第49話:討伐
「クルヴァースッ! そっちだ!」
「フシュゥッ!」
俺が囮になり、クルヴァースが魚を潰す。
割と単純な策ではあるが、奴等にはあまり知性が無いらしい。驚く程簡単にハマっていく。
しかし、問題は雑魚じゃない。
「ギギギギギィィッ!」
青い体表に細長い体。そして、鋭く赤い嘴の様な物を携えたその龍は、徐々にイリーナを押していた。
リヴァイドの飛ばす無数の水弾がイリーナの体力を削り、そして、集中が切れた頃に全力の突進が飛んでくる。
そんな攻防を続けられ、彼女もそろそろ体力が切れてきたみたいだ……。
「チッ……! しつこい奴だ!」
先程からイリーナの剣が当たっているのに、大して動じていない。あまりにも、奴の体が硬過ぎる……。
しかし、今はもう周りを囲んでいた雑魚も居ない。
これならば……行ける。
「イリーナ! 一旦引こうっ!」
「なんだと……!? 海の上で奴から逃げられると思うのか!?」
「策があるんだよ。【ウッドシールド】!」
俺は分厚い木の盾を発生させ、リヴァイドの周りを囲んだ。
そして、即座に風魔法を発動させ、ボートを推進させる。
「確かに素早いが……奴からは逃げ切れんぞ!」
「分かってるさ……。だから1つ賭けに出るんだよ。」
「……賭け?」
イリーナが目を細め、こちらの事を睨んできた。そしてそれに対して、俺は首を縦に振った。
「俺達が一気に離れたのならば、あいつは確実に猛スピードで突進してくる。それに合わせて、俺達もリヴァイアサンの方向へ進路変更するのさ。」
そう言った瞬間、イリーナの口がニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほど、その速度に乗せて、私が奴を斬ればいいのだな?」
俺はそれに対し、コクリと頷いた。
確かに普通に斬った程度では、あのリヴァイドの体は斬れないだろう。
ならば、最大まで速度を上げ、斬撃の威力を上げてやればいい。
「来るぞ、クラジレンッ!」
奴が木の盾を突き破り、こちらに猛突進してきた。俺は全魔力を使用し、ボートを一気にリヴァイドの方へと進行させた。
「ギギァァァッッ!?」
奴はこちらの動向に驚き、止まろうとするが、もう遅い。
俺達とリヴァイドの距離はもう目と鼻の先。今更ブレーキを掛けたって間に合うはずがない。
「一閃……!」
そして、イリーナがリヴァイドに向かって剣を振り、即座に、鞘へと剣を戻した。
「ギ……ギギァァァァァァッッッ!」
後ろの方でリヴァイドの断末魔が響いた。振り向くと、体が真っ二つに割れた状態で、海に落下した龍の姿が見えた。
「フッ、上手く行った様だな。」
「ナイスだイリーナ! 流石だぜ。」
イリーナに対し、サムズアップを送った。
「あぁ、お安い御用だ。」
そして彼女も、ニヤリと笑みを浮かべながら、サムズアップを返してくれた。
「フシュゥッ! フシュゥッ!」
そして、クルヴァースも謎のサムズアップらしき仕草をしていた。




