第52話:上陸
そして、遂に俺達は上陸した。新大陸に。
「っはぁー! ようやく海を抜けたぜ。一時はどうなる事かと思ったけどな。」
「そうだな。しかし、最後はあまり苦でも無かったがな……。」
イリーナが笑みを浮かべながら、俺の方を向いていた。何というか、その視線を受けると誇らしい気分になってきた。
「いやぁ、まぁあれぐらいはな! へっへっへ!」
ポリポリと頭を掻きながら、少し照れくさい気分になっていると、クルヴァースが急に跳ね出した。
「フシュゥゥッ!」
恐らく早く進もうみたいな事を言いたいんだろう。道の先に木の根を指しながらピョンピョン跳ねている。
「分かった分かった。それじゃぁ、行ってみるか。」
「おう!」
燥ぎまわる子供の様に先々進んでいくクルヴァースの後を、俺達も早足で着いて行った。
「ふっ……何とも元気が良いな。」
クルヴァースはこちらが少しでも遅れると早く! と言わんばかりにこちらに振り向いて跳ね出す。
それが何となく面白いと感じてきた。
俺とイリーナは度々歩行を緩め、クルヴァースを跳ねさせている。
「フシュルルルルルッ!」
そうしていると、遂に堪忍袋の緒が切れてしまったのか。クルヴァースは一気にこちらに近寄り、木の根でグイッと引っ張ってきた。
「はははっ! 悪かったなクルヴァース、もう緩めたりしないから許してくれ。」
イリーナが楽しげにそう告げると、クルヴァースは信じられないといった様子で、更に引っ張る力を強めた。
「おっと、本当に元気な奴だなぁ。」
海から抜け出せたおかげでテンションが上がってるのかも知れない。まぁ、気持ちは分かるし、微笑ましい気分にもなれるから、クルヴァースはこんな感じでいいのかも知れない。
「フシュゥッ!」
そうやって、緑の地面の上を進んでいくと、巨大な壁が見えてきた。
その壁は鼠色になっていて、見た感じ10階建てのマンションよりも高そうだ。
とても、簡単に飛び越えられそうな代物ではない。
「ふむ……これは明らかに建造物だな。人が居る事は、間違いないようだ。」
イリーナが安心した様に呟いた。
俺も確かに安心はしていた。大陸の外に出たら球体しか居ねえ、みたいな状況だったら、どうしようかと思ってた所だ。
「でも……これって、どこから入ればいいんだ?」
見た所、壁に抜け穴とかは無さそうだし、木の階段を作って乗り越えるってのもちょっとどうかと思う。
どこかに入れる場所があれば良いんだけどな……。
「分からないな……。ともかく、壁の周囲をぐるっと回ってみよう。何か見つかるかも知れない。」
「そうだな。」
こんな壁が建てられてる理由も知りてぇし、食糧も補給したい気分だ。入り口が無ければ、別の所を当てにするしかねぇが、あったら中に入って宿ぐらいは取っときたい。
そして、そんな中、クルヴァースは相変わらず早足だった。壁伝いにしながら、サクサク進んでいく。
そんな中、肩に手を置かれた。
振り向いてみると、悪巧みを思いついた子供の様な笑みを浮かべながら、人差し指を口の前に立てているイリーナが居た。
「クラジレン、私達はこっちから行ってみようか。」
そう言って、クルヴァースが行ったのとは反対方向に、指を差した。
それを見て、意図を察し、俺達は進んでいった。
そして、暫く進んでいくと、クルヴァースがブチギレたラーメン屋の店長の様に、腰に木の根を当てながら、立ちはだかっていた。
「フシュルルルルルッ!」
そして、即座に俺達の足をベシベシと叩き始めた。
俺達はそれを宥めながら、門の方へと向かった。




