第37話:治療
「あいたたたたた!」
あれから、胸の傷は癒着し、足の切り傷も治ったが、腕だけはどうも治りが遅かった。
その為、今腕に薬を塗ってもらっているのだが、どうも染みて痛い。
「こら、暴れるな。上手く塗れないだろう。」
イリーナが俺の事を細い目で睨みながら、腕にポーションを塗ってくれている。
確かにそれはそうなんだろうけど……色々納得行かねえ事があるような……。
「そもそも、ポーションって塗るもんなのか? 飲むんじゃねぇの?」
俺のそんな疑問に、彼女はふるふると首を横に振った。
「ポーションは塗るものだな。場合によっては飲む時もあるが、基本的には患部に塗って治すのが主流だ。」
「そうなのか……見た目完全に飲み物みてぇだったから勘違いしてたぜ。」
というか、青い水みてぇな液体をまさか塗る物だとは思わねぇよ……。そもそも塗ってもらっている今の状況でも、なんでポーションが地面に垂れ落ちねぇのか不思議でしょうがねえ。
「塗ると体がポーションを吸収するんだ。だから、傷ついた部位に直接効いていく。しかし飲むと全体に広がるから効果が薄くなってしまうんだ。」
なるほど、理由を聞いてみると納得が行った。
というか、そもそもイリーナみたいな美人に傷口を塗って治してもらうって、中々役得だよな。
ポーションがそんな感じになってて良かった。
なんて事を考えていると、イリーナは俺の服の袖を元に戻した。
「さてと、腕はこれで終わりだな。」
「お、おう……もう終わりか……。」
俺が少し残念な気持ちになっていると、イリーナが首を傾げていた。
「どうしたんだ? さっきまであんなに痛がっていたというのに……。」
「いや、何でもねぇ。」
流石にイリーナにこれは言えねぇ……。自分でも気持ち悪いな、って思うぐらいの話だしな……。
そう考えていると、イリーナはまぁいいか、と呟き、再びポーションを取り出した。
「さて、次は口内だな、口の中はまだ治っていないだろう?」
「えっ!?」
まじで? え? 口内も塗られんのか……。それはちょっと照れるというか……。
いやまぁ、でも……ここまで色々あったんだし、それくらいのご褒美はあってもいいよな!
「しかし、私は少し用事があるからな、これはゴリラ達に任せるとしよう。」
やべぇ、ご褒美がお仕置きに変わりそうになってやがる。
そんな事になるほど俺悪い事したっけ……?
「ちょ、ちょっと待て! 勘弁してくれ! 絶対嫌だっ!」
俺の必死の静止を、イリーナは目を細めながら首を傾げている。
「どうしたんだ? 傷は治した方が良いと思うが……。口内というのはそんなに嫌か?」
「いや……その、なんつーか、イリーナにやってもらいたいなって……。」
俺の言葉に更に疑問が浮かんだ様に、イリーナは顎に手を当て、怪訝そうな顔をしている。
「まぁ……誰がやっても変わらないと思うが、分かった。」
そう言って、イリーナによる口内の治療が始まった。
そして、誰がやっても同じだという意味を理解した。
「ゴボゴボゴボゴボ……。」
「良いか、飲むんじゃないぞ、口の中に残しておくんだ。呼吸は鼻でしろ。飲み込むな、含め。」
俺は顔を上にあげながら、ポーションを口の中に流し込まれていた。
そして、それを飲み込まないようにしながら、口内に残す。
正直、なんの絵面なのか分からなくなってきた。
確かにこいつは誰がやってもあまり変わらねぇわ。
「よし、ポーションはこれで全部だな。後は口の中に含んでおけば、いつの間にか患部に吸収されているはずだ。」
そして、彼女は最後に飲み込むなよ、とだけ言い放ち、その場を去っていった。
俺は、物凄く微妙な気分になっていた。




