第47話:船購入
「き……金貨10枚で売れたぁ!?」
目が覚めたらそんなびっくり話をイリーナから聞かされた。
彼女はドン、と胸を張りながら、その金貨10枚を机の上に並べた。その後ろでベシベシと音を立てながらクルヴァースが拍手している。
「す、凄えな……。イリーナに任せて良かったぜ……。」
「まぁ、単純にこの調合書が良い物であった。というのもあるが、それでも充分な額を稼げたと自負している。」
イリーナの言葉に、俺は大きく頷いた。
「そうだな、これなら船を買った後に、他にも色んな物が買えるかもしれない。」
この大陸の外では何があるか分からない。これだけの金があればその分、物を用意出来るという事だ。正直めちゃくちゃ助かる。
「よし、早速船を見に行こうか、クラジレン。向こうももう出来ているはずだ。」
「おう!」
俺は大きく頷き、ベットから飛び出した。
そして、あの店の方へと向かう。
ーーー
「ほ、ほえぇ〜……本当に用意出来るとは思ってなかったですぜ。兄さん達、やり手ですなぁ……。」
「へっへっへ、今回の分はイリーナのおかげだけどな。」
何せ彼女には調合書を売るという発案と、高く売ってくれたという功績がある。
そして、俺がそんな事を言っていると、イリーナは更に自慢気に胸を張っている。
そして、その横でクルヴァースが不服そうに跳ねている。
「フシュゥッ! フシュゥッ!」
今回の件がイリーナだけの功績になっているのが気に入らないらしい。と言っても……こいつなんかしたっけな……。
「えーっとな……クルヴァースも、応援は頑張ってたと思うぜ。」
クルヴァースはその言葉に対し、高速で頷く動作をし、木の根を自分の方へと向けた。
何というか、人間が親指を自分に向けた時の仕草みたいだな……。言うなれば、『まぁ、それ程でもないけどな、ドヤ』。みたいなもんだろうか。
「兄さん達、何か微笑ましい人達ですなぁ、良いと思いますぜ。」
商人はそう言いながら、台車に乗せられた船を持ってきた。
同じ木製のボートであっても、俺が前に作った即席ボートなんかよりもよっぽど丈夫そうだ。
「へっへっへ、こいつは海に対して、ドボンと置いて、ズドンと乗るだけで勝手に進んで行ってくれる優れ物でさぁ。」
「へぇ、そいつは凄いな……。どうなってるんだ?」
どっかにそういう魔法でも掛かってるんだろうか、勝手に進むとなると相当凄い物だが……。
「ちょっとお客さん、そいつは言えませんぜ。企業秘密って奴でさぁ。」
「まぁ、そりゃそうか。」
少し残念な気もしなくも無いが……。しょうがない、教えてくれる訳もないし、諦める事にしよう。
「よし、それなら勘定だ。金貨5枚で良いのだろう?」
「おっと、お客さん。そうは行きませんぜ。」
金を出そうとしたイリーナを、商人の男が手で制止する。
「何……?」
その様子を見て、イリーナは男を不可解そうに睨んだ。
「ボートを海まで持って行くのは辛いですぜ。そこでどうです? 楽々と運べるこの台車も合わせて、今なら金貨8枚でさぁ。」
「フッ……商魂逞しい男だな。しかし、そんな台車が本当に金貨3枚もするのか?」
その問いかけを聞いて、商人は「あちゃぁ〜」と言いながら、頭をポリポリと掻いている。
「へい、本当は金貨1枚ですぜ。購入しやすか?」
「その値段も怪しい物だが、そうだな……。騙されておく事にしよう。」
イリーナは商人に対し、金貨6枚を払った。
「へへへ、ありがとうごぜぇやす。本当は銀貨3枚でさぁ。」
「こいつめ……。」
イリーナはニヤリと笑いながら、視線をこちらに戻した。
正直、この取引では蚊帳の外だった様な気がする……。
「どうしたクラジレン? 船も手に入ったんだ。ある程度身支度を済ませたら、海に行くとしよう。」
「お、おう。そうだな……。」
ともかく、俺達はようやく買い物を終え、海へと向かった。




