第53話:新たな王国
「しかし、やけに厳重な入り口だな……。」
入り口には門番が2人待機していた。
ここはなんつーか……見た感じ出る時も大変そうだ……。
「不安は残るが、一応入ってみようか。話を聞いておきたいからな。」
俺は彼女の言葉に頷き、門番の方に向かった。
「おーい、ちょっとこの国入れねぇかな?」
「何だお前、旅人か?」
仏頂面で更にこちらの事を睨みながら尋ねてきやがった。ちょっと何か言ってやりてぇ気分にもなるが、ここは我慢するしかねぇな。
「まぁ、旅人なんだよ。ちょっと食糧に困っててさ。」
「……入るのは構わないが、姫様の許可が無いとこの国からは出られない。その事を容認した上で、入ってもらおうか。」
おいおい……ちょっと物々しい雰囲気になってきたな。姫様の許可がねぇと出られないってなんだよ……。
「構わない。入らせてもらっていいか?」
「お、おいイリーナ!」
即決した事に流石に不安になってきたが、彼女は大丈夫だと言わんばかりに、ウィンクをした。
「まぁ、それならば良い。通れ。」
門番は大人しく、道を通してくれた。
そして、俺達は門を通過し、壁の中に入った。
「……酷えもんだぜ……。」
入ってみて最初の感想は、それしか出なかった。周りはボロい家しかねぇし、住民は皆死んだ様な顔をしてやがる……。
ここはどう考えたって、まともな場所じゃ無さそうだぜ……。
「宿があれば良かったんだがな……。この様子ではあるかも分からんな。」
イリーナはその光景を見て、目を細め、歯を食いしばっていた。
すると、その時、イリーナは近くに居た子供の腕を掴んだ。
「っぐ……! 離せよッ!」
「……丁度いい、この子に話を聞かせてもらおう。」
「お、おいイリーナ。ちょっと乱暴じゃねぇか?」
やり方が彼女らしくねぇ様な気がする。少なくとも、イリーナが子供の手をあんな乱暴に掴むはずがない……。
「……クラジレン……。この子供はスリだぞ。」
「へ?」
その時、彼女に掴まれた子供がバレたかとでも言わんばかりに、腕を組んで不貞腐れた。
……なるほど、流石イリーナだ……一瞬で見抜きやがった。
ーーー
そして、俺達は誰も居なさそうな路地裏にその子供を連れ込み、話を聞く事にした。
「なんだよ……! 言っとくが金なんか持ってないからな!」
「私達はそんな事を聞きたい訳じゃない。ただ、この街の現状が気になってな……。何故こんな事になっているんだ……?」
その時、子供は眼を周囲に向け、誰も居ない事を確認した後に、こっちに顔を寄せてきた。
「マリクス王女……。」
「……マリクス……?」
「あの、あの怪物女が来てからなんだ……。やたらと喧嘩に強いあの女が来てから……この国は変わっちまった。」
やたらと強い女……。俺の近くにも1人居るんだけど……イリーナとも良い勝負するぐらいには強いんだろうか……。
「変な壁も建って、皆飢えていって、食べ物が無くて……。そして全員喧嘩をする様になった。それが全部、あのマリクスとかいう奴が来てから起こったんだよ……。」
「変な壁とは……あの壁の事か?」
「そうだよ……。あれのせいで、あれのせいで誰も逃げられねぇ。この街から抜け出せないんだよ……。」
……その話を聞いた時、少し違和感を感じた。
「……あの壁は逃走防止に建てられた物なのか?」
「うん……。」
イリーナの問い掛けに、子供は1度頷いた。
「分かった……。もう、家に帰っていいぞ。」
「その家が……ないんだよ……。」
子供は呟きながら、その場を走り去った。イリーナは自分の発言を悔いる様に歯を噛み締めていた。
「イリーナ……気付いたか? 何かおかしいぜ……。」
「そうだな。あまりにも相手の意図が見えない。」
幾ら逃走防止の為だからってこの壁は厳重過ぎる。そりゃ、これだけ厳重だったら誰も抜けれはしねぇだろうが、やり過ぎだ。
更に気になるのは、やり過ぎな上にそこまで固くはねぇって所だ。門を通る際にチラッと壁の厚さを見てみたが、2メートルぐらいしか無かった。
もしこの壁が鉄で出来ているとすれば、2メートルってのはリヴァイドの突進を3回耐えれるぐらいのもんだ。明らかに費用に見合った硬さじゃねぇ。
「魔法か鉄か……。何にせよこの壁の作成には相当な金が掛かっている。国庫すらも揺るがす程にな。」
「……単純な独裁主義者ならここまでしねぇ。こんな物を建てるには自分の身を削る必要すらあるからだ。」
「そうだな。という事は……この件はただの独裁主義者の暴走では無いようだ」
俺達の中で答えが決まった。こうなりゃ、相手にどういう目論見があるのか、しっかりと見極める必要がありそうだぜ。




