第40話:旅立ち
「なぁ、そいつも付いて来るのか?」
俺はイリーナの方を向きながら、クルヴァースを指差した。
それに対し、イリーナはいつもと変わらぬ表情で少し首を傾げた。
「……何か悪いのか?」
「いや、悪いって訳じゃねぇけど……。」
そもそも何で付いて来るのかも分からねぇし、安全な奴なのかも分からねぇんだけどな……。
「まぁ、安心しろ。こいつはあの戦闘以来大人しくなっている。」
イリーナがそう言うと、クルヴァースは縦に伸びたり縮んだりし始めた。
「……何やってんだこいつ?」
「分からないのか? 頷いてるんだ。」
あ、なるほど……言われて見れば理解は出来るけど、傍から見れば変な踊りにしか見えなかった。
ってかこいつ体全体で頷くのか……。いや、んな事はこの際どうでもいいや。
「そもそも、こいつなんで付いて来るんだよ?」
俺達は今から楽しい旅を始めるって訳でもねぇんだけどな……。ってか世界の均衡を維持する奴がそんな事してていいんだろうか……。
「実はな、大地の力が減ってしまっている為に一度クルヴァースをあの島から離す必要があるらしい。住ませたままでは先に島の大地の力が足りなくなってしまうんだ。」
「だから一旦島から離す必要があるってのか?」
「あぁ、それにはこの旅は丁度良いだろう?」
一応黒幕に会いに行く旅のはずなんだけどな……。何かおかしい様な……。
まぁ、大陸出てすぐに会える訳でもねぇだろうし、別に良いか。
「そういう事なら、クルヴァースも一緒に行くか、この大陸の外にな!」
「フシュゥッ!」
クルヴァースは一本の木の根を掲げ、ガッツポーズを取った。
随分とシュールな光景ではあるが、今更こいつの事が怖い訳でもねぇし、こういうのが居ても良いよな。
「さてと、この話はここまでにして、本題に移ろうか。」
イリーナがパン、と手を打った。
「本題? 本題って何だよ?」
「それは勿論大陸の外に出るという話だ。歩いて行けば相当時間が掛かるだろう?」
「あ……確かに……。」
地図で氷魔法を拡大化させて突っ切って行こうと思ってた。
でも、そんな事すると何日掛かるか分かったもんじゃねぇな……。
「どっかに、造船業が盛んな町とかあったりしねぇのか?」
「……うーむ、あまり無いな。そもそも船自体需要が低くてな……。」
まぁ、そりゃそうか……。
島に向かうとかの目的がねぇ限り、大体魔法で事足りる。
そもそも魔法で即席ボートを作れるのだから、船があっても無くてもあまり変わらないのかもしれない。
しかし、大陸から出る場合には即席ボートじゃちょっと心許ない。
せめてきっちりとした作りのボートが欲しい。
「まぁ、商業が盛んな街がここにあったはずだ。そこに向かえば、船を作って貰えるかも知れない。」
そう言って、地図でイリーナが指を差した場所は俺達が居た所の反対側。
島から大体東側にあるようだった。
「商業が盛んか! それはいいな、早速行ってみようぜ!」
俺達は即席ボートで島を出て、早速その町の方へと向かった。




