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第32話:もう1つの能力

 効果があった。接近したら分かる様に、薄い氷のトンネルを周囲に張りながら走っていたが、どうやら見事に騙されてくれたらしい。


「なるほど……君は随分と用心深い男だねぇ。こんな物を設置するなんて……。」


「当たり前だ。出会い頭に真っ二つにされたらたまんねぇからな。」


 その言葉に隊長はフフフッ、と笑い始めた。


「どうにせよ、結果は変わらない。君は私に勝つ事なんて出来ないのだからねぇっ!」


 隊長はスッ、とその場から離れ、人形を生み出してきた。

 なるほど……こいつはまずいな……。


「ふふふっ、人形達は力があまり無いからね。奇襲には向いていないのだが、こういう戦法を使う時には便利だ。何せ、私は離れた場所で魔法を撃ちながら、君の魔力切れを狙えば良いだけだからね。」


 随分と陰湿なやり方だが、確かに厄介だぜ……。

 人形達を貫きながらあいつも攻撃するってのは今の状態じゃ、ちっと難しい。


「この野郎……【アイススピアー】!」


 こうなったら手は1つ、逃げるしかねぇ。

 道の先に居る人形を生み出した氷の槍を射出する事で薙ぎ払っていく。


「おやおや、決着を着けようなんて威勢の良い事を言っておきながら、随分と臆病じゃないか……。でも、僕の人形には体力という概念が存在しないんだよ。逃げたって無駄だと分からないかな?」


「どうかな? それは違うって事を教えてやるぜ!」


 奴はその言葉に対し馬鹿にする様に高笑いをしている。

 確かに今の奴は人形を生み出すだけ生み出していき、自分はゆっくりと俺を追いかけるだけでいい。

 対して俺は全力で人形から逃げなきゃいけねぇし、いつかは囲まれてしまって魔力が切れたり、体力が切れて追いつかれたりしちまうかも知れねぇ。


 でも、当然ながらそうは行かない。

 俺は無事、人形に追いつかれる前に目的の場所に辿り着いた。


「へへっ、あんた……。地図のもう1つの能力を忘れているぜ。」


「地図の……もう1つの能力……?」


 奴が遠い場所で、首を傾げている。

 この距離なら大丈夫だ。やってやるぜ。


「俺が何で逃げたか、これで分かるだろうよッ!」


 俺は地図に指の爪で摘んだ、ミリ単位程の大きさの木を落とした。

 そして、それは隊長の頭上に巨大な木となって現れた。


「何っ!?」


「へっへっへ、そのまま潰れちまいな!」


「おのれ! 【人形魔法】!」


 奴は100体ほどの人形を一気に出現させ、木を受け止めた。でも、これで終わりにはさせねぇ。


「もう一発サービスしとくぜ隊長さんよっ! おらよっ!」


 先程の小さい木をまた地図へと落とし、隊長の元へと巨大な木が落ちた。


「ぬぉぉぉぉぉッッッ!?」


 その絶叫と共に、木は人形達を潰し、地面に着地した。


「この地図は行った事の無い場所に行けば色が追加される。だから、色が付いてない場所へと逃げれば、お前と俺の居る場所が分かる。後は事前に用意しておいたちっちゃい木を落とせば、あんたを狙い撃ち出来るって寸法だ。」


 俺は木の下から抜け出してきた隊長にそう告げた。

 奴はそれを聞き、フフフッ、と笑いながら肩を震わせている。


「なるほど……中々機転が効くねぇ。馬鹿ではあっても、戦闘のセンスはあるらしい。」


「へへっ、褒め言葉として受け取っておくぜ。それで……まだ人形戦法をやるのか?」


 隊長も流石に分かったはずだ。俺に巨大な魔法を落とされたくないならば、俺に近寄るのが一番だって事をな……。

 こちらとしても、この地図に木を落とす戦法は諸刃の剣。ちょっとでも落とす位置をミスったら俺まで死んじまう。


「フフッ……余程君は、私に斬り殺されたい様だねぇ。ならば、お望み通りにしてあげるよ。」


 隊長は悪魔の様な歪んだ笑みを浮かべながら、ゆっくりと剣を抜き取った。

 対峙するのは上手く行ったらしい。それなら……ここからが、本当の勝負だ。

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