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第4話:大地の力

『いい男だわぁ、貴方。私好みよ。』


『うふふ、バナナは美味しくないけれど、それ以外は完璧よ。ア・ナ・タ』


 今俺はこの世の地獄を経験している。

 何故か巣に着いた瞬間、ゴリラ達から囲まれてしまった。


『待ちなさいよ貴方達、人間が怯えてるでしょ?』


 イケゴリという救世主が現れた。

 正直見た目がゴリラじゃなかったら惚れていた程にかっこいい。ゴリラなのがマイナス過ぎる部分ではあるが。


「悪い……助かった。」


 イケゴリにあの地獄から救出してもらった。

 お陰で、俺の胃が中身大放出という崩壊をしでかすのを止めれた。


『これぐらい構わないわ。それより貴方、今日は家で寝なさい。』


 それは助かる。

 このまま他のゴリラの寝る場所に連れ込まれたら明日には色んな物を失ってしまうんじゃないかと思ってたところだ。


「あぁ、ありがとう……それじゃぁ、お言葉に甘えて。」


『ちょっとぉ! 抜け駆けは無しよ。お母さん!』


 俺が了承した瞬間にあのキモゴリが声を荒らげた。

 抜け駆けといっても、このイケゴリだ。変な事をする訳がない。……無いよな?


『何言ってるの、このまま貴方達にこの男の処遇を任せたら争いに発展しかねないわ。そうなるぐらいなら私が取り上げます。』


 そう宣言した姿は正にお母さん。

 ゴリラじゃなければ完璧だった。寧ろ、前世の俺を殺したのがチンパンジー、とかだったら良かったのに。


『今夜は安心して眠りなさい。あの子達が来ても私が抑えてあげるわ。』


「あぁ、助かるよ……。」


 前言撤回だ。もしこの人がゴリラじゃなくても惚れてはいなかっただろう。

 言っている言葉の節々からまるで母性のような物を感じてきた。


『それは勘弁してよお母さん! せっかく皆で舐め回そうと思ったのに!』


 皆で舐め回そうと思ったとは何だろうか、想像するだけで悍ましい話に思わず鳥肌が立ってしまった。


『もう、そこまでにしときなさい! そもそも貴方達番がいるんでしょ?』


 何とこのゴリラ達夫が居るらしい。だと言うのに、俺にここまでアプローチして来たのか。


 いや、俺がそこまでアプローチさせてしまったのかも知れない……。


『うーん……分かったわよぉ。』


 そう言って、ゴリラ達は自分の巣へと戻っていった。


『さぁ、私の巣へ案内するわ。付いてらっしゃい。』


「あぁ……分かった。」


 彼女の言葉に従い、付いて行く中で、俺は少しモヤッとした気持ちを抱えていた。


ーーー


 ゴリラの寝床は意外にも快適だった。ふかふかとした草が並べられていて、それが中々に温かい。


 俺は、リラックスした気分になりながら、前から聞こうと思っていた事を、聞くことにした。


「なぁ、ゴリラ、っつうか……なんて呼べばいいんだ?」


『私の事は、そうね……ママゴリで良いわ。』


 ママゴリか……。何か色々言いたい事がある様な名前だけど、一先ずはそれでいいや。


「それで……ママゴリ、聞きたいことがあるんだが……。」


『なぁに?』


「その、魔法ってのはどういう物なんだ?」


 やっぱり俺の中ではこれが気になっていた。ファンタジー世界では魔法は主流だが、いつまで経ったって使える気配がしない。

 それに今までで魔法を見たのもあのゴリラが放った物が始めてだ。ゴリラにしか使えない物だと言われたら泣くしかないが、それは聞いてみないと分からないだろう。


『魔法がどういう物……? 難しい事を聞くわね。とりあえず……大地の力によって放たれる不思議な術、と言った所かしら。』


 大地の力によって放たれる……不思議な術……?


「それは、何というかあれか? 大地の下に棲む精霊の力とかそう言った類の奴か?」


 今度は彼女の方が首を傾げた。どうやら随分と的外れな事を言ってしまっているらしい。


『大地の力っていうのは、そうねぇ……。あ、そもそも貴方も貰ってるじゃない。』


「へ?」


 貰った覚えなどあまり無いんだが。ひょっとして転生特典という奴だろうか? 特典が2つを超えてしまっているが、もしそうならば大歓迎だ。

 とも思ったが、どうやら違うらしい。


『あのバナナよ。あの中に大地の力が詰まってるの。私達はそれを食わせて貰うことで、大地の力を蓄えてるのよ。』


「あのバナナにそんな効果があったのか……。」


 いや、そう考えてみると確かに納得が行く。それに俺が魔法を使えなかったのも当たり前だ。そもそも魔法を撃つための電力の様な物が無かったのだから。


「他にも、大地の力を蓄えた動物を食べたりしても集まるから、食事をすれば大地の力は蓄えられる。という認識で間違いないわ。」


 なるほど……って、それなんか凄くないか?


「もしかして、ご飯を大量に食うだけで魔法って放てるようになるのか?」


『そうね。かと言って、1度に大地の力を摂取し過ぎるのは良くないわよ。それに、1日に蓄えられる大地の力には上限があるのよ。』


 なるほど、一応の制限はあるらしいが、言葉通りならば中々素晴らしい世界だ。

 あんなに遠かった魔法という存在がすぐそばにある様な気すらしてきた。


「なぁ! 魔法ってのはどんな物があるんだ!?」


『きゅ、急に食いつきが良くなったわね……。そうね、戦闘に活用出来る魔法や、実生活に使える魔法など、色んな物があるわ。』


 なるほど、それはいい。是非教えてもらいたい所だが、少し困惑させてしまっている。

 ここは落ち着いて話すとしよう。


「なるほど、じゃぁ……氷魔法とかはあるのか?」


『……? あるわよ。』


 俺は内心ガッツポーズを取った。

 前世で密かに憧れていた、氷魔法を扱う、クールで熱い男を実現出来るチャンスだ。


「良ければ、早速教えて欲しいんだ。少し魔法という物を使ってみたくてな。」


『えぇ、分かったわ。それじゃぁ、まずは基礎的な水魔法からね。これを使える様になるとこから魔法は始まるわ。』


「分かった!」


 こうして、ママゴリによる魔法講座が始まった。

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