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第3話:バナナ採取

『ねぇ、戻る前にご飯を取っておきましょう。』


『そうね、分かったわ。』


 巣に着く前にご飯の調達をする事に決まった。

 俺は所詮泊めてもらう立場なので何も言わずにいようと思ったが……。どうしても1つだけ気になった事があった。


「なぁ、ゴリラのご飯って、やっぱりあれなのか?」


『あれって何よぉ? ダーリン♡』


 俺に話す度にダーリンを付けるのは本当に勘弁してほしい。何なら聞く度に吐き気がしてくる。

 あのゴリラが目をキラキラさせて言ってくるのだ。更に一度殺された補正も入る為、はっきり言って地獄でしかない。


『あら、人間も私達のご飯について知ってるのね。』


「いや、あんまり知らねぇな。」


 とりあえずゴリラがバナナを食うという事しか知らない。というか、それに関しても定かでは無いので何とも言えない。


『そうなのね。それなら聞くけれど、私達は【マジシャルバナナ】を食べるのよ。貴方は食べられる?』


 バナナを食うという事は間違いなさそうだ。

 ただ食べられるか? という疑問については、名前が聞いた事も無いものなのでなんとも言えない。


「……そうだな、まぁ食べてみる。」


 まぁ、ただのバナナだ。そんなに危険な物は早々ないだろう。

 そもそもそんな選り好みをしている状況でもないし、ここはあの球体を信じて食べてみるしかない。


『何なら私が口移ししてあげもいいわよぉ。ア・ナ・タ♡』


 どうやら、このゴリラの中でダーリンからアナタにグレードアップしてしまったらしい。

 気持ち悪さが倍増しているので恐らくグレードアップで間違いない。


 ともかく今ここに得体の知れないバナナより危険な存在が出来てしまった事だけが確かな様だ。


「……自分で食べるから大丈夫だ。」


『あらぁ、残念だわぁ。』


 意外とすぐに引き下がってくれたのだけが救いだ。ゴリラの口移しなんて受けたらショック死しかねない。


『何馬鹿な事やってるの、そろそろ調達するわよ。』


 性格イケメンな方のゴリラがひょいひょい、と木からバナナを毟り取っていく。

 一見適当に取っている様にも見えるが、どうもそうでは無いらしい。


 ゴリラの目がまるで熟達した職人の様にキラリと光っている。


『貴方も1つ取ってみる? 意外と美味しいバナナを取るのって難しいのよぉ。』


「そうなのか? じゃぁ、1つやってみよう。」


 やったぜ、バナナを取るという名目で、合法的にこのゴリラから離れられるチャンスだ。

 このキリキリと鳴っている胃痛にお別れを告げよう。


『それなら良かった。私が側でアドバイスしてあげるわぁ。』


 なんてこった、胃痛がパワーアップして帰ってきやがった。このままでは俺がこの世にお別れを告げる日の方が近いかもしれない。


 俺は半ばヤケクソになり、適当にバナナを取った。当然の如く酷評をくらった。


『うーん、駄目よこんなのぉ、これはまだまだ美味しくないバナナよ。ほら、中を見てみなさい。』


 バナナを開いた中には、直接的表現を控えたい例の便器を連想させる茶色い物体があった。

 いや、正確には茶色い物体の様な物があった。


「バナナの中って、茶色なんだな……。」


『そうよぉ、まだ取れ時じゃないバナナは中身がこうなってるの。取れ時になったバナナはちゃんと綺麗な青色をしているわぁ。』


 それはそれであまり想像したくない様な気がする。そもそも取れ時なのか取れ時ではないのかというのが良く分からない。

 正直、どれも同じにしか見えない。


『んもぉ、しょうが無いわねぇ。よく見てなさい、行くわよ?』


 俺が落胆していたのを察してか、ゴリラは謎に腰を振りながらバナナを2つ取った。

 それを俺の方へと渡し、ウィンクをしてきた。やばい、胃の中から色んな物がせり上がってきそうな感覚がする。


『ほぉら、良く見比べてみなさいよ。こっちのバナナは皮の色が綺麗で、こっちのバナナは少し汚いでしょ?』


 なるほど、良く見てみると確かにそんな気がする。まるで加工したての宝石の様に綺麗な黄色をしているバナナと、少し茶色が混じったくすんだ色をしているバナナがある。


 こうして見比べてみると確かに違いが分かる。相当注意深く見ないと分からないが、慣れてくればパパッ、と取っているイケゴリの様に出来るかもしれない。


『そしてこのバナナは少し汚い色をしている方が美味いのよ。』


「あれ? そうなのか?」


 いや、言われてみれば確かにそうだ。

 さっきからあのイケゴリが取っているのは少し汚い色をしたバナナばかり、綺麗なバナナは全く取っていない。


『そうよぉ。綺麗なバナナは生まれたてでまだ熟してないの。それに比べてちょっと汚いバナナは完全に熟してるから、美味くなってるのよぉ。』


 なるほど、合点がいった。理屈を知ってみればなんてことは無い普通の事だった。


「そういう事か、よし分かった! その事を覚えてやってみるか!」


『頑張ってねぇ。』


 俺は世界一やる気を失う声援を聞きながら、バナナを取っていった。


 30個程取った中で食える物判定を貰ったのは、4個程だった。

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