当難しいのだがな……。」
「うーん……どうやってやれば良いんだよ?」
「魔力を吸収する魔法などを習得するしかないな。そして、80年分もの魔力を吸収するのであれば、2日間は彼女の体を拘束しておく必要がある……。」
「まじかよ……。」
それはちょっときついぜ。2日も彼女を抑えておける筈がねぇ……。
「だから……別の方法を考えなければならないのだが……それが難しい。どうすれば良いのか……。」
俺達は頭を振り絞って考えたが、夜になっても、良い考えは浮かばなかった。




