第43話:神様再び
「何をやっていたんだろうな、私達は……。」
「分からねぇ……。」
ある程度時間が経った後に正気に戻って来た。
そもそも今考えると、あの行為何が楽しいんだよ。ただただ、食べ物が木の根の上を滑ってくだけじゃなかったか?
「まぁ、後は非常食を買って、船を買う事にしよう。」
「そうだな……つっても非常食はゼリーの材料とかで良いんじゃねぇかな。」
それに対し、彼女はコクリと頷いてくれた。
「……そういえば、ゼリーの材料は聞いてなかったな、何で出来てるんだ?」
「あぁ、まぁ栄養の良い奴を、調合でかき混ぜてる感じだな。」
俺はイリーナに材料の事を教えていった。すると、彼女はその中の1つに興味を持ったらしい。
「……『酸味の神様』?」
「おう、正式名称は知らねぇが、凄く酸っぱいから俺はそう呼んでる。」
「そんなに酸っぱいのか……。」
興味津々と言った様子で瞬きをしていた。
確か、まだ残ってたよな……。
「イリーナも1つ食べてみるか?」
俺はイリーナに『酸味の神様』を差し出した。彼女は大きく頷き、それを受け取ってくれた。
「うむ、食べてみよう。」
そう言って、彼女は口の中に果物を放り込んだ。
次の瞬間、彼女は大きく目を見開き、口元を手で抑えた。
「むぐっ……!」
「おい、大丈夫か!? 無理なら吐き出しても良いんだぞ!」
「断る……。私は、負けん……。」
なんの勝負なんだろうとは思ったが、そういう事ならルールを教えなきゃな……。
「よし、その果物を10回噛めたらOKだ! 頑張れイリーナ!」
イリーナはコクリと頷き、『酸味の神様』を1度噛んだ。
「うぅ、ぐうっ……!」
相当辛そうな表情をしているが、それでも吐き出しはしなかった……。
「おい、大丈夫か?」
彼女はコクリと頷き、また一度、もう一度と、『酸味の神様』を噛んで行った。
そして、遂に9回目に達した。
「よし! あと一回だぜイリーナ! 頑張れ!」
「むぐ……ぐ……。」
彼女は辛そうな表情のまま、1回噛み締め、瞬時に果物を飲み込んだ。
「はぁ、はぁ、やったぞクラジレン!」
「いよっしゃぁっ! 良くやった!」
まさかあの果物を乗り越える奴が現れるとは思ってなかったぜ。正直ちょっとびっくりだった。
「くぅ……正直、相当辛かった……。」
少し涙目になりながら、イリーナはそんな事を零した。
息遣いが荒くなっていて、涙目にもなり、顔を赤くしている彼女を見ていると……。何か可愛く見えてきた。
「……なぁ、イリーナ、もう一度食べるか?」
それに対し、イリーナは驚いた様に目を見開き、首をブンブンと横に振った。
その様子も可愛いような……。とまで考えた時に、正気に戻った。
まじで俺何考えてんだよ……。
「流石に……もう勘弁してくれ……。」
涙目で顔を俯かせながら、そう呟いた彼女を見て、罪悪感が芽生えてきた……。
「おう、大丈夫だ。良く頑張ったな。」
俺は心の中で謝罪しながら、彼女に甘いジュースを差し出した。
彼女はそれを受け取り、一口飲んだ後、グイッと一気に飲み干した。
「ふぅ……大分楽になってきた。ありがとう、クラジレン。」
「いやいや、礼を言われる筋合いはねぇよ。」
そんな事は無いぞ、と言って笑ってくれている彼女を見て、2度と気が狂わない様に気を付けようと誓った。




