第50話:大陸の外
地図を見ながら波に揺られ続けて約3日。
そろそろ退屈が限界を超えそうだったその時。それは現れた。
「なぁ、クラジレン……あれは何だ?」
どうやら、遂にこの大陸の外が見えてきた様だ。
断面がスッパリと出来ている。
「浮遊大陸ってのは凄えもんだぜ……。滝みてぇになってやがる。」
海がこの大陸の縁からドバドバと下に流れている。
恐らくどっかで循環してるんだ、とは思うが……中々圧巻の光景だ。それこそ3日程でこの大陸の海が干上がりそうな程に、大陸の縁から海が流れている。
「しかし……どうするんだクラジレン。状況から観測するに下は恐らく海だ。飛び降りるにしたって、ボートが無いときついぞ。」
「へっへっへ、勿論どうするかは考えてるぜ!」
何せ3日間魔力は使わずに置いてあるからな。この崖から飛び降りるぐらいなら大丈夫なはずだ。
「よし、イリーナはちょっとボートの両端に穴を空けてくれ。後で俺が補強するから遠慮なく頼む。」
「穴か……。どれくらいの穴を空ければいいんだ?」
「これが通るぐらいだな。」
俺は早速、丸太の様なでかさの木を発生させた。イリーナはそれを見て、何かを察した様に、目を細めている。
「……まさか、ボートごと、パラシュートで降りるつもりか……。」
「おうよ!」
俺はイリーナの言葉に大きく頷いた。
勿論そのつもりだ。何にせよ、この大陸の下が海って可能性があるなら、ボートごとパラシュートで降下しちまえばいい。
穴を空ける際に水が入らないか、という事と、その重さに紙が耐えれるのかというのが少し不安ではあるが……。紙の方は大丈夫だろう。何せこのボートはそこまで重くはない。
「しかしな、穴を空けると言っても、そこまで正確に空けるのは難しそうだな……。」
イリーナが少し顎に手を当てながら、考えている時、クルヴァースが突然跳ね出した。
「フシュゥッ! フシュゥゥッ!」
なんと、その直後、クルヴァースがボートの両端に素早く穴を空けた。
「お……お前こんな特技あったのか!」
「フシュゥッ!」
木の根でサムズアップをしながら、クルヴァースは頷く動作をした。
「やるじゃないか、クルヴァース!」
そう言って、イリーナはクルヴァースの頭、と思われる場所を撫でている。
それを受け、クルヴァースの木の根は嬉しそうに踊っていた。
俺はそれを横目に見ながら丸太に穴を空けた大きめの紙を通してから、そのボートの両端に丸太を通した。
そして、木の魔法で留め具を作り、穴を補強して、簡易式のボートパラシュートが完成した。
「よし、これで後は、風魔法で一気に縁から跳ね上がればおっけーだ!」
「よし分かった。私は一応紙が丸太の真ん中に行かない様に抑えておこう。」
「おう、それじゃぁ、頼む!」
そんな会話を交わした後、早速俺は風魔法を使って一気にボートの速度を上げた。
そして、縁から跳ね上がり、パラシュートがバサッと開いた。
「よし、成功だぜ!」
ちょっと不安ではあったけど、無事に上手く行ったみたいだ。
一応保険に用意しておいた3人用パラシュートは、使わなくても良いらしい。
「緩やかに、安定して降下出来ている様だな。これならば本当に大丈夫そうだ。」
「へっへっへ、そうだな!」
俺はその事に誇らしげになりながらも、ふと後ろを見た。相変わらず滝の様に水が流れており、水の勢いも強い為、滝登りなんて馬鹿な真似は出来なさそうだ。
こうなると、元の大陸に戻る事は出来ないだろう。
新しい世界で馴染めるかどうかは不安だが……。期待するしかねぇな。
「あ、クラジレン! ようやく下が見えてきたぞ! やはり下も海になっている様だな。」
その言葉を聞き、下の方を向いた。
見渡す限り全面青くなっていて、凄い壮厳な景色になっている。
「こりゃ、凄えや……これだけでも来てよかったと思えるぜ……。」
「そうだな。」
イリーナも笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいていくその青を見つめていた。
そして、遂に俺達は、別大陸に着水した。




