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第38話:地図

 俺達は傷が治った頃に、ゴリラ達に相談した。


『……そんな代物があったのね……。』


 ママゴリは顔を顰め、睨むような眼差しで地図を見ている。

 他のゴリラ達は頭を抱え、何やら思い悩んでいる。


『そんな地図、後世に残しておけないのは勿論だけど、どうやって処理するかは……。』


『火で燃やすのも少し憚れるし、深海に沈めたりするのも嫌よねぇ。』


 更にこの地図は破れもしない。

 さっさと処理してこんな地図からはおさらばしたいんだが、処理する方法が悩ましい。


『やっぱり、その地図を渡してきた本人に聞くのが1番良さそうね。』


「だよな……。」


 俺がママゴリの言葉に頷くと、すかさずイリーナが口を挟んできた。


「しかしその球体がどこに居るのか分からないのでは、どうしようもないだろう……。」


 そうなんだよな。どこに居るかも分からねぇし、何のためにこんな事をしてんのかも分からねぇ。

 それに、俺としてはもう1つ気になることがある。


「なぁ……イリーナ。掛け算って知ってるか? 2×2は4とか、そういう奴だ。」


「掛け算? 知っているが……それがどうした?」


「……27×38は?」


「ちょ……ちょっと待て! そんな事急に言われても分かる訳ないだろう。」


『1026……貴方が気になってるのはそこね?』


「そうだよ……この異世界に来てから、妙に自分の頭が冴え過ぎてんだよ……自慢じゃねぇが俺の頭は相当悪い。前なら11×12とか、そんな単純な掛け算もすぐには出来なかった。でも今じゃ、8×17は136……とかいう風に、適当な掛け算を出しても瞬時に計算出来るようになっちまってる。そしてその原因は、【マジシャルバナナ】にあるじゃねぇの?」


『そうね……あのバナナには知能促進の効果や、魔法の成長性を上げる効果があるって話を聞いたことがあるわ。でも、それがどうしたの?』


「……それさえ分かりゃ、あの球体の目的が俺……いや、俺が居た世界の人間に地図を渡す事だったってのが分かる。」


「どういう事だ?」


「まず……球体は俺をこの世界に来させる時、ゴリラの巣に降ろした。それは、ゴリラ達の指導とバナナの力によって、俺の実力をこの世界の人間に食らいつけるレベルまで引き上げる為だ。地図を奪われそうになっても、抵抗出来るぐらいな」


「ん? 何のために球体はそんな事をしたんだ? わざわざ異世界から人間を連れてこなくても、この世界の実力者に地図を持たせて守らせればいいだろう」


「そうなんだよ……この世界の人にやらせれば済む事をわざわざ異世界から人間を連れてきてやらせている。そこに何か……重大な理由、球体の目的に関わる理由があるはずだ……」


『……どんな理由があるというの……?』


「……そこが分からねぇ……」


 一番重要な部分で引っ掛かってきた。その理由が分かれば、自ずと目的も分かってくる可能性がある。でも、その理由の部分が一番分からねぇ……異世界から人間を連れてくるメリットなんてあるのか?


「うーん……その球体に何か言われなかったか? 後は、見た目に何か重大な特徴があったりとか……」


「重要そうな事は何も言われてねぇな……そもそも、あいつ秘密主義みたいなとこあったからな。見た目だって、特徴は黒っぽい球体ってだけだったよ。正にバスケットボールとか、満月みたいにまん丸とした…………ん?」


 球体か、なんか引っかかるな。なんだ? 球体……。


「待てよ……」


 俺は懐から地図を取り出した。


「そういう事か……」


 俺は地図を握り締めた。ついに、ついに奴が俺を連れてきた理由が分かった。

 あいつはこの事を、気付かせるために、俺をゴリラに殺させ、わざわざこの異世界に連れてきたんだ……。

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