第30話:襲撃
「フシュルルルルッ!」
なるほど……元々繋ぎ合わせた様な歪な姿をしていたというのに。
凶暴になって更におかしくなったのか。
あの木の根は巨大になり、ところどころに枝が生えている。前に見た時とは大分違うらしい……。
「まぁいい……2度と暴れる事が出来ない様、徹底的に躾けてやる。」
私は剣を構え、魔法を掛けた。
自分自身の体が軽くなって行くのを感じると同時に、奴の方に向かった。
「くらえッ!」
「シュルゥァッ!」
先ず一閃、奴の木の根を切り落とす事に成功したらしい。このままでかくなっているその不気味な代物を切り落とし、力を削ってやろう。
「フシュゥゥゥッ!」
奴は無数の木の根を伸ばし、こちらの方に飛ばしてきた。
面白い、しかし……そんな代物で私を倒せると思うか。
「潰れろッ!」
私は剣で奴の木の根を押し潰した。
しかし、その木の根は予想以上に手応えが無く、柔らかい。いや、というよりも……。
(砂……?)
先程押し潰した木の根がただの黄色い砂へと変わっていく。そう気付いた時にはもう遅い。
四方八方から20本程ある木の根が私を囲み、こちらに飛んできた。
「クソッ!」
これではどうしようもない……。恐らくこの無数の木の根の中に砂と本物が混じっている事だろうが、私の持っている剣は1つ……。
見抜くには少々剣が足りない……。
しかし、その時……光の矢が20本の木の根を撃ち抜いた。
『イリーナ! ダミーは任せて本体を叩きなさい!』
やはりあの矢はゴリラ達だったか、随分と頼りになる支援だった。
「分かった!」
私は首を縦に振り、本体を睨んだ。
あの光の矢の中で18本は消え去った。
残りは左右から同時に飛んでくる2本の木の根だけだ。
「挟み撃ちか……しかしその程度ではなッ!」
挟まれていると言えどもこれならば幾らでも対処にしようがある。
私を倒したいのならば、後方と前方、上方にも木の根を置き、計5本体制で来て貰わなければな。
「ふんッ!」
一気に後ろにさがり、飛んでくる木の根を2つ共躱した。
直後に2本の木の根は、仲良く私を追ってきた。
しかし、挟み撃ちというアドバンテージを捨てたのであれば、大した事はない。
横薙ぎによって、2つの木の根を一撃で切り捨てた。
「フシュラルルルルッ!」
それを見てクルヴァースは随分と怒っている様だ。自分の木の根をじたばたと動かし、こちらに威嚇してきている。
しかし、私も怯んでいるだけという事は無い。早速、あの魔獣に飛び掛かろうとした時、奇っ怪な物が目に入った。
「赤い……人形か!」
気付けば、あの赤い人形が周りを囲んでいた。
どうやら、隊長は既に来ていたらしい。
「クラジレンッ! 人形と魔獣は無視して、隊長本人を叩いて来い!」
人形はゴリラ達が居れば充分だ。それよりも奴には隊長本人を叩いてもらう必要がある。
随分と危険な任務だが、奴には自信があるらしい。
掌と拳を叩き合わせ、ニヤリと笑っている。
「よぉし! 任せとけ!」
奴はその言葉と共に、人形の間を通り抜け、走り去っていった。
隊長を倒す為に……。




